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うわさうさぎのわんつー


「私のお兄ちゃんが行ったんだけど、観覧車で声聞こえたんだって!」


「やめろぉおおお!ぜってぇ信じない!」

嬉々として言ってきたのは隣に座るミカだ。今僕たちは大学生のお兄さんが運転する車で、某ドリームランドに向かってる。全然ドリームじゃねぇ!!


もちろん僕はブッチしようと思った。だって怖いし。夜寝れないじゃないか!!

だけど、コイツらが塾の前で待ち構えてたんだ。夜だって言うのに、サウナみたいに蒸し暑い夜に!!

しかもワゴンで、ほぼ拉致ラレタ。


「他の肝試しの人の声じゃないの?」

飽きれた様に言ったのはロングヘアーを一本に結んだメグだ。

「ぇー!」

「だって、そんなに有名ならこの時期肝試しする人多そうじゃん?」


「確かに!」

僕は力強く頷いた。そうだ、人がやってるんだ、それでも怖いものは怖いけど!

だけど一緒に乗ってるアキラがいらぬ事を言いおった!


「そしたら、その人達、脅かそうぜ!」

「止めろ、バレたらぼこぼこにされるって、ヤンキーだったり年上の人だったりしたらヤバいじゃんか!」

アキラなら冗談じゃなくマジでやりかねない。

「楽しそう!ちょっと驚かすだけだってハルキはビビリだなー」

ミカもやる気満々だし。

「やめろってぇえええ」


「てかさ、その裏野ドリームランドって遊園地、全然ネットでヒットしないんだけど、本当にあるの?」

そう言ったのは、さっきまで静かだったナツコだった。ちなみにナツコは車の助手席に座ってる。


「んー裏サイトにしか乗ってないんだよねーほら」

そう言ったのは、ミカだ。持ってるスマフォをナツコに見せた。

「また、変なサイト見てる。」

「えへへ」

「なんで、廃園になったの?」

そう聞いたのはメグだ。

「んーなんか、子供が行方不明になる事が多発したらしいよ?事故でもあったんじゃない?営業停止命令とか起きてさ、そのまま廃園ーって感じじゃない?」

「確かに、最近厳しいもんな。事故が起きるとすぐ閉鎖だもんなー」

ふてくされた様に言ったのはアキラだ。


「ちなみに、夕方組は途中でリタイアだってー。ウワサ全部確認出来なかったってー電気が通ってないから建物中が怖かったんだってさー」

頬を膨らませながらミカは今日のグループL●NEを見ながら言って来た。

「帰るー!!夕方でリタイアしたっていうのに!もう夜じゃん!暗いよ!暗い中暗い所なんて嫌だ!」

「ハルキ煩い」

ナツコに冷たく言われた。酷い!

「ナツコは怖くないのかよ!!」

「んーハルキがあまりにもビビりすぎてて、怖くない」

「何で!!」

そんな大騒ぎしている間に、車は進み、都心から少しハズレの山の上にある廃園に僕達はついてしまった。くねくねした山道は怖かった。道路は広かったけど森の中が真っ黒な布で覆ったみたいに真っ暗で何も見えなかった。山に入らずに進めば、たしかこの先にも山がぽこぽこあるし、そのまま隣の県にいけたはずだ。


車で来た道路の先には、街の明かりが遠くに見える。電車もあるが、確かこの路線は終電が早かったはずだ、時刻は午後9時。都心の塾から車で40くらいだろうか。結構遠い。スマフォで素早く現在位置を調べた。その横でメグが覗き込んで来た。

「うわ、最寄駅まで距離ある〜徒歩で25分?!」

しかもルートは、さっき車で来た道を歩いて行かないとない。


「まーまたあのお兄さんに迎えに来てくれるだろ?」

アキラが言うとナツコが不安げに言った。

「12時前には帰らないとやばいからさ、11時前に迎えに来てもらおうよ」

「そうだな。連絡よろ」


「ん?私連絡先知らないよ。アキラのお兄さんじゃないの?」

アキラは長男だ。弟は居るが、兄はいない、思わず僕とアキラは同時に声を出してた。

「「は?」」


「ぇ?ナツコの彼氏じゃないの?」

メグが言えば、ナツコは首を振った。

「肝試しに迎えに来たって言われたよ。うちの家が近かったから先に寄ったって言われたんだけど。それにグループL●NEでメッセ来てたじゃん!?」


僕もアプリを起動して見れば確かに大学生の兄がワゴン車で迎えに行くっと言うメッセージがあった。だが、それを送ったやつが誰だか分からない。


僕は血の気が引いた。

メッセージを送った奴の名前が夢園っていう名で設定されているが、クラスにそんな名前の奴はいないし、なにより英語に直したらドリームランドってやつじゃね?きっと夕方組のやつが悪ふざけしてるんだ。そうに違いない!


「夢園って誰?」


メグがむすっとした声で聞いて来た。もちろん僕も知らない。周りの奴らも首を振る。

「きっと夕方組だよ!や、やだなーもう〜一応送っとこう」

そう言って、ナツコがメッセージを送った。


"11時ちょい前に迎えよろ"




「さ、行こうぜ!懐中電灯も持って来たぜ!!」

アキラがカバンから取り出したのはデカイ懐中電灯だった。

一気に辺りが明るくなった。それにホッとしながら、僕はみんなについてく。


僕は怖い話は聞くくらいなら許容範囲だ!だが、行くのは好きじゃない、ぶっちゃけて怖いからだ。自分で歩かなきゃいけないし。アトラクションで乗ってるだけで進むのなら全然OKだ。

でも、ちょっとした下心もあったりする。だって、夜組はの女子は可愛い子ばっかりだから!!もしかしたら抱きついてくれるかもっていうか、抱きついても許されるだろ?!

