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疾風の剣  作者: 村元圭
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芹沢と慶四郎 その参

芹沢と慶四郎の出会いは、この時より約10年も前にさかのぼる。


丁度、ペリーが浦賀沖に現れて日本中、大騒ぎになるほんの少し前である。


水戸の北方に松井村というところがあった、そこに笈川おいかわという川があった、川はそんなに大きな川ではなかったが、毎年 雨季になると氾濫はんらんし、村の農作物の被害は甚大なものであった。


その頃 芹沢はこの土地におり、 芹沢 かも ではなく養子に出され 下村 継司つぐじ と名乗っていた。


ある日の昼過ぎ、継司が剣術の稽古の帰り道この笈川の橋に通りかかった時、馬と少年を見つけた。

その少年は馬の手網たずなを持ち、橋の上から南の河口の方角を遠く見つめていた。


まだ初夏というには早い季節で、少年はどちらかと貧乏くさい黒ぽい綿の着物にボロの袴を履き、足は草履ぞうりではなく草鞋わらじで、腰には刀ではなく、木刀を挿していた、歳のころなら14歳ぐらいであろうか。


継司は この辺りでは見かけない変な井出達いでたちの不審者と思い、難癖なんくせをつけて馬を奪い取ろうと考え、声をかけけた。


「おい、そこの小僧、どっから来た?」


「あ、すみません、水戸の城下から来ました・・・この先の丁度、川が曲がってる所で雨季の頃によく氾濫はんらんするのですか?」

少年は軽く会釈をして、遠くを指さし継司に尋ねた。


川の曲がった内側は綺麗に田畑があるのに外側の広大な土地は湿地ぽくなっていて雑草が生えていた。


「ああ、そうだ、あの辺りは見ての通り毎年の川の氾濫で農作物も育たない、今年も氾濫してあのざまだ!小僧、それを聞いてどうしょうって言うのだ?」


「いえ、あの辺りを治水して、川の氾濫を食い止めれば農作物も育ち、我が藩の石高も少しは上がると思い下見したみに来きました」


「あはぁは~ 驚いた!お前見たいなヤツから 我が藩 などと言う言葉を聞くとは!・・・」

継司は大声で笑った。


少年は何故笑われているか理解できない様子で継司を見ていた。


「大体なんだ、その腰の木刀は?侍きどりか?小僧?!」


「ああ、私は侍ですよ、それえにこの木刀の中には鉄の棒が入ってまして、いわば護身用といいますか・・・」

少年は腰に挿した木刀を抜き答えた。


「嘘つけ!城下のどこにお前の様な みすぼらしい侍のいる御家中があるのだ?! その後の馬もどこかで盗んでんきたのであろう!」

完全にこの少年を盗人と決めつけた言い方であった。


「いや いや 私は安島帯刀の三男 安島慶四郎と申す者です」


「おのれ・・・盗人の分際で家老の名を出すとは! 無礼千万!!性根を叩き直してやるわ!」

と言うと継司は少年に向かって殴りかかった。

この頃からすでに 芹沢はなんでも腕っ節で解決しようという乱暴者であった。



少年は咄嗟とっさに木刀を構え、殴りに来た継司の拳を下から木刀で止め、次の瞬間 胴を打った。


「ぐぉ・・・」

継司は橋の板場に倒れこんだ。


一瞬の出来事で、倒れた継司は何が起こったか、理解できなっかた、ただ、腹に激痛が走っている。


「大丈夫ですか?」

少年は継司に向かって手を差し伸べた。


「うるさい!!もう 我慢ならん!!」

継司は少年の手を払いのけて、立ち上がり、腹の痛みを我慢し、腰の刀を抜いた。


「刀をぬくとは・・・大人げない・・・」

少年は真剣を目の前で見ても別段たじろく事もなく、ヤレヤレとあきれた様に言った。


その態度を見た継司は余計に頭に血が上り

「盗人が何を言う、叩き斬ってくれるわ!」

と言うと刀を上段の構えから振りかぶり、一気に少年に向かって振り下ろした。


「どりゃーーーー!!」


少年は振り下ろされた刀より速く継司のふところに入り、また胴を打った。


継司の腹にさきほどより更に深い激痛が走り、また、橋の板場に倒れた。


今度は声も出ない・・・


なんという速さだ・・・ 継司は腹の痛みに耐えながら少年の剣の速さに驚いた。


「無礼者!!拙者を安島刀帯が三男 安島慶四郎義光あじまけいしろうよしみつと知っての狼藉か!!」


薄れゆく意識の仲で継司はその声を聞いた。


継司はそういえば、家老安島刀帯の三人の息子の中に剣の天才と言われる者がいる事を思いだした。


そして、意識を失った・・・






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