0-2:空への脅威ー遭遇ー
三度に亘る戦争によって人々が母なる大地を捨て、自由の象徴と言われていた空での生活を始めた。
【浮遊島】――。
その名の通り、大地から科学の随意のすべてを掛けて創り出した装置によって、戦争で使用され兵器の汚染被害が少ない大地。合わせて12の装置によって、その12の大地を装置の効果によって浮かばせた大地の名称だ。
それぞれの島は十二星座から付けられた。
○台一座・エアリーズ
○台二座・トーラス
○台三座・ジェミナイ
○台四座・キャンサー
○台五座・レオーズ
○台六座・ビルゴ
○台七座・リーブラ
○台八座・スコルピオ
○台九座・サギテリアス
○台十座・キャピリコル
○台十一座・アクエリアス
○台十二座・パイシーズ
各12の浮遊島は御互いにある誓いを立て、空での生活への順応に協力していた。
12の島々の人々が立てた誓い。
それは――
『―もう二度と、決して武力による戦争を起こさない―』と…。
三度の戦争を経て、人々はようやくその誓いに辿り着く事が出来た。
戦争…争いからは破滅しか生まれない。
その事実に大地を離れることで実感する事が出来、過去を反省し改善する道を進む事が出来るようになった。
しかし、人々が立てたその誓いは突然にして崩れ去った。
もちろんそれは浮遊島間による争い。つまりは人間同士による争いではなかった。
順応し生活基盤が立てられ暮らしが安定し始めたとは言えまだまだ不安は多い。そんなさなかに戦いに余力を回せる者達などいなかった。
では何者によるものか?
それは一言で表すと、『怪物』と表現できた。
浮遊島での生活からしばらくして、『ソレ』は突然人々の前に現れた。
始めに現れた『ソレ』。
鉱物で出来ている様に見える鳥型の概形。大きさは成人の人間とほぼ同じくらい。
明らかに敵視していると分かる赤い目。その鋭い爪は人間を紙のように引き裂くことも容易であった。またその飛行速度も目に見張るものがあった。
なにより厄介なのは多数で攻めてくる点であった。
そして中央部には見る者に不安感を掻き立てる力を秘めた球体があった。
突然現れたソレを後の人々は――【魔核獣・デウス・ディア】と呼称した。
突如として現れた人間の脅威に、人々は誓いによって封じた禁忌とも言える武器を手にした。
そしてその時は、現れた魔核獣は、現れた時と同じくその姿を消して去って行った。
この出来事の後、始めは各浮遊島でこう考えを浮かばせる者がいた。
他の何処かの島が誓いを破り何かしらの研究実験で作った兵器を送り込んできたのでは?
そう考えた。
しかしその考えは直ぐ覆る事になった。
現れた魔核獣は同時に12か所、つまりは全ての浮遊島を攻撃目標としていたからだ。
では一体あれは何だったのか?
退ける事に成功したとはいえ被害はあった。
それに敵には銃やミサイルと言った兵器が効果的に発揮されていなかった。
まるで外装に不可視の壁でもあるかのように攻撃を防いでいた。
拳銃などの銃兵器では掠り傷すら付いていなかった。
今回の初遭遇戦では高火力のミサイル兵器を波状にしてぶつける事で、敵の防御を何とか突破しダメージを与える事が出来た。
そうダメージを与えられただけである。
人間達は己が兵器の力で退かせたのではなかった。
突然現れた魔核獣は、現れた時と同じく突然退いて行った。
そして退いて行く連中の先には、まるで蠅の外見を模しているかのような大型の同種の魔核獣――のち人々は【デウス・グランブル】と呼称した存在も確認できた。
どのような目的で襲って来たのか?
その理由はいまだに解明されていない。
だが、相手はまた攻めてくる。
そう確信するものがあった。
そして今のままでは、次に奴らが攻めて来た時には、浮遊島は滅ぶだろうと。
魔核獣に対する【特効】と言える武器がない以上、本気で攻められたら守り切れないと。
だが、その襲撃から数日後に魔核獣に対する【特効】と言える”力”を秘めた存在が現れ始めた。