宝箱と 恋の再挑戦
宴の賑わいが 辺りをよりいっそう 彩る。
今宵は 巫女姫帰還の祝いと 二人の婚約発表の ダブルおめでたである。
この度 改めて国主となった若君の祖国から 超高級なお酒の数々が届き、
国軍新総帥に就任した 女性軍師は 嬉々として 周りの男たちを 沈めていく。
その傍らでは 彼女のパートナーが 女子力をフル回転させ ご馳走を ふるまいつづけている。
彼は その女子力をかわれ 財務担当に 任ぜられたばかりだ。
その喧騒から するりと一つの影が抜け出し、
かつての月神殿後へと 向かった。
おりしも 今宵は 満月。
月の精霊アルテイナの 力満つる夜ー
月の精霊像の前には すでに 先客があり、
彼女の訪れを予期していたかのように
二人分の 食事が 用意されていた。
「あらあら、主役が こんなところで かくれんぼ?
ライ君が 探しにくるんじゃないの?」
先客の 女性は 少し照れくさそうに微笑むと、
自分の隣に腰掛けた 紅色の髪の友に つぶやいた。
「いいのよ、ほっといても。
これから いやというほど 一緒にいることになるから。
それより、彼に この国を託したこと、怒ってる?」
意外な質問に 少し驚いたものの、すぐに 笑顔で ひていする。
「ううん、むしろ 感謝してるくらいよ。
ラヴィ様が あの国で 自由に暮らせるようになるには もう少し 時間が
かかるもの。
精霊の存在を 人々が受け入れられるようになるのに
時間が 必要だわ。
でも それをまっていたら、おばあさんに なっちゃうもの。
アニーちゃんこそ、これで 良かったの?
ここは あなたの ふるさとで、大切な 場所でしょう?」
満月を見上げながら 遠い昔に 想いを馳せる。
「みんなと 旅していた頃、こうして月を見上げながら おばば様が 昔話を たくさんしてくれたの。
あれは この国の 歴史物語だったのよね・・・
特に 初代の銀鈴の乙女“アルティナン=サーラ”とギルディガードのお話が 大好きだった。
あの頃は 自由で 本当に良かった。
この国も もう大丈夫。大地は 癒されたから・・・
それに ほら、あそこ。ようやく 目覚めはじめたのね」
彼女が指差した先には、一輪の銀の花。不思議な音色を奏でる 月の精霊の涙から生まれたそれ。
リーンリリン、リーンリリン。リーンリリン、リーンリリン。
ーもう、大丈夫だよね。とうさま、かあさま。
わたしのたから箱を 私自身の笑顔でみたしても。
からっぽだった、からっぽになったたから箱ー自分の心を 今度こそ 自分の笑顔で満たしていく。
そこには もちろん
愛する人の笑顔や 友の笑顔、そして これから出会う、もう 出会っている人々の 笑顔でー
「やはり ここだったんだな、アーニィ。
ずるいぞ、二人で 女子会か?!
おれたちのほうが 優先なんだぜ、何せ ここは 初代オノコツドイシトコロだからな」
といいつつ まぶしいほどの 笑顔を向けられる。
ことり。
たから箱に とびっきりの 笑顔を一つ。
静かな宴を遠くで見つめる影ひとつ。豊かな紅色の毛が 月の光で 輝いている。
ーなんでまた わたしの恰好をするんですか?また、旅にでも 出るんですか?
精霊王の息子からはなしかけられ、苦笑いを浮かべる。
ーそれもありかも。あの子もこれで 幸せになれるから。
ーいいんですか、ほんとのこと言わなくて。
ーいいんだ、もうじゅぶんだ。
あの時 クロルにたのんで 時空の彼方にとばしてもらった愛娘。
あの時代では まだ国として不十分であり 女王本人が 娘よりも 国を選んだのだ。
だが おばかな友は とばした先を忘れ、必死で探し続けた結果 ようやく見つけた。
ーあいつらには 黙っていこう。婿殿が 浮気しないように。
ーいじわるですね、アナタも。さ、そろそろ いきましょう。
クロル様や ウォリアル様が 待ちくたびれていらっしゃいますよ。
男子会の用意を 整えて。
ーああ、モフ殿。お待たせしましたね、いきますか。
二匹のけものが 月明かりの下を かけさっていく。
それを 見送るかのように、一輪の花が 音色を奏でる。
リーンリリン、リーンリリン。
終わり




