0-3:秘めた力ー魔法ー
魔核獣が現れて暫くして各島々で何人かに不思議な力を有する者が現れ始めた。
不思議な力。
その力を研究した者はその不思議な力をこう称した。
――魔力と。
そしてその魔力を用いる事で戦う術を得た手段。
それを――魔法――と称した。
魔力を、魔法を得た事で、圧倒的な脅威と認識され始めていた魔核獣の前に絶望すらしていた人々に希望の光が見えた。
秘められた魔力を研究した。
そして研究によっていくつか解ったことがあった。
人が得た魔力は、どうやら魔核獣の秘めていた不安を掻き立てる『何か』と、似て非なる力であると分かった。つまりは魔核獣も魔力を有する化け物であると。
研究者は人間と魔核獣の有する魔力は同じであるが、魔力の性質が異なることを突き止めた。
人間の持つ魔力を【清らかで正しい】とする魔力を【L】とし、
人敵である魔核獣の持つ魔力は【人に混沌の恐怖を齎す】と【C】であると区別した。
そして魔力を持たない一般の者は【N】であるとした。
さらに研究が進むにつれ分かったことがあった。
それはまず魔力を秘めた人間個人の秘められた魔力量は決して変化しないと言うものだ。秘められた魔力量は一定であり、上がることも減ることもないと分かった。
そして魔力を魔法として扱う際に、己が魔力を武器の形態に変質させる事で魔法を扱う事が出来ると言う事だった。
ただ魔力を秘めた者でも、この武器形態の変質が出来ないものは魔法を発動させることが困難であると言う事だった。
島の研究者達は研究を進めるにつれ、魔力を特殊な装備にエネルギー機関として運用する事で、魔法発動を行う事が可能となった。
これを【魔導器】と呼び、この魔導器を扱う者を魔導師と呼んだ。
魔力を秘めた人間。
その多くは生まれたての子供から成人となる20歳の者が多かった。
この結果として今後も現れるであろう魔法を秘めた者の為の学び舎を、各浮遊島に創設する事にした。
【国際魔導学院】。
各浮遊島、12のそれぞれに創設された、魔法を学び、そして襲い来る魔核獣の脅威に対抗する為の機関。
もちろんこの学院には魔力を持たない【N】の人間も在籍している。
この国際魔導学院は4つのコースに分けられている。
一つは、己が魔力を武器の形態【魔装】に変換し魔法を操る者が所属する【魔法科コース】。
二つ目は、己が魔力を【魔装】化出来ず魔導器を用い魔法を操る者が所属する【魔技科コース】。
三つ目は、2年以上在籍し魔法を扱いが優れ他の小隊を指導し実力の向上に努める【教導科コース】。この教導官を――【マギナレイター】と呼ぶ。
そして最後の四つ目は、一般の者や研究に携わる者が所属する【研究一般科】。
なお、この学院に入学すると言う事は魔核獣からの脅威に対抗する意思があると見なされ、在学中は、魔核獣が出現した際には迎撃として参加する義務があるのだ。
その代わり、学費などの免除や、卒業後の進路を好待遇で受けたりとメリットがある。
この学院では小隊制が導入されている。これは魔核獣が複数で出現することが殆どであるからだ。
単機で複数を相手にすれば、数の暴力によって撃墜され命を失う事になる。
それを防ぐ意味もあり、小隊制を導入し、一小隊6名で構成した小隊を組む事になっている。
そして学院には、各12の魔導学院が一堂にし行われる魔法を使った競技祭がある。
日頃の魔法を学び得た能力を見せるのと、各浮遊島学院の戦力公開を意味した小隊戦の大会。
もちろんこの大会は小隊戦。
最大6名による小隊を組み相手の小隊長を撃墜した小隊が勝利するシンプルなものだ。
この大会を目指す魔法師は多い。
この大会に優勝した小隊員には、一つの【特権】が送られるからだ。
その【特権】とは、
――通常、入学した学院からは卒業する四年間までは移籍出来ない事になっているが、今いる学院から別の学院に移籍する事が可能となる。
など、通常では叶えられない報酬を得る事が【特権】を用いる事で実現させる事が出来るのだ。
人が空への生活圏を移住し、突然と現れた魔核獣の脅威。その脅威に対抗するかのように現れた魔力を持った魔法師によってその脅威から日々守られる中。
そんな日々が数年過ぎた頃、12の浮遊島の一つである【エアリーズ】、その地に存在する【エアリーズ魔導学院】に一人の少年が入学した。
その少年の名はアシュレイ・バークレイン。
最強の魔力を秘め、一騎当千の実力を有した才優の魔法師である。