表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
万能召喚士と恵みの女帝  作者: 竜鬚虎
44/60

第四十三話 ステラ

「お前の仲間が? 何であんな状態だよ?」

『あれにはお前の眷属だった、ステラ・カイ・ライア・ルディがいるってことか? どういうことだ? 半緑人は、死んでも自動で生き返れるはずだろ? ていうか多いもう一個は誰だ?』


 ゲドの情報をある程度知っているジャックが、またもやこっちが知るよしもない単語や人名を口にして、他の仲間達を困惑させている。

 それにゲドは、やや苦々しい顔をして、その問いに答え始めた。


「お前さっき、人妖を殺しまくって、人を沢山救った英雄だって言ったよな。確かに自分で言うのも何だが、その通りだよ。……でもよ、実は俺たち、最後に人妖に負けて全滅しちまったんだよな……」

「全滅したってことは……一度死んだのか? でもさっきジャックが自動で生き返るとか言ってるけど?」


 カーミラの言葉に、ジャックが頷くような動作をしてみせる。聞いた話しだと、緑人というのは、強い力を持っているだけでなく、死んでも何度でも生き返れる、完全な不老不死の人種であるという。


「やられた敵が不味かったんだよな……。あの頃には、人妖共も予想以上に進化しててよ。俺たち緑人を、殺した後で、封じる能力まで持ってやがった。人妖の大群にやられた後で、復活準備をする直前で、俺たちは人妖に魂ごと喰われちまったのさ……」

「魂ごと? でも今は生き返ってるだろ?」


 実際にそうでなかったら、目の前にこのゲドという人物がいるはずもない。


「ああ、あれから何百年も経って、俺たちを喰った人妖も、寿命で死んじまったよ。その頃にはもう、人妖共も、絶滅寸前でな。俺が出るまでもなく、鷹丸って奴が、人妖に止めをさしてた。ただ蘇ったのは、俺だけだったんだよな……」


 自分たちを取り込んだ者は死に、彼女を含めた皆が解放された。実際に目の前に、彼女の仲間達の魂が入っているという水晶が、この広間にある。

 話しがまだ読み取れないが、一行は黙って、ゲドの話しを聞く。


「実はこいつら、俺と違って完全な緑人じゃないんだよ……。復活能力も、俺よりずっと低い。解放されたときに、俺は完全復活できたが……こいつらは魂が弱り切ってて、肉体を再生できなかった。後一歩、俺が手を出すのが遅かったら、あの世に昇天してた所だったし……」

「そのまま死なせてやれば良かったんじゃないのか? あんな風に、変な玉に閉じ込めておく方が酷くねえ?」

「冗談じゃねえや! これから先、俺一人だけで生きろってか!? お前もこれから長生きしてみろよ! きっとその時の気持ちが分かるぜ!」

『まあ、気持ちは何となく分かるがな……。それでこのチビはどうして蘇った? こいつも半緑人だろ?』


 少し怒った様子のゲドに、ジャックが問うたのは、彼女の足下に未だにいる、一匹にウリ坊であった。


「そういやこいつ何なんだ? 俺は初めてこの世界に来たときに、こいつ見てすごいびびったけど……」


 和己が初めて、この世界に呼び寄せられたときに、彼にファンタジーな世界を理解させるために、いきなり巨大化して姿を現したこのチビというウリ坊。これは最初から、普通にウリ坊でないことは、丸わかりであった。


「ああ、さっきは全滅と言ったが、こいつだけは上手く逃げ延びて生き残っててな。俺たちが喰われてから、100年以上もの間、ずっと待っててくれたんだ。いや……ハチ公みたいで、あの時には感動したぜ……」

「はぁ……それで俺に何の用なんだ?」


 一応ゲドの方の事情は、大体に所は判った。だが当の問題である、彼女が和己に、何の用があってこの世界に呼び寄せて、力を与えたのか? その辺の謎に、まだ説明がない。


「そうだな。こっからが本題だな……。簡単な話、お前にこいつらを生き返らせるのに、力を貸して欲しいんだ。あれから100年近くの間、ずっと挑戦してたが……やっぱり俺一人の力じゃ出来ないみたいなんだ。最初はこの森から、力を生命力を貰って、こいつらの魂を治療しようとしたんだが、それだけじゃ駄目だった……」

