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1-2-6:学生指令会長との再会

「やっと帰ってきましたねっ!アシュレイ・バークレインっ!」


扉を開けて入ると、一人の本科の女性がまるで仇敵を待っていたと言わんばかりに、そこに立ち塞がっていた。そして此方を睨むように叫んだ。

教導科の教室内にはその者以外席を外しているのか空席だった。


(だれだ?)


相手をざっと確認したが見覚えがない相手。

紺色の背中位のロングストレートの髪。睨みを効かす少し吊目ぎみの灰色の瞳。

よく見てみると目の前の女性の着ているのは本科の女性徒の基本の種類と違うようだ。

確か本科の学生指令会長の地位にいる者が着る服だと思い出す。


(?…ん?…なんだ?誰だ、知らないやつ?…いや、なんだかこの女の目、どこかで見た事あるか?)


目の前の女性の瞳を見ていたらどこか見覚えがある様な気がしてきた。

基本自分にとって記憶する価値ある者以外の事には無価値と判断し記憶から薄れて行くのである。

アシュレイがこのエアリーズを離れて1年になる。

故にアシュレイにとってエアリーズにおける者で印象が少なからず残る程自分との関わりがあったと言う事と思った。

しかしアシュレイには目の前の女性の容姿と、自分の記憶内に残っている者からは一致しない。

しかし見覚えがある。

まあ1年以上も離れていたのだから記憶の中の人物の姿が変化していないわけではないだろうと考えた。


「……誰だ、お前?」


率直に訊ねた。

微かに覚えはあるが誰であったか思い出せない以上聞くのが早い。

そう思い聞いたのだが、『誰?』と聞かれた目の前の女性は呆気にとられた後キッと睨みつけて来た。顔を赤くしつつフルフルと怒りから体を震わせているように見えた。


(ふむ。どうやら俺にとって顔見知りである可能性が高くなったが……)

「この男はっ!この私を忘れるなんて、相変わらず無礼な男ですね、貴方って人わ!!…いいわ。貴方が忘れたのなら思い出させてあげましょう!この私の名を!そして私の力をね!!」


宣言と共に目の前の女性は【魔装】を展開させた。

女性の【魔装】は弓の形状で、瞬間で展開しアシュレイに向けた。

しかしそれよりも一瞬早くアシュレイが制服の懐から魔導器(デバイス)の銃を取り出すと、目の前の女性の額を標的に捉えていた。


「なっ!?(は、早い、ですわ!?エアリーズ学院生の中で一番魔装展開を瞬時で行えるのに!?それなのにっ!)」


目の前の女性は【魔弓】を構えた態勢のまま、瞬間魔装展開を行える自負を持っていたのに、相手に魔導銃を向けられたのに驚き硬直していた。


「中々良い腕だな。あとほんのコンマの差だったぞ。…てか、お前のその【魔装】に覚えがあるな。……そうか、思い出した」


魔法師の持つ【魔装】の形状は基本的に変化しない。そして目の前の女性の持つ【魔装】は何度も目にしていたので記憶に残っていた。だからこそ思い出せた。


「俺が予科性の頃から付き纏って来ては『チームを組みましょう!』ってな感じでしつこく勧誘してきては決闘して返り討ちにしても諦めなかった女。確かクインタプルだったな」

「アリーゼ・リセ・クインタプルですわよ。まったく、ようやく思い出しましたか。ただ【魔装】を見て思い出したと言うのはあまり納得いきませんが。あとしつこいは余計ですわアシュレイ」

「いや。お前あの頃と比べても変わってんだろ?」


今のクインタプルはロングストレートの髪だが、昔の記憶通りなら肩位の長さだった。それに前は眼鏡を掛けていたが、今はしていない。まあ眼鏡の有無なく、ひたむきに何度返り討ちにしても諦めない灰色の瞳は印象的だった。あと1年とは言え成長期だからもあるのだろうが、身長やスタイルも成長しているように見受けられた。胸も前はあるかないかくらいしかなかったが今は立派に育っているようだ。


「むっ、何だか嫌らしい目を私に向けていませんかアシュレイ?」

「気のせいだ。あと自意識過剰って知ってるか?」

「なんですってっ!」


このやり取りも懐かしさがある。

アシュレイとアリーゼの関係はそんな感じだった。


アリーゼ・レイ・クインタプル。

このエアリーズ魔導学院に入ってから、そしてエアリーズ学院を離れるまでの間、何度も、何度も、何度も!「チームを組め」と付き纏ってきた少女だ。

アシュレイは勧誘の度にクインタプルを拒絶し続けた。正直言って足手纏いと感じていたからだ。

実際にそう告げると今度は「私が貴方と勝負をして、貴方に勝てたら私とチームを組んで!」と無茶を言ってきた。当然アシュレイはその提案を却下した。だがクインタプルはしつこく絡んできては勝手に勝負を挑んできた。

アシュレイはその度に返り討ちにしてやった。

だが何度打ちのめされても諦めず何度もアシュレイに挑む事で、クインタプルの実力は上がってきたようで1年前の当時のエアリーズ学院ではアシュレイ以外では負けなしの実力を手にしていたのだった。

それは彼女が纏っている学生指令会長の制服を見ていれば分かる。


「それで、いきなり威嚇されたりしたわけだが、なんだ?また私とチームを組めと言う気か?」

「ふん。残念ながら貴方も気付いているようですが、私は今年度の学生指令会長に選ばれましたから、小隊戦参加の権利がありませんもの。だから組みたいとは言いませんわ。---今はね」


最後に小声で何か言ったが聞こえなかった。


そのあと少し話をした。

学生指令会長に選ばれたのに「出世したな」と褒めたつもりで言ったが、逆に睨まれた。なぜかよくわからなかった。

その後クインタプルと話をしていると、二人の女生徒が部屋に入ってきた。

どうやら生徒司令部のメンバーの様でクインタプルを探していた様だ。

クインタプルはそのメンバーと共に生徒司令室の方に向かっていった。


そんな邂逅の後、魔法科、魔技科のカリキュラムの時間は以前のままの様で、訓練時間は午後からなのでアシュレイは訓練に必要な書類や受け持つチームの能力分析や今後の方針に時間を当ようとした。

扉が開いた。教導科の所属と思われる、アシュレイと同じ制服を着用している事から推察した者達が入ってくる。

入室して来た者達に視線を向けるアシュレイと、入って来た者達と視線が交わる。アシュレイの金の目にビクッとなった。


入って来た者達は見慣れないが何処かその者を見たことがあると浮かんだ。


「…誰だ、あいつは?」

「…見慣れない人?……でも、何処かで…」

「…あっ!もしかして、アシュレイ・バークレインじゃない?」

「なに?……ほんとだ!髪とか変わってるけど、あの目は間違いないわ!」


アシュレイに気付いた者達がなにやら騒いでいるが、他の覚えのない者ばかりだから気にする事無く視線を初音達小隊の資料に目を通し始めた。


そして午後になり各小隊チームに配備されるという待機室をPlateで確認し、その場所に歩き始めた。

待機室前に到着すると扉が開いており待機室の中から少し騒がしい声が聴こえてきた…。

そんなこんなで部屋に入るとチームの3人共そろっているようだった。


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