そんなことを考えてたらアキラが振り返った。

「怖くなったら俺に抱きついても良いぜ!ハルキ」

アキラが僕に向かって言ってきた。女子にじゃない。僕に。

「嫌だ!」

「じゃーこのメンバーで誰にしがみつくきなんだよ。女子に抱きついたら・・・」

アキラが見渡せば、女子達から冷たい目線を浴びてしまった。

「殴るよ」

ナツコに凄まれた。

「うううぅうぅ」

僕は諦めて塾のリュックを抱きしめる事にした。



ライトが当たった入り口の柵は壊れて地面に落ちていた。大きな看板には、”裏野ドリームランドへようこそ”っと消えかかった文字で書かれている。

受付の場所の窓は破られて、草木が生えまくってる。

「行くぞ」

そう言ってアキラが先の進み始めた。入ってすぐ右側にはジェットコースターの乗り場があった。どうやら園の縁に沿ってレールが走ってるようだ。

舗装されてたであろうレンガ道は、レンガの隙間から雑草が生えていた。奥も暗くて乗り物や建物があるのがなんとなくわかるくらいだろう。


「誰もいないね」

ミカの言葉に皆んなうなづいた。

「夕方組は帰ったしな。居るとしたら、俺たちと同じ様に肝試しに来た奴らじゃね」

そう言いながら、アキラがジェットコースターの操作室ズカズカ入っていった。

「まてよ!!」

「アキラすごーい」

ナツコが感心しながら同じように小走りについて行く。

アキラは操作室の配線を弄り始めていた。バチバチっという音と共にジェットコースターの周りにある電球がついた。

「なんだ、電気通ってるじゃん」

「嘘だろ?」


錆びついた、ビビットなピンク色のジェットコースターのレールが夜の闇の中に浮かび上がった。全ての電球が着いた訳じゃないせいか、半分だけ照らされているし、もうすぐ電球が切れそうなのもあってチカチカ光っている。なにより、錆びた鉄が血の様に垂れ下がっている様にも見えて不気味だ。何より錆びた鉄の匂いが半端ない。

コースターの途中にはウサギの顔のトンネルがあるが、耳が半分ないし、顔も穴だらけだ。

レールの所々に大きい何かが引っかかっていてふらふらと揺れている。きっと何処かから飛んできたゴミ袋だと思う。


「 この状況ですでに怖い」


「ねぇ。・・・やっぱ、帰ろうよー」

ナツコも怖くなったのか僕に賛同してくれた。


「ぇー!これからじゃん。」

そう言ったのはミカだ。

「そうだよ。電気ついたし探索しやすくなったじゃん」

アキラも同じように言ってきた。


「肝試しに来たのに、全然肝試しになってないじゃん。このジェットコースターもいわくつきでね。」

ミカが構わず怖い話を仕始めて僕は慌てた。今だって充分怖い。

「ちょっ!!」

「危険なアトラクション程、事故は起きるものでしょ?どんな事故があったと思う?」

しかも、ミカはスマフォのライトを使って顔を下から照らして語り始めた。僕は怖くてアキラの背にくっついた。くっ付いていいって言ってたしな!横にはいつの間にかナツコもいた。

「ちょっと、怖いよ!」

ナツコが叫び、僕は頷いて同意した。それなのにアキラは平気そうだ。

「ん〜転落事故じゃね?ボルトが緩んでたとか、ちゃんと安全バー降ろしてなかったとかさ」

「せーいかーい」

ミカが低い声で返してきた。と同時に、キィィィィィ!!っとジェットコースターから大きな悲鳴のような音が響いた。

「ひぃいいい!!!」

「きゃー!!」

僕とナツコはアキラにしがみついた。

「いてぇえええ!!ハルキ!!お前力強い!!」

「どぁわぁってぇだあああ」

「あー分かった分かった。怖かったんだな。安心しろ、錆び付いたレールの一部が外れて鳴っただけだよ。よく見てみろ、あそこ」

そう言ってライトを当てた先には確かに鉄のレールの一部が落ちて、一部だけまだくっ付いているせいか、キィイキィイ鳴り響いていた。

「な、なんだ。驚かせやがって」

僕はやっと落ち着いてアキラにしがみつくのを止めた。手は服から離せないけど、ナツコもしっかりとアキラのTシャツ掴んでるから大丈夫だ、問題ない。


そんな中、一歩は慣れてたメグが周りを見渡してぽつりと呟いたのを僕は聞いてしまった。

「ここ、普通にヤバイよ」


「え?メグサン?!」

なんでこの状況で言うのかな?!言わなくても僕はもう怖いから帰りたいけどね。


「私、帰るわ! ・・・自分大事」

何時もとは違ってメグは前半大きな声で叫んで、後半は小さく呟いてった。その様子に僕は怖くなった。メグはどちらかというと、アンニュイな感じだけど意外にノリが良い子だ。それなのに、遊びから抜けるなんて初めてだ。あんな真剣な顔も見たことなかった。


「はぁ?巫山戯んなよ!」

そうアキラが叫んで、僕はメグから視線を外してしまった。そうだ僕もっと思って振り返った時には、もうメグの姿が無かった。しかも真っ暗で何も見えない。追いかけようにも、足がすくんでしまっているし、アキラから離れるのも怖かった。


「うそ。メグ帰っちゃったのー?」

ナツコも僕と同じように帰りたかったみたいだ。


「なぁ、帰ろうよ。アキラ」


「んー、もうちょっと見ようぜ。ぐるっと回るだけ。な?」

僕たち二人の様子に、アキラは熱が冷めたのか、怠そうに言って歩きはじめた。


「そうだよ。せっかく来たんだからさ」

ミカも並んで歩きはじめた。

次▶︎21日20時

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