1-2-3:彼?が私のチームメイト?…【初音side】
校舎に入って先生ことアシュレイと「お昼の後の教導にて」、と交わし別れると、制服のポケットからPlateを取り出す。
「えっと…私のクラスはAクラスだから…あった、ここみたい」
Plateに表示されている自分のクラスを目標に歩いていく。
そして見つけた。
自分のクラスである1-Aの教室。
これからは午前中はこの教室で教科科目を学ぶことになる。
「よし」とクラスの扉に手を掛けると開ける。
開けて教室内に入ると同時に中に既にいたクラスメイトになる男女の視線が向けられる。
「誰だ、あの子?見たことない子だぞ」
「お前ってば知らんの?あの子、今日からうちに転入してきたって子だぜ」
「ってことはあの子が噂で聞いた【一なる全】とか呼ばれている人と一緒だった子か」
「私達Aクラスってことは中々実力を有してらっしゃると言う事かしら」
「それは楽しみですわね」
そんな声が聞こえてくるが初音は(やっぱり噂になってるわね)と内心思いつつ気にせずPlateに表示されている自分の席を確認する。
「ここね…」
自分の席に座る。
あとは学科の教師が来るまで待つだけ。
(…確か私と同じAクラスだったはずだけど、もうレスターって子はいるのかしら?)
これから同じ小隊チームを組むであろう人物。
どんな人柄か把握出来たいいなと思い視線だけで探す。
多分だけど相手も此方を気にしてるんじゃないかと思ったから、注目している視線を探そうと思ったのだけど、先生と一緒にいた事で注目する視線が多いので分からなかった。
ただ、一人だけ気になる子がいた。
窓際の席に座り頬に手を当て肘を立てながら外に視線を向けている長めの青い髪をポニーテールにしている男子制服を纏っている人。
(……彼?)
もしかして?と言う思いがした。
気になったので声を掛けてみようかしら、と思い腰を上げようと思ったのだけど、
「はーい。時間ですよ~。座学の時間ですよ~。着席してください~」
のんびりとした男性教師の声が聞こえ彼?に声を掛けるのを一旦諦めた。
(またあとで声を掛ければいいわよね。相手も私の事は既に知ってるはずだし、相手から声を掛けてくれるでしょうし)
+
「………」
初音の視線が外れた瞬間、頬付きながら外を視線を向けていたその人物はチラッと視線を初音に向けた。
+
眼鏡をかけたノンビリとした喋り方の男性教員。
いくつか空席はあるが、教員の人は気にせず出席を取り始めた。
どうやら空席の人は警戒任務に出ているようだった。
出席を取り終えた教員の人が此方に視線を向ける。
「え~と、君が初音・フュードリッヒさんですね~。昨日、学院長に禁句(子供扱い)を言った子だね~とりあえず自己紹介しといてくれる、これから共に座学を学ぶクラスメイトにね~」
との事で「はい!」と、その場に立つと軽く自己紹介をした。
「両親の都合にてサギテリウスから来ました、初音・フュードリッヒです。魔法に関しては【先生】から簡単なものを学んだ程度です。得意魔法は”属性変換”です。以上よろしくです」
「は~い。よろしく~。着席してくれていいですよ~」
「はい」
そう返すと着席した。
何やら質問をしたそうなクラスメイトがチラホラいたが、
「は~い。ではこのまま座学を始めますね~。フュードリッヒさんへの質問はお昼にでもしてね~」
教師の声で断念したようだ。
始まった座学に集中する。
+
「ではこれで本日の座学は終了です~。クラスとしての伝達事項はありませんのでここまでです。では皆さんまた明日~」
そう言い残し本日最後の教科の座学が終わりクラスから退出していく教師。
「ふう…」
終わったと息を出す。座学に関して問題なくついて行けた。
さあお昼の時間。
それが終わればいよいよ先生からの教導が待っている。
先生に本格的に魔法戦技の指導を受けられると思うと嬉しくワクワクしてくる。
(ああ早く先生に会いたいな~)
逸る気持ちが溢れてくる。
よしと席を立つ。
まず今日から組む新設チームの顔合わせの為、Plateに記されているそれぞれのチームに宛がわれた待機室に向かい、待機室で食事をしてもよいとのことでお弁当持参の荷物を持って行こう。
そう思っていたら一人の男?の子が腕を組みながら声を掛けて来た。
その子は最初に気になった子だった。
青くて綺麗な長い髪をポニーテールにしていた