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第2π セクシーな先生

※2話目でキャラクター名を変更しました。

「おっぱいを揉むことで魔法が使えるだと……。そんな魔法、聞いたことが無いぞ」

 メークルは訝し気に灰次の顔を窺う。

「いや、そう言われても……。頭の中から目を閉じろって声が聞こえて、暗闇の中を見たら、職業とスキルが書いてあって実際に魔法が使えたんだ……」

「目を閉じると……?」

 思い当たる節があるのかメークルは思案気に首を傾げた。

「ああ、この世界では皆そうなのか?」

「いや、そんなわけあるか。眼を瞑れば何も見えない」メークルは神妙な顔をする。「それより、今お前は『この世界』と言ったな。まるで、別の世界から来たようなセリフだ」

「よく分からないが、ここは俺が昨日までいた世界とはまるで違う。別の世界としか思えないんだ」

「そうか」

 納得したようにメークルは小さく頷いた。そして、丸焦げになった二体のレッドベアの死骸に視線を向け、溜息を吐いた。

「お前の事はまだ信用できないが、お前のお陰で助かったのは事実だ。礼を言う」

 メークルはぺこりと頭を下げた。

「いや、俺の方こそ、急におっぱい揉んで悪かったな」

 こめかみを掻きながら灰次は苦笑した。

「まあ、魔法発動条件だったという事で大目に見よう。嘘だったら殺すがな」

 指の骨を鳴らしながら、メークルはわざとらしく眉を吊り上げて見せた。

「いや、嘘じゃないって!」

 慌てた様子で灰次は手を勢いよく横に振った。

「ところでお前、どこか行く当てはあるのか?」

「いや、どこに行っていいのか見当もつかない……」

 溜息を漏らす灰次にメークルは笑顔を返す。

「なら、近くの町まで連れて行ってやろう。それに、そこにいるノーリッジ先生は様々なことを知っている。この世界の歴史、あらゆる国の風習、魔法や魔道具のことまでな。もしかすると、お前の事も何か分かるかもしれない」

「本当か! 助かるよ。この世界じゃ知り合いもいないし、何をすればいいのかさっぱりだから」

「よし。じゃあ、ちょっと待ってろ」

 メークルはそう言うと、ナイフを取り出してレッドベアの死骸に突き刺して切り裂いていった。笑顔で死骸の肉をほじくっている様に、灰次は恐ろしさを感じる。

 灰次が呆然としていると、メークルは死骸の腹の辺りに手を突っ込み始めた。

「メークル、一体何を?」

 眉を顰めながら灰次は訊く。何かを取り出して、メークルは血で汚れた何かをこちらに見せた。

「魔鉱石だよ」

「魔鉱石?」

「ああ、モンスターの核のようなものだ。モンスターはこいつに魔力を蓄えている。そして、これは魔導具を作るために必要なんだ。だkら、魔導工具屋に売れば金になる。しかも、レッドベアは体もでかいから、なかなかの物が手に入る。ほら、どうだ大きいだろう」

 メークルは得意げな笑みを向けながら魔鉱石を見せつけてくる。それは歪な形の赤黒い宝石の原石の様だった。どことなく内臓を彷彿とさせるが、大きさはサツマイモくらいだなと灰次は思った。平均の大きさが分からないので大きいのか小さいのかは判断がつかない。

「普通はどのくらいの大きさなんだ?」

「大きさは様々だが、スライムとかでこの位だな」

 メークルは人差し指と親指で輪を作って見せた。およそ、巨峰の実くらいかと思われた。

 もう一体の死骸からも同様に魔鉱石をほじくり出すと、持っていた布袋に入れた。布袋には既に何かがぱんぱんに詰まっているが、魔鉱石は押し込まれるように納まった。

「よし。森を出るぞ」

 灰次はメークルに連れられて森を抜け、広い草原に出た。

 遠くを見ても建物はおろか町らしきものは見当たらない。

 すると、木々の脇にバイクのようなものが停まっていた。ただし、車輪は無い。鉄と木材で作られており、座席のようなものとハンドルのようなものが付いているので乗り物と思われた。

