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万能召喚士と恵みの女帝  作者: 竜鬚虎
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第四十四話 全員復活

「よかった……やっと会えた……もうこの時をどれだけ……」

「何言ってんのよ? 大袈裟ね……そういや他の皆は? あの人妖達はどうなった?」

「ああ、あの人妖ならもう200年も前に全滅したよ……」

「えっ? 200?」


 どうやらステラは、人妖に取り込まれていた、これまでの事情を認識していないらしい。

 皆が二人の様子を傍観する中、その場でゲドが、彼女に向かって、さっきと同じ説明を彼女にする。話しを聞く内に、未だに寝ぼけ目だった彼女も、徐々に驚愕の表情を浮かべ始めた。


「マジなわけ……そんだけ私ら死んでたんだ……」

「ああ、こいつのおかげで、お前も助かったんだ。感謝しろよ」


 ゲドが和己の方を指差し、ステラも彼に目を向けた。和己はさっきの魔法で、やや疲れた様子ではあったものの、最初に心配していた罠などはなく、結構大丈夫そうだ。


「そうね……あんたには大きすぎる借りを作ったわね……。今は何もやれそうにないけど、とにかく感謝するわ。ありがとうね」

「そこまで重く感謝することもねえよ。こっちはギブ&テイクで協力してやってるんだ。とにかく次を生き返らせようぜ」

「ええ、そうね。お願いするわ。……でもその前に、私を含んだ皆の分の服をくれない?」


 未だに全裸状態のステラが、彼らがそれを頼む、彼女の状態には、和己とゲドは全く気にしていなかったが、遠くで見ていたメガとセイラが、やや恥ずかしそうに顔を背けていたことに気づく。


「ああ、その辺のこと考えてなかったな……服用意してなかったわ。なあついでにもう一つ頼まれてくれねえ?」

「ああ、いいぞ。どんな服がいい?」

「私は魔道士だから、それっぽい服をくれない? それとカイは……」


 一先ずこれから復活予定の、四人の服を、先に召喚術で出してもらってから、彼ら再度復活の魔法を行うのであった。

 その後、和己はステラの時と同様に、次々と玉を召喚し、ゲドの仲間達を生き返らせていく。


 二人目はルディという少年の姿の半緑人。外見年齢は12~3歳ぐらい。髪は青く、瞳は金色だ。どうやら彼も魔道士らしい。

 三人目はライアという赤髪赤目の少女。外見年齢は10代半ば程。彼女は気功士という、戦士系能力者であるという。

 四人目はカイという茶髪の少年だった。彼はライアとは幼馴染みだそうで、彼女と同じく気功士らしい。


「カイ~~~! 良かった! ちゃんと生き返って……」

「ちょっ、ライア!? どうしたの!?」


 復活したばかりのカイに、ライアが先程のゲドと同じような感じで、泣き顔で抱きついた。事前に自分の身の上に起こったことを知ったライア。

 その話しから、かなり事態を深刻に受け止めていて、無事復活したカイに、大喜びであった。

 一方のカイは、自分が全裸の状態であることと、いきなり抱きついてきたライアに、大きく慌てていた。


「お前も喜んでやれよ。危うく、皆永遠の別れになるところだったんだ」


 その後、また何度も繰り返した説明を、カイにするゲド。その話しを聞いて、これまでと同様に、自分の身に起こった事を深く受け止め、ライアと感動的に抱擁し合う。


「……リア充め、むかつくわ」


 ちなみにそんな二人の様子を見ていたカーミラが、何故か憎々しげに、そんなことをポツリと口にしていた。


「ようし、じゃあ最後の一人を頼む。いけるか?」

「大丈夫だ。後一回ぐらいならな」

『ていうか、最後の一人って誰だよ? お前の仲間は、ここにいる四人だろ? 俺のデータを入れた後から、一人増やしたのか?』


 いよいよ仕事も最後となり、二人が意気込んでいるところで、ジャックがさっきも口にした疑問を再び問うてきた。


「いんや。最初の世界を出た頃からの仲間だよ。お前も情報がきちんと入ってないな。じゃあいくぞ」


 そう言って、すっかり慣れた作業で、和己とゲドが、最後の復活の儀式を実行した。


「「うわぁああああっ!?」」


 最後のゲドの仲間が生き返ったときに、最初に放たれた音は、喜びの声ではなく、今まで見学していた者達の、今までで一番の驚きの声であった。


「すげえな……怪獣だ」


 目の前に現れたそれに、和己は簡単の声を上げている。それは一匹の怪獣であった。

 全身に黒い鱗がビッシリと生えそろい、頭には家畜ヤギのような小さな角が二本生えている。二足歩行の生き物らしく、この広間の床に、後ろ足を伸ばして、座り込むような姿勢だ。その手足や尻尾は短めで、顔つきも少し丸っこい。まるで竜のぬいぐるみのような姿である。

 なにより驚くのはその大きさ。あのタンタンメンと比べれば、かなり小さいが、この場にいる者達から見れば、かなり巨体である。今は座り込んでいるが、立ち上がれば体高30メートルにはなるだろう。


『ここはいったい? どうも普通の復活は違うような?』


 その怪獣の口から、やや幼げな女性の声が聞こえてくる。周りの様子に困惑しているようで、見覚えのない和己達一行を、やや警戒しながら見下ろしていた。

 ゲドと和己は、復活の際に危うく踏みつぶされそうな位置にいたが、ギリギリ無事だった。そして距離を取って彼を見上げている。


『フレット2か。そういやこいつもいたんだな。こいつもお前から血を貰っていたんだな』

「まあね。今のこいつは只の私の召喚獣じゃないわ」


 何故か納得した様子のジャックに、ステラがそう口にする。相変わらずジャックは、外野には判らない会話を口にする。


「ええとジャック……こいつは何だ?」

『こいつはフレット2っていう大地の精霊だよ。元はステラの使役する召喚獣だったんだが。俺のデータと違って、只の召喚獣から出世していたみたいだな』


 どうやらゲド達の間でも、仲間内で色々あったようだ。ともかくこれで、全ての発端であったゲドの、そもそもの目的は、完全に達成された。


「皆良く生き返ってくれた! もう100年近く、俺とチビの二人っきりで、本当に寂しかったぞ!」


 仲間達の全員復活を、ゲドがそこで涙を浮かべながら、喜びの声を上げる。かつて暴れん坊女神と呼ばれて、恐れられていた頃の彼女を知るものからすれば、かなり意外な姿だったろう。


「そうね。何か知らない内に、あんたに寂しい思いをさせたみたいね……」

「すまねえゲド! 俺が弱かったばっかりに……」

「ありがとうゲド。それに和己さん! これで私達、また一緒に暮らせるわ!」

「ああ、俺からもいったいどんな礼をすればいいのか……」

『私からも感謝する。まさか精霊の私が、長い間人妖に取り込まれていたとは……』


 蘇った者達が、口それぞれにゲドと和己に感謝の言葉を口にした。そして和己は、今までも何度か口にした言葉を、再度改めて口にした。


「そんなに深く感謝することねえよ……これはギブ&テイクだからよ。はははっ……」


 照れくさそうにそういう和己。今まで何度も、難民から感謝の言葉を貰ったが、ここまで間近で言われたせいか、いつもと反応が違う。


「ようしじゃあ祝おうぜ! お前らも一緒にどうだ! 全然準備してなかったけど……今からやる時間かかるけど……」

「ああ、じゃあまた俺に任せろよ……」


 こうしてまた和己が、色々食材を召喚し、そこで即席の宴が催されることとなった。


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