表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

作者: 那由多
掲載日:2017/04/13

 幾何学模様の空を三羽の鳥が飛んでいた。


 枯れた大地に寝転んで、僕はそれをぼんやり見上げる。


 まるでカタツムリになったような緩慢な時の流れ。


 さらさらと水が流れる音がする。


 川でもあるかと思ったら、それは僕の目から溢れる涙だった。


 どんどん溢れる涙は、やがて大地を潤すだろう。


 そうして大地は海となり、干からびた僕はそこに浮かぶ。


 くしゃくしゃになった僕を拾い上げるのは白い指先。


「先輩?」


 耳をふるわす甘い声。


「ユーコか。何してる」


「船旅。くしゃくしゃだね」


「だからお前が良く見えないんだ」


「そうなの? せっかく水着なのに」


 何てことだ。

 

 彼女の白くむっちりとした肌をこの目で見られないなんて。


 けど、それで流れるほどの涙も、もう残っちゃいない。


「膨らませてあげようか?」


 ふう、と彼女は僕に息を吹きかけた。


 それは爽やかで、どこか生臭く、そして生暖かい。


 心を鷲掴みにして離してくれない悪魔の誘い。


 耳をくすぐる彼女の声。


「口のところから……ふうっ……て、する?」


 してほしい。

 

 してくれ。


 ぱんぱんになるまで。


 いや、破裂するまで。


 それで、粉々になって、風に散る事が出来たなら、僕はどんなに幸せだろう。


 ゆっくりと、彼女の唇が近づいてくる。

 

 甘い香りを吸い込みながら、僕はその時をただ待つ。


 突然響く甲高い声。


 耳障りな響き。


 肌を泡立たせる音、音、音。


 幾何学模様の空はいつの間にか赤く燃え上がっていた。


 声も響きも音もどんどん大きくなる。


 それは即ち怒りに満ちた三羽の鳥。


 狙いは僕だ。


 全てを掴み、切り裂き潰さんとする足が、僕を引っ掴んだ。


「ごめんね、先輩」


 ユーコの手から僕は引き剝がされて、そのまま空へと持ち上げられる。


 怒りに狂う三羽の鳥は、てんでに僕を引っ張り合い、突き合い。


 その度にちぎれていく僕は、やがて粉々になって風に散った。


 欠片の一つでもユーコのところへ。


 でも、風に流された僕はいつまでも落ちる事は無かった。


 幾何学模様の空を三羽の鳥達が笑いながら飛んでいる。


 僕は風に漂いながら、それを眺めているしかなかった。


 なぜならもう、閉じる瞼もないから。

 

自分のマイナス思念をとことん煮詰めた短文が書きたい、とたまに思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