 メークルはハンドルの下辺りに嵌っている宝石のようなものに触れた。すると、車体がふわっと浮いた。

「すげぇ」

 灰次は感動してつい声を漏らした。

「ふっふっふ。凄いだろう。小型魔導走行艇だ」

 そう言ってメークルは荷台に布袋を置くと、座席に跨った。

「後ろに乗りな」

 言われるがままに灰次もメークルの後ろに跨った。

「行くぞ」

 そう言うとメークルはハンドルを握る。バイクのようなものは颯爽と進み始めた。


 体感で時速四〇キロ位、街には三十分ほどで着いた。小型魔導走行艇で街中も突っ切り、町外れまでやってくると、石造りの家の前で停まった。

「ここが先生の家だ」

 メークルは木製の扉を叩いた。

「開いてるわよぉ」

 中から甘ったるい声が返って来た。扉を開けてメークルが中に入っていく。灰次も続いて入っていく。

 そこには三十代半ば位の妖艶な美女の姿があった。胸元がざっくりと開いたローブを優雅に着こなし、パイプを気怠そうに吹かしている。左目の眼帯が気になったが、それさえもオシャレに見えるくらい整った顔をしており、灰次は息を呑んだ。

「やあメークル、久しぶりだねぇ」

 煙を吐きながら先生が言った。

「お久しぶりです、先生」

 挨拶をしたメークルに目を細め、細い指先を灰次に向けた。

「それで、そちらの青年は?」

「はい、この男は…………。名前何だっけ?」

「乙武灰次……、いや、灰次でいいか。俺の名は灰次です」

「この男はハイジで、こちらが先生です」と美女の方に掌を向けて紹介した。

「うむ。私の名はベル・ガーター。一応、魔導研究家よ。街の人には先生と呼ばれてるけどね」

 ベルは長い髪を掻き上げながら微笑した。

「それで、何の用かな?」

「実は、この男いついて相談があって来ました。ハイジとレッドベアの森で偶然出会ったのですが、どうも様子がおかしいので先生に相談に来たんです」

「ふーん……。というと?」

 ベルの右の目が灰次に向けられた。上から下までを撫でるように眺める。

「確かに、見慣れない恰好をしてるわね」

「はい。それだけじゃなく、妙な魔法を使います。しかも、その威力はレッドベア二体を軽々と焼き尽くすほどで……」

「へぇ、火炎魔法ね。しかも、レッドベアを軽々ととなると、なかなかの使い手じゃないか」感心したように言う。「で、それのどこが妙なんだ?」

「それは……」メークルは言い淀むと、顔を赤くして灰次を肘で突いた。「お前が言え。説明しづらい……」

 困ったように灰次はメークルとベルを交互に見たが、ベルが訝し気な顔をして待っているので、おずおずと口を開いた。

「いえ、その、俺もよく分からないんですが、俺は『おっぱい使い』で『おっぱい魔法』を使えるようなんです」

 ベルは眉根を寄せて首を傾げた。

「おっぱい……使い?」

「ええ。おっぱいを揉むことで魔法が使えるようなんです」

 ベルは片眉を吊り上げて、首が更に傾いた。そこでメークルが口を挟む。

「先生、ふざけているように聞こえるかもしれませんが、実際、この男は私の胸を揉み、魔法を繰り出したんです」

「ふーん」ベルがメークルの胸元に視線をやった。「興味深いわね」

 メークルはさりげなく胸に手をやって胸元を隠して話を続ける。

「先生は様々な事に精通していますから、何か分からないかと思いまして」

「うーん。私も魔導士の端くれだけど、そんな魔法の使い方は初めて聞くわね……」

「そうですか……。あ、それと、ハイジは別の世界から来たような節があります」

「別の世界……」先生は片眉を吊り上げる。「なるほど、異世界転生者か……」

「はい。私も、何年か前に先生が話してくれた伝説を思い出しました」

「確かに、それなら妙なスキルも納得がいくね。異世界転生者はその者の嗜好や能力に応じた特殊スキルが授かるというから」

 神妙な面持ちでベルはハイジの顔をまじまじと眺めた。

「あと、ハイジは目を瞑ると職業とスキルが書いてあるのが見えたと言っていました」

「なるほど。それは普通じゃない……。けど、その男からは魔法力を感じないのよねぇ……」

「えっ。まさか……!」メークルは信じられないと言ったように目を見開く。「けど、実際に私はハイジが魔法を使う所を見ましたよ」

「嘘を言っているとは思ってないわよ。きっと、異世界転生者に我々の常識は通じないんでしょうね」

「確か、伝説では異世界転生者は救世主だって言っていましたよね?」

「ああ、伝説ではな……。何百年も昔の話だし、何とも言えないね。ただ、何事にも因果ってのはあるものよ。ハイジがこの世界に転生したという事には何か理由があるのかもしれないわね」

 そう言うとベルはハイジの肩に手を置き、ハイジに挑発的な視線を送る。ハイジは緊張して固まった。

「一度、その魔法を見てみたいわね。そうだ、私のおっぱいを揉んでみなさいよ」

「えっ」

 ハイジはベルのおっぱいを見下ろした。なかなか良いものを持っている。ハイジの鼻の下がだらしなく伸びた。

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