水上機を愛した馬鹿野郎達の突撃
太平洋に潜水艦が進んでいた。その中の搭乗員待機室には4人が暗い顔をしていた。
「ほれ、お前の番だ」
震える手でカードを取るとホッとしながらペアを作って捨てる。
「上がりだ」
「くそっ!」
全員が暗い顔をしながらの理由は訳があった。
「は?敵空母か戦艦を撃沈しろ?」
「ああ。本気だ」
「ジョークじゃないのが最悪だよ」
テーブルにあったウィスキーを瓶から飲んでため息をつく。
「何が原因だい?」
「こないだのソロモンで補給が失敗。とうとうソロモン均衡が崩れたんだ」
もとからそういう気配はあったが誰もそれを直そうとはしなかった。それが今回、イベントのフラグになった。
「今から2か月の間に敵主力を撃破だ。戦力は新型戦艦2隻に旧式が3。で、空母はエセックスが6以上だ」
「完全にイジメだろそれ」
「西アメリカ連合(WUS)が本腰入れたんだ。特に東アメリカ連合(EUS)の輸送船団が沈められてパワーバランスが大きく崩れてだな」
「ほーん。どこかで聞いた話だな」
こないだ大西洋で蜂の巣になりかけたことを棚に上げたセリフを言うがスルーされた。
「ああ、それと日本に強空と列空が戦って引き分け。補充を済ましたWUSが侵攻を再開したんだ。」
「…え、なに。味方になりそうな連中、みんな居ないの?」
「そう」
「波状攻撃で各個撃退?」
「そうだね」
辛い沈黙が落ちた。すなわち、後始末よろしくの…
「で、どこから依頼がきたの?」
「ほぼ全部。日本、インドネシアに強豪空隊。それとEUSも」
「完全に尻拭いじゃねぇかよ…どうしろってんだ…」
机に突っ伏して嘆く。個人経営の飛行機乗りに何を求めているのだろうか。
「攻撃力は無いし航海中に夜間攻撃しても相手はレーダーで捕らえるし、基地や母艦を追いかけられて数の暴力か…」
「そう。それで、ぶっ飛んだ意見が出た」
「…どこから?」
身体を起こして聞く態勢に戻る
「それはな…」
「そもそも他の策は無かったのかよ…」
「あったら当の昔にやってるよなー」
カードも止めてつらつらと彼らは今回の貧乏くじを引いた後悔を噛み締めていた。
「まあ、今回はデスペナを上回る報酬があるから受けて損は無いね」
「やり方は最悪だけどな」
「確かに。あの作戦は無いよな…」
今回の作戦はかなりの大掛かりになる。
下駄バキ連合の大型艦の航空戦艦伊勢型が囮として同じく航空巡洋艦の大淀、利根、最上型も付随する。彼らのにエアカバーとして千代田型が集められただけ並べて残った雲龍型に強豪の強空隊と列空隊が載せられた。
それらがすべて策敵と敵主力を踏み止まる理由にする。メインは2隻の潜水艦に載せられた8機の機体。
「まさかコレクションのこれを使うとは普通しないよな…」
終戦間際に作られた特攻だけを考えた有人ロケット「桜花」。それを伊400型の2隻に8機搭載。それらを艦隊決戦の最中にぶちかます。
さらに航空巡洋艦からも搭載された桜花で残存戦力を潰して崩壊させる。まさしく王道とも言えないふざけた戦い方だが、「方法問わず」に問われたことと残った戦力だとこれしかない事を指摘し、その人が中心に作戦を立案して今は囮の旗艦の伊勢に乗っている。
「囮艦隊より打電!我航空戦開始!」
「来たか!」
上空の航空戦ははっきり言って不利しか無かった。主力となる紫電改や列風は多数のF8FとF6Fに追いかけ回され、スカイレーダーは艦隊を襲って攻撃が終わった機体は水上機部隊を襲っていた。
「くそ!まったくもって無意味じゃねぇか!取り舵15!右舷、来るぞ!」
伊勢型の艦橋で喚くように指示を出して敵航空機を睨み付ける。
舵が効き始めてゆっくりと曲がる所に右舷から雷撃機が来る。
爆撃機のコースを避けるとしたら取り舵しかなかったのだから連中の考えは間違っていない。
雷撃機がコースに入ると左右から強風が突っ込んで編隊を撹拌。雷撃どころでは無くなった。
「主砲!射てぇ!」
止めにと号令が伝令され、前部にある主砲4門が発砲し、海面に水柱を立てさせる。雷撃機はそれを見て回避に入り、攻撃コースを完全に外れた。
