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うさぎはさびしいとね・・・

「一人だと怖いでしょ?でも皆で入れば怖くないよ」


一歩ミカが進んできた。僕たちは一歩ミカから離れた。


「どうしたの?怖い顔して」


「・・・」


ミカの胸元には、ここの遊園地で彼方此方見かけるウサギピエロが揺れていた。学校で見た時は、綺麗な目に痛いビビットな色あいだったのに、今はボロボロ状態だ。何よりも、ミカの足元が汚れていた。

サンダルを履いた足は泥だらけみたいになっているし、スカートも汚れている。


「ねぇ、どうしたの?あぁ!そうだまだ一個噂が残ってるんだよ。ドリームキャッスルって言うのがあってね、さっき通り過ぎちゃったじゃない?そこの地下には拷問部屋があるんだって。遊園地なのに再現率高いよね〜。昔のお城には実際にあったらしいよ。ていうか、あのお城はね、実際にヨーロッパのお城を移築して作ったんだってーー。だから本物の幽霊も連れてきちゃったかもしれないよね」


僕たちは一歩も動けなかった。


「可哀想だよね。いきなり言葉も通じない異国に連れてこられて。」


そう言いながら、ミカは薄汚れたウサギピエロを両手でもって撫でた。

月明かりが照らしたのは・・・。


「でも遊園地になったから楽しかったかな?でもさ、Closeしちゃったら寂しいよね、しかも肝試しに巫山戯て遊びにきたりしたらさ・・・うざくない?」


コテッと首を傾げた。その首は赤黒い物で覆われていた。あり得ない程の角度に曲がっている様に見えた。


「「「っ」」」


「ぎゃーぎゃー騒いでさ、煩かったんだ。遊園地でそんなに遊びたいならさ、遊ばせてあげようと思って」


がさりと音が周りでした。僕たちは固まって引っ付くしか無かった。


「やっぱり、いっぱい居ると楽しいでしょ?遊園地は」


そう言うと周りの建物に電気が着いた。まるで普通に動き出した遊具に僕たちは唖然とした。


「みぃ〜んなで、騒いだ方がたのしぃ〜でしょ?でもいつも同じメンバーじゃつまらないし、適度に中身は入れ替えないとね、ふふふ。慣れちゃうとさ〜叫んでくれないだよね〜」

はぁあ〜っと大きなため息をつきながらミカは言った。


「ミカは・・・」

そこまでアキラが言いかけて口を閉じた。


コイツはミカじゃない、僕もそう思った。そして、コイツは誰だろう。ミカは悪のりするタイプだがココまでじゃないはずだし、いや、そうじゃない、この状況おかしいだろう。そう思うのにそれ以上考えたくなかった。



「ほらぁ〜、あ〜そぉぼぅ〜。せっかく肝試しに来たのにぃ、全然肝試しになってないよぉ。ここのキャラクターのウサギピエロを持って帰るとかさ、ミラーハウスに入るとかぁ、お城の地下に行くとかさぁ〜。只歩いてるだけじゃん、もっと奥にね?」


一歩ミカが進んだとき、大きな破裂音と共に爆音を鳴らした紅い車が乗り込んできた。 おもわず口が開いてしまった、フェ●ーリだ!!なんで?!


僕たちとミカの間に割り込む様に入ってきた車は、助手席の窓が空いた、そこから顔をのぞかせたのはメグだった。

「乗って」

短く言うと、ドアが開いた、僕たちは慌てて乗り込んだ。なだれ込む様に乗って急いで扉をしめた。というか後部座席が2席としっかりと分けられているのに乗ったせいで、アキラの上にナツコが座っていた。足が僕のモモの上にきてるし。ちょっと羨ましいとか思ってなんか無い、っと同時に

ドンっと音と共に窓ガラスに手形が着いた。


「ひぃい!!」


凄いエンジン音と爆音と共に走り出した。ライトが照らすのは、細い山道だ。先ほどの遊園地の中は一瞬で過ぎ去ってしまった。


「助かった」

アキラが短く呟いて、大きく息を吐いた。


「うん。間に合って良かった。」


「あれって何?どういう事?ミカは?!」

ナツコが震えながら言ってきた。僕は、さっきから横の窓とボンネットを叩く音に恐怖だ。



「ミカは、数日前から行方不明」


「「は?!」」

僕たちは唖然とした。だってさっきまで居たけど、いや別人というかあれはアレだ、口にだして言いたくない。


「たぶん、あの遊園地に居る、警察に届け済み。」


「そうだな」

そう言ったのは運転している人だ。見れば、お坊さんだった。坊主頭に、黒い袈裟を着ている。めっちゃこの車とミスマッチだ。


「え、お坊さん?」

僕が呟くと、メグが説明してくれた。

「これ、うちのお兄ちゃん。うちお寺なんだ。だから、お兄ちゃん連れてきた。」

今はめっちゃ心強いお言葉。僕は嬉しさ半分怖さ半分だった。ていうか、メグ分かってたなら最初から止めてくれ!!


「なんで、止めなかったんだよ。お前」

アキラが僕の心の声を代弁してくれた。


「いや、ガチだとは思わなくって。そもそもここの廃園の事言ったのはアキラじゃん」

確かに、アキラがその話題をしたはずだ。


「は?タケシだろ?」

アキラが何言ってるんだって顔をしてきた、いやいや今更そういうのいらないよ!