「この森から力を? それじゃこの大森林は、そのために造ったのか?」


 謎だったのが、ゲドが大森林を造った理由。

 レイン帝国はゲドが大森林を独占していると妬み、色々やっかみをつけていたが、そもそもこの森林が、ゲドにとってどんな価値があるのか、全く判らないままであった。


「ああ、俺が完璧に育てた、この森から、少しずつ生命力を吸い取って、こいつらに配ってた。勿論、一気にいっぱい吸い取ると、森がすぐに枯れちまうからな、全体に影響が出ないように少しずつだけどよ。それで長い時間、こいつらに力をやって、大分快復してきたんだが……最後の一手というか、こいつらの魂を完全に修復させる決定打な力が、どうしても出せなかったんだな。生憎俺には、そんな力がなくてな。だったらそれを、俺が一から作ってやろうと思った」

「それが俺の力なのか?」


 和己が自分を指して、不思議そうに口にする。自分の持つ、何でも召喚できる力が、それとどう繋がるのか、よく判らないようだ。


「ああ、そうだ。お前は成長すれば、俺と同じぐらいの力を持ってるが、お前自身は大した力はない。それはお前も判ってるだろ?」

「まあ、そうだな」


 今まで和己は、常人より遥かに強い怪力を得たが、実質それだけだ。召喚以外の魔法や、特殊能力もないし、基本的に戦闘では、カーミラに任せっきりである。


「自分では大した力はないが、召喚した奴には、凄い力を、簡単に与えられる。それが俺にはない、お前の能力だよ。その力で、俺の仲間達に力を分け与えて欲しいんだな」

「ふ~~ん。それで具体的には何をすればいい?」

「簡単な話だ。俺の仲間が入ってるあの水晶を、俺が合図したら、この魔方陣の真ん中部分に召喚して欲しい。そうすれば、自動で俺たちの仲間は、魂が新品の状態で召喚される。お前が今まで、錆びた機械や期限切れの食い物を、新品で召喚したみたいにな」


 確かに実に簡単な話しである。ジャックやカーミラも、それで身体が最盛期の状態で、この世界に召喚されたのだ。

 弱り切った魂を、召喚によって、最盛期にまで蘇らせることもできるかもしれない。


「そんだけか? えらい簡単だな? もしかして何か罠があったりしないか? それをやったら、こっちの命を取られるとか……」

「ないない……例えそうなっても、お前はまず死にはしない。お前は俺よりも、遥かに不死身な虹光人だからな」

「判った……」


 その魔方陣の中心近くに立つ和己。そしてそこに、和己が近くにある玉の一つに、目を向ける。ゲドも同時に、魔方陣の一角に手を当てて、そこに魔力を送り始めた。


「とりあえず、お前らは陣から出ろ!」

「おっ、おう!」


 そそくさと言われた通りに陣から出て、広間の隅に移動する仲間達。その直後に、魔方陣の線や文字が、イルミネーションのように輝きだした。


(召喚するのはあの玉! 何より強く、生前より遥かに元気で丈夫な状態で……)


 和己は全身の魔力を器用に操り、頭の中で強くそう念じ始める。長いこと召喚魔法を使い続けた彼は、魔力の制御能力も大分慣れて、今は魔力を無駄なく、燃費よく魔法を使えるようになっていた。


「今だ! やれ!」

「はっ!」


 ゲドの声と共に、和己も気合いの声を上げて、そこに召喚魔法を発動させた。

 魔方陣の中心に、見慣れた白い光が現れると同時に、そこの魔方陣から流れ出る、緑色の光を纏ったエネルギーが一気に注ぎ込まれた。見ると、机の上にあった玉の一つが、既に消えていた。


「うぉおおおっ!?」

「どっ、どうなるんだ!?」


 広間の隅で見学した者達も、見るからに派手な、魔力の流れを見て、やや興奮している。

 陣の中心にあった、白と緑が混じり合い、虹のような彩色となった光が、徐々に光が収まり小さくなっていく。やがてそれは、人の形を取り始めた。

 やがてその光が、完全に収まり、広間の眩い光景は、一旦収まった。そして今まで強い光を放っていた、陣の中央に、さっきまではいなかった、何かが姿を現していた。


「ふわぁ~~あっ! よく寝たわ!」


 何だか間の抜けた声を発するその人物は、何と素っ裸の女性であった。白人系と思われる、金髪の女性である。

 歳の頃は20歳頃だろう。まあ最初の話しを聞く限りでは、実年齢は見た目通りではないだろうが。


「ステラ!」


 ゲドがその裸の女性=ステラの名を呼び、そこに大喜びで駆けつける。


「あらゲド? うわっ!?」


 復活したステラに、飛び込むように抱きつくゲド。彼女の顔はやや涙を浮かべていて、本当に嬉しそうである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