表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
疾風の剣  作者: 村元圭
4/7

芹沢と慶四郎 その壱

にせ坊主とは・・・おい、芹沢!屋敷に上がるなら、足ぐらい洗え!」

海後は面倒臭そうに大声で言った。


芹沢と海後はほとんど同じ歳であったので、お互い呼び捨てである。

芹沢36歳 海後35歳であった。


「おぉ~ すまんの~ あまりにも嬉しくて、忘れとったわい」

芹沢は昼間の顔とは別人の様にニコニコとしている。

海後の忠告に、素直に受け入れ軒先の桶で足を洗いだした。


「慶四郎様~ こんばんは~ 大変ご無沙汰しております」

芹沢のうしろの暗闇から3人ほどの男が顔を出した。

新見錦、平山五郎、野口健司であった。

この3人も昼間の越後屋で慶四郎と顔を会わしている。


「おまえら~ 海後はこういうことにうるさいからなぁ~ 足洗って上がれや!」

芹沢は上機嫌である、慶四郎に会えたのが嬉しかったのであろう。


うしろの3人も桶で足を洗いだした。


やがて4人は屋敷に上がりこんだ、ただでさえ狭い離れの板間は男6人で更に狭くなった。


「いや~ 慶四郎 昼間は驚いたぞ! まさかお前がこの京におるとは・・・」

芹沢は板間にあぐらをかきながら言った。


「芹沢さんこそ、相変わらずの暴れぶり・・・おまけに野口さんに私のあとを付けさせるとは・・・」


「気づいておられたか・・・」

まだどこに座わろうか迷っている野口は面目めんぼくなさそうに慶四郎に頭を下げた。


「それにしても、お前の猿芝居なかなかだったぞ!」

芹沢は早く新見らに座るように手をこまねきながら言った。


「猿芝居ではありませんよ・・・大体・・・」


「まぁ まぁ ほれ、酒も料理も持って来たぞ」

芹沢は慶四郎の話を途中でさえぎって、新見に早く酒の準備をするように目配せをした。


新見ら3人は酒樽3つと料理の入っているであろう御重箱おじゅうばこを2つ新見ら3人が抱えている。


新見は他の2人と手際よく、酒樽を開け、御重箱から料理を小皿にわけ始めた。


鯛、伊勢海老、御造り、煮物、まるでおせち料理の様な豪華なご馳走であった。

それから酒は酒樽から酒瓶に手際よく移された。



「それ、みんな 座れ 座れ!」

宴会準備は整ったと思った芹沢は両手を上下しながら言った。



「おい、芹沢! また、どこかで 強請ゆすってきた銭で買ってきた酒であろう!」

その様子を見ていた海後は、嫌悪感まるだしで言った。


芹沢の顔がムッツと歪んだ・・・


「まぁまぁ・・・ここは めでたい再開の場 飲みましょう」

慶四郎が咄嗟とっさに場をなごませると同時に海後の型を軽く叩いた。


慶四郎は海後に目で「まぁ待て!」と優しく言っている。



「ほい 芹沢さん、どうぞ」

慶四郎は新見が用意してくれたさかずきを芹沢に持たせ酒を注いだ。


新見は結構 気がきく男だった、その間に全員に杯を持たせ酒を注ぎ始めた。


「ほれ 海後さんも どうぞ」

慶四郎は海後の持った杯にも酒を注いだ。


海後は恐縮するように杯を持っている。


慶四郎は芹沢からも海後からもあえてしゃくをさせず、 新見から酒を注いでもらった。

自分に酌をする行為で2人がまた口論になる事を考えたのである。




一同に酒が注がれたのを確認して

「では、再開を祝して  乾杯!!」

芹沢が大きな声で叫んだ。


「乾杯!!」


海後だけは ふて腐れていた。


海後は芹沢の人のふところに土足でズケズケと入ってくるとこが昔から嫌いだった。


一同、一気に酒を呑みほした。


「しかし、芹沢さんは今も昔も変わらないことしてますね」

慶四郎が話を切り出した。

実のところ慶四郎も芹沢の京での強請りタカリは良くないと思っている。


「それを言うなぁ・・・慶四郎・・・わしは、ああいう乱暴な事でしか物事が進められん!」

芹沢はバツの悪そうな顔をした。


「おぬしは昔も天狗党一味で、藩内で強請りタカリをやってたぞ!同じ悪事をみかどのおられる京の都でもするとは・・・藩の恥さらしじゃ!」

海後が横から割ってはいった。


芹沢はこれより3年ほど前 天狗党(水戸の勤皇攘夷派)の前身である玉造組で攘夷論者の活動の資金集めに恐喝まがいの行為で奔走していた。



「また、海後さん・・・そう あおらないでください・・・」

慶四郎は海後をなだめた。


「いいですか、芹沢さん 貴方あなたは今 精忠浪士組のお預かり藩の会津藩から給金をふんだくろうとして強請りタカリの恐喝まがいの事をしてるのはわかります」


芹沢は少し微笑んで話を聞いている。


「でも、不逞の浪士を取り締まるはずの精忠浪士組の筆頭局長が強請りタカリをしているのはいかがなものか?」


「わかっている・・・」

芹沢は小さな声で言った。


「では、会津藩から給金がでたあかつきには金輪際こんりんざい京の商人から恐喝などせぬとお約束いただきたい・・・」

品格もあり優しげな話口調である。



昼間の越後屋とは明らかに違う、温和な空気・・・静寂が少し流れた・・・


杯に残ったわずかな酒を飲み干し

「あい、わかった・・・」

芹沢は目を閉じ納得したかの様に深く頭を縦に下げた。



「しかし、若、会津藩から給金が支払われるまでは、芹沢の乱暴な狼藉ろうぜきは見て見ぬふりですか?」

芹沢のその態度を見て今までの鬱憤うっぷんが晴れたかの様に海後が尋ねた。


「いや、今日の様に私と出くわした時には、止めにはいりますよ」

慶四郎は堂々と言った。


慶四郎に言われるまでもなく、芹沢は会津藩から給金を貰えれば商人から金を巻き上げるつもりはなっかった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