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万能召喚士と恵みの女帝  作者: 竜鬚虎
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第五十二話 帝国滅亡

「「だめえ~~~~」」


 それに立ちはだかるのはライム達。和己を守るように、鋼狩人の前に立ち塞がる。それに鋼狩人が、手に持った斧を振り下ろした。


 ドン!


 振り下ろされた地面が、ライム達もろとも叩き割られる。まるで地震が起きたかのような揺れと、大地に亀裂が入る。

 先程の銃弾などとは、比べものにならない破壊力に、ライム達はその身を粉々にされて倒されてしまった。

 残りのライム達も、構わず鋼狩人に立ち向かう。鋼狩人は、彼女らを斧で叩いたり、足で踏みつぶしたりして、次々と倒していく。

 だが全てを捌ききれずに、何人ものライムが、鋼狩人の機体に次々と飛び乗った。


 ゴン! ゴン! ガス! ガス!


 虫のようにへばりついた彼女らは、鋼狩人の身体を殴り始めた。関節などの、鎧の節目を主に狙って。

 彼女らの怪力ならば、例え一発が効かなくても、続けて殴り続ければいずれは破壊できるかも知れない。


『ウジ虫共が! 死ねぇ!』


 バリバリバリバリ!


 その途端、鋼狩人の全身が発光した。そして無数の電気花火が、機体から漏れ出てくる。鋼狩人は自分の全身に電流を流したのである。

 その電撃を浴びたライム達は、感電を通り越して燃え上がり、あっという間に黒焦げの炭となって崩れ落ちた。どうやらこの鋼狩人、小型の敵が、機体に吸い付いた時を想定した機能をつけていたようだ。

 全身から煙を上げる鋼狩人は、自身も多少のダメージを受けたようだが、その程度は何ともないと悠然と立ち上がっていた。そして何事もなく動き出し、ライム達を殲滅していく。


(うわっ、やばっ!)


「きゃあっ!」


 鋼狩人が自分の方に向かっているのを見て、和己は掴んでいたハリエットを放り投げて、その場から駆けだした。


『逃げるな! この軟弱者が!』

「軟弱者で十分だ! くそがっ!」


 鋼狩人の斧攻撃を、素早く躱しながら、和己はあちこち素早く動き回る。魚竜の時を遙かに凌ぐ走力と敏捷性である。


『くそうっ! ちょこまかとっ! 逃げ足だけは、大したものだ!』


 幾重も振り下ろされる斧の刃が、大地に幾つも割れ目を作り、あちこちの建物を破壊して回る。

 本当ならここから逃げだしてしまいたいが、毒ガス弾をどうにかしないといけないため、あまり遠くまで移動することは許されない。

 かといって、武器も召喚以外の特殊技能もない和己では、こいつを倒すことは無理だ。試しに殴ってみようかと思ったが、もし通じなかったら、その瞬間に叩きつぶされる。

 カーミラがいない今の彼では、戦闘力などたかが知れているのだ。ライム達が倒された今、他に当てに出来る戦力など……


(簡単だ。前見たくカーミラを呼び出せば良いんだ! ようし……)


 カーミラの向かった目的は既に果たされている。和己は彼女を召喚しようと、走りながら念を唱え始めたときだった。


『和己。家の方から連絡が来たぞ。メガとセイラが、そこに自分たちを召喚してくれと言っている』


 すると彼に語りかける者が現れた。素早く動き回る彼に、見事ついて回って浮いている、目目連である。実は彼らは目目連も連れてきていて、自宅にいた者達が、これらの一部始終を見ているのだ。

 何とか攻撃を上手く避けられてはいるものの、とても余裕があるとは言えない状況。突然割って入ってきて集中を乱す者に、和己は激怒した。


「何だよこんな時に!?」

『あの二人が、こいつとの決着を自分たちでやりたいそうだ。まあ、あいつを恨むのは、彼らだけではないだろうが……』

「だあっ! 判ったよ!」


 街をドンドン破壊しながら、迫り来る鋼巨人に追われながら、和己は召喚魔法を発動させた。


「ようしっ、頑張ってください、ガイデル様! そんな蛮族、さっさとやっちゃってください! ……あら?」


 少し離れた所で、ハリエットが鋼狩人に声援を送った直後に、ライムとは別のものが、白い光と共に、その場に現れた。


「おっしゃあっ! 来てやったぜ!」

「和己さん! こんな時に、無理言ってすいません!」


 現れたのは二人のホタイン族の若者。メガとセイラである。メガは刃渡り100㎝を越えるだろう大太刀を持ち、セイラは薙刀を持っている。和風装束の二人には、実に似合った装備である。


『蛮族共が! 貴様らごときが出てきて、何が変わる!』


 二人の出現にも動じず、鋼狩人は彼らに斧を振り下ろした。だがそれを二人は、和己より素早い動きで、余裕で躱してみせる。

 その二人の得物は、刀身に青い輝きを放っていた。電灯のように光る刃。それは召喚によって強化された、二人の生命力の一部が注ぎ込まれた力。“気功”のエネルギーである。


「てりゃあっ!」「はぁ!」


 二人は同時に鋼狩人の間合いに詰め寄り、同時に得物を振るった。得物が襲ったのは、鋼狩人の両脚。メガが右脚を、セイラが左脚をそれぞれ渾身の力を振るって斬り付ける。


 ザキィイイイイン!