「「は?」」


「え?タケシ君だったよね?」

そう言ったのはナツコだった。


「まってくれ、僕もアキラが言ったのを聞いたぞ。」


「俺は言ってないぞ。そもそも場所も知らなかったし」


僕たちは黙ってしまった。

「てことは、その時点でもうミカちゃんは入れ替わってたな。完全に」

そんな恐ろしい事を言ったのはお兄さんだった。



「まぁ、あれだ、着いたらさ。めっちゃ私だけ追い出す感じが合ったし、自分の力じゃどうしようもない場所だったから、お兄ちゃん呼んできたんだ。」

切り替える様にメグが言って、僕はその行動に感謝した。見捨てやがってって思ってたのは心の底に沈めておく。


「ったく、事前に調べて行けよ。だいたい、肝試しするだけで寄って来るっつうのにワザワザ曰く付きの場所に行くなよ。」

お兄さんが飽きれた様に言ってきている。因に気づいてしまったんだが、この車内に似つかわしくない、お経がスピーカーから流れている。怖い。


「ごめんなさい。」

しおらしくいうメグの様子に僕はもう、涙目だ。


「あと、全員、今日うち泊まっとけ。」


「え?なんで?」

アキラが不思議そうに言った。


「理由いった方が良い?」

お兄さんの言葉に、僕は全力で首を横に振った。知りたくない知りたくないったら。お坊さんのお兄さんが言う事に僕は従うんだから。


「ま〜肝試しにはちょっとハードル高かったな。」

納得していないアキラにお坊さんがふわっとした回答をしてくれた。僕にはそれで充分です。はい。


「てかさ、夕方の奴らは大丈夫だったのかよ。」

アキラが大きくため息付きながら言えば、メグが平気だよっと返した。


「夕方のグループは、駅まで行って廃園に行く前に地元の人に見つかって帰ったんだって。地元の人の話を聞いて怖いって言った女子が多かったかららしいけど。まぁ、タケシが一緒だし。別の場所で遊ぼうぜって言って移動したんだって」

「何?!」

僕もタケシグループで行きたかったな!!


「あいつ、女子の味方だかんな」

アキラがつまらなそうに呟いた。


フェ●ーリはとっても早かった。あっという間に、人が溢れる都会に舞い戻ってきた。僕たちはホッとした。人がいるし、しっかりと光るネオン。なんかほっとする。


そして、その夜は、メグの家でお祓いをして貰って、怖いからアキラと一緒に風呂に入った。そして、坊さんのお兄さんと一緒の部屋で寝て過ごした。メグとナツコは襖を挟んだ隣の部屋だ。

外はちょっと騒がしい音がした気がするけど平気。うん。

ちなみに、メグのオヤジさんにめっちゃ怒られた。肝試し云々の前に夜の森は普通に危ないって、あと下手したら連れてかれていたっていうのも、僕があまりにも怯えてたからそれ以上は言われなかったけど。

次の日の帰る時、何故か僕だけお札いっぱい渡されたのはきっと恐がりだからだと思う。うん。絶対そうだよね?!


「まーあれよ。人もお化けもさ、反応いい人にはちょっかい出すじゃん?」

メグさん、そういう情報はいらないです。


僕は涙目になりながら、お兄さんが運転する紅いフェ●ーリで家路に着いた。お兄さんの普段着は黒パンツに黒Tシャツで、とても危ない人に見えました。




そして月曜日、学校に着くと。



「何これ・・・」


あ、そうだ言ってたじゃないか、ミカは行方不明だって。そう聞いてたのに、あの時は本当にパニクってたんだって思った。冷静に思うのに僕は血の気が引いて、椅子にぺたりと座り込んだ。目線はミカの机から離せない。


ミカの席には花が置かれていた。


周りの女子が、悪ふざけじゃないんだよね?本当なんだよね?っと確認し合っている声がしている。


「おはよう、ハルキ」

そう声をかけたのはメグだ。


「メグ、これって」


「ちょっと移動しよっか」

丁度入ってきたアキラも一緒についてきた。


「結論から言うと、死後一週間以上だったらしいよ。場所はあの廃園。近くにワゴン車が乗り捨ててあった。ミカの彼氏が大学生で、その友達とうちらが行く前に肝試しに出かけたらしいよ。その後行方不明だったんだて」


「はぁ?!」

アキラも流石に絶句した。


「そういえば、数日風邪で欠席してたね」

アキラが思い出した様に呟いた。


「あの時点では、家族は家出だろうって思って一応捜索願い出してたらしい。学校側には風邪で連絡しといて」

そうだ、あの日ミカは病欠の後だった。


「お父さん達がお祓いに昨日行ってきたから知ったんだ。噂のある場所に・・・うん」

メグはそう言ってカーデガンで隠していた腕を出した。そこには4個も数珠を付けていた。


「一応。つけててってお兄ちゃんから預かった」

そう言って二つとって、僕とアキラに渡した。僕たちは巫山戯ずにその数珠を腕に付けた。



あぁ〜あ 残念



そう呟いた声が耳元でした。




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