「舵戻せぇ!今度は爆撃機来るぞぉ!」
対空砲火は敵機を落とさないまま急降下爆撃機の編隊を迎える
「釜はそのまま!速力半速!」
全速力まで使っていた蒸気をそのままに余剰蒸気を大気放出させながら速力を急激に下げる。
「舵は……今!面舵一杯!」
急降下に移った爆撃機を見ながら面舵を切る。爆撃機は出力全開のコースに投げて艦の前に爆弾が落ちた。
「舵戻せぇ!両舷前進一杯!」
長い航空戦が終わりを告げるがまだ終わりではない。釜を限界まで焚かしたまま敵主力へ走り続ける。被弾した艦は置き去りにしてでもである。
「被害報告!」
「本艦被弾なし!」
「利根1、被弾1速力低下無し!」
「利根2、被雷!速力低下!最大15kt!」
「利根2は置いていく!次!」
「雲龍被弾3、被雷2!航空運用不可!」
「大淀異常無し!」
「最上被弾1。2番砲破損!」
「最上2被雷3!まもなく沈みます‼」
「大淀2異常無し!」
数多な報告を受けながら指示を出していく。それは時として受け入れがたいものも有ったがすべてが彼の指示に従っていく。
「25ktが出せない艦は置いていく!信号!我に続け!」
残存艦艇は伊勢と最上に利根が1、大淀が2、駆逐艦が8隻。陣形を組み換えながら進み、被雷した艦が後方に置いていかれて徐々に消えていく。次の攻撃は沈んでいない雲龍型が狙われるだろう。上空に残った通常機体は無理にでも伊勢に着艦し、機体は海に捨てられる。格納庫は機体で一杯で仕舞う余裕が無いし飛ばせないからだ。
「電探探知!第2波来ます!」
「迎撃機出せ!目標まであと100海里だ!」
回収されたパイロット達は伊勢や最上型から強風で飛び立つ。再びの彼らは敵機を見つけるとフロートを廃棄して襲いかかる。強風から紫電になった彼らは第2次攻撃隊の編隊にいる爆撃機や、攻撃機を集中して落としていく。
中には戦闘機に追われながらも爆撃機を落とし続けて墜ちたのもいる。
「対空戦闘!これ以上やらせるなよ!」
日没までにあと2回航空攻撃を受けて残った戦力は伊勢と利根型が1に大淀2。駆逐艦が5となった。
雲龍型や千代田型は最初に狙われながらも被雷しても最後まで囮として奮闘。敵航空機の攻撃隊を多く撃墜した。
「残存機体は?」
「伊勢が…」
「艦隊でだ。もう数は無いんだぞ」
「…強風が6。瑞雲が10。紫雲が2。零観が4です」
「桜花は?」
「大淀が3機持っています」
「わかった。明日は紫雲以外全機迎撃。交戦距離になったら紫雲での砲撃戦だ」
「了解!」
「奴らを何故撃破出来ない‼」
「こちらの攻撃隊を撃墜を集中しています。明日はエアカバーを持つ雲龍型を撃沈すれば奴らも丸裸です」
「位置は判るのか?」
「ええ。電波発信を繰り返しています。」
「なら明日は潰せ!」
次の日、最初に雲龍型は集ってきた攻撃隊に沈没。次に電波発信した中破の利根型に集るはめになり残った戦力には被害もなく更なる前進が出来て、敵主力の重要な輸送船団を攻撃範囲に捕らえられた。
「高速艦艇は突撃!輸送船団を撃滅せよ!」
大淀以外の巡洋艦が先に行き、輸送船団を砲撃し始める。伊勢もまばらに砲撃し、数少ない航空機も発艦して輸送船を沈めていった。
護衛の艦艇もいたが、格上にやられた彼らは悲鳴の援護要請を出したが、間に合わなかった。
「敵主力を捕らえた!間もなくエ号2番を開始する!」
1隻の伊400型が浮上し、逆探で敵主力を捕らえる。限界まで速力を上げながら秘密兵器を用意する。
彼らを射出すれば駆逐艦が襲って来るだろう。彼らも囮も生還は難しいのだ。
「逆探、感度40km!」
「突撃隊用意!奴らを潰す!」
格納庫のハッチが開き、秘密兵器達が引きずり出される。搭乗員も手伝いながらとある歌を歌っている。
それは義体化した人達のアニメに出てきた。多脚戦車達が最後まで歌っていた曲。それは作業している乗組員も歌い始め、1機目が準備出来た。
「すまないが行ってきてくれ」
「方向は問題無いんだろうな?」