 放たれる二重の金属音。二人の得物は、その両脚を切断には至らなかったものの、装甲に深い傷と凹みを作る。そしてその衝撃で、バランスを失った鋼狩人は、前のめりに盛大に倒れ込んだ。

 鋼狩人は、すぐに両手で地面を押し、足を起こして立ち上がろうとするが。その動作の間に、鋼狩人より遥かに素早く動ける二人が、隙を見せずに追撃をかける。


 ガス! ガス! ガス!


 メガとセイラは、鋼狩人の腰と両脚の付け根の関節部分を、大魚と包丁のように、何度も斬り付ける。

 装甲のない関節部分は、一発で切断には至らないが、何度も斬り付けられると共に、切り口の傷がどんどん深くなっていく。


『ちょこまかと、やかましいわ!』


 鋼巨人の全身に、あの電撃が迸る。二人は相当身体が頑丈になっているようで、ライム達と違って、それだけ即死には至らない。


「ぐうううっ!」


 だが感電でかなり効いているようで、二人は即座にそこから飛び立ち、鋼狩人から離れる。


『馬鹿め! どんな剛力を持とうが、そんな小さな身体で、この鋼狩人に……』


 敵を追い払った後で、ガイデルが得意げに語りながら、鋼狩人が立ち上がったときだった。


 ガキン!


 鋼狩人の両脚が、付け根から取れた。古くなった球体人形のように、間接からポッキリと、鋼狩人のメカニックの足が、胴体から切り離されたのである。

 足を無くした胴体は、そのまま尻から地面に落ち、後ろ向きに倒れた。


『なあっ、馬鹿なぁ~~!?』


 両脚を無くして実質戦闘不能になった鋼狩人。信じたくない事態にガイデルの悲鳴が響く。


「小さい身体が何だって? でかけりゃいいってもんでもないだろ? 足下も急所も狙いやすくて、隙だらけでやりやすかったぜ」


 メガが勝ち誇った声でそう言ってみせる。だがガイデルはまだ諦めていない様子だった。


『小癪なぁあああああっ! ならばこれはどうだ!?』


 鋼狩人が装備していたもう一つの武器。人間には持てない、超大型拳銃を抜き放った。


「「!!」」


 足を動かせなくても、飛び道具で敵を撃つことは可能。メガとセイラは、即座に回避行動を取ろうと身構える。

 そしてその大型拳銃の引き金が、大型過ぎる鋼狩人の指によって引かれた。だがその銃口の先は、あの二人ではなかった。


 ドン!


「「!!??」」


 拳銃の音とは到底思えない、砲声のような銃声が鳴り響く。そして砲弾のようなサイズの銃弾が飛んだ先は、何と少し離れた所で放置されていた、あの毒ガス弾であった。


(しまった……)


 何としてでも止めねばならなかった事態。だがそれに気づいたときは、既に手遅れであった。


 ドムッ!


 防ぐ手など何もなく、その弾丸は毒ガス弾に直撃してしまった。するとその毒ガス弾が、まるで風船を針で刺したかのように、内部から破裂したのである。


 ドゥウウウウウウウウン!


 内部の爆薬部分が引火したのか、そもそもこの毒ガス弾の内部構造がどうなっているのか不明だが、まさに最悪な事態が起こってしまった。

 凄まじい爆発が起こり、爆風で周囲が吹き荒れる。近くにあった建築物が倒壊し、ライム達によって山積みにされていた、気絶中の兵士達(防毒スーツは、全て破壊済み)が、葉っぱのように遠くへ飛ばされる。

 それだけでもかなりの被害であるが、本当に恐ろしいのはその後。その爆発と共に、毒々しい色の紫色の気体が、周囲に撒き散らされる。

 それは爆風で、範囲数㎞に拡散した。その後で、これまたどういう原理なのか不明だが、その気体の大雲は、まるで風船に空気を注入したのかのように、どんどん膨らんでいき、本来の毒ガス弾の機能以上の、広大な面積を気体で包み込む。


「なっ、何だあれは!? 火事か!?」

「まさか毒ガス!? 俺たちは何も背いてないぞ!」

「にっ逃げ……ぎゃぁああああっ!」

「くっ、ぐるしい……じにたくない……」


 帝国領土の中心からどんどん広がっていく、毒ガスの大雲。まさにゲドが言ったとおりに、それは帝国領全土に、僅か数分で広がってしまった。


 帝国の民達は、それに気づいた瞬間には手遅れで、嵐のように吹き荒れる毒ガスに飲み込まれ、藻搔きながら次々と倒れていった。


 この日……レイン帝国の民達は、防毒対策をしていた一部のものを除いて、ほぼ全てが死に絶えた……


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