「問題無い!空母がいるはずだ!」
カタパルトで機体は射出される。曲は止まらず、搭乗員も口ずさみを止めない
主翼に付けられた補助ブースターが機体を高く持ち上げていく。
たったの40km。高度が上がれば飛び回る敵機も見え始める。そいつらを無視して使い終わった補助ブースターを投棄、主ブースターに点火した。
比べ物にならないGと加速に機体が震える。迎撃にきた敵機は遥か彼方の後方に流れて行き毎秒400メートルの景色は敵艦隊を拡大する。目標は中心にいる大きい平甲板…
緩降下のまま目標へ突っ込み、すべてのブースターを点火する。
対空砲火も上がるが迎撃すら間に合わない。どんどん大きくなっていき、甲板にある機体すら見えてきた。
「ーみんなみんなー」
最後まで呟いていた歌が途絶えて機体は甲板を貫通し、格納庫や区画を通過。機械室の上部で爆発。上部は大きく穴が開き、船体は大きく歪んだ。速力はあっという間に落ちていき、他の3隻も同じように桜花が直撃。漂泊状態になった。
その時の伊勢も悲惨だった。昼間で有りながら敵主力の戦艦から砲撃を受けている。
最初は観測射撃で有利だったが、すぐに観測機が落とされて有利は10分だけだった。あとはレーダー射撃を食らいながらこちらも反撃。ただし、多勢に無勢であちこちが穴だらけだった。
「大淀は何をしている?」
「間もなく発艦させます!」
残った主砲が撃ちだし、倍以上の水柱と被弾音。あちこちから煙が吹き出し、最悪ながら巡洋艦すら見えてくる。
「敵巡洋艦を近づけさせるな!」
残った巡洋艦は何をしていた⁉と叫びたかったが結末は分かっていた。多数の巡洋艦に沈没してしまったのだ。残ったのは伊勢と大淀だけ。
戦艦を無視して巡洋艦に砲撃をするが、奴らは止まらない。こちらに返礼すらしてきて副砲も沈黙。沈没は時間の問題となった。
「大淀!1機射出!」
1つの流星が走り、彼方に消える。そして爆発音が鳴り響いた。
さらにもう1機が飛んで行く。
音速の速さに迎撃は間に合わず、2隻目が爆発。敵は大淀に目標を向けるが3機目が直撃。戦艦2隻が爆発した。
敵巡洋艦が動きを止めた時を伊勢は逃さずに残った主砲を発砲し、1隻を撃破。
「大淀へ打電!逃げろ!」
大淀は驚くがようにしばらく直進していたが、敵巡洋艦が再起動するのを見て舵をきり離脱に走る。
「巡洋艦を撃破しろ!艦を当ててでもだ!」
再びのタコ殴りにもめげずにもう一度砲撃をして巡洋艦を撃破するが駆逐艦による雷撃をもらい、伊勢は沈没。大淀は最大速度を出して戦場を離脱出来た。
そして残った空母2隻とと旧式戦艦2隻は…
「さ、左舷よりロケットが!」
「迎撃~!」
「間に合いません‼」
船団護衛の旧式戦艦が最初に狙われた。残ったもう1隻の伊400が発艦させて攻撃。直撃した戦艦は爆発を起こして沈没し、丸裸になりかけた船団のカバーに空母が近寄るが違う方面から分離した大淀2からのロケットにより空母も全滅。最後は大淀2隻の突撃により船団は散り散りとなってWUSによるソロモン補給作戦は失敗に終わった。
それによる損害は空母6、戦艦5、巡洋艦3隻におよぶ大損害となり、片や戦艦1空母1。水上機母艦2と巡洋艦5を損失。互いに全滅ながらも戦略的目標を達成したことにより一時的ながらソロモンの制海権を得た日本側は補給を済ませてガダルカナルへ攻勢に出た。
しかし、日本側は敵艦隊を潰せたが、その代償に傭兵の航空隊と艦隊を磨り潰した。彼らが補充し終えるのには多大な時間を要し、ラバウルの航空戦力も大きく衰退。
制海権は得たが制空権は確保出来ないままとなり、過酷な戦況は続いたままだった。
「見ろよ!強風だぜ強風!」
「とうとう買っちゃいましたねーしかも複座型」
インドネシアの小島の海岸で小躍りしている搭乗員と見続ける機上員。
「しかもエンジンは液冷のDB603!速力も桁違いだぜ!」
「普通の機体買いましょうよ…」
「嫌だね‼俺は下駄バキが大好きなんだ!」
それでもこんなバカはゲームを止めないで楽しんでた。例え苦しくても違う道を探すだろう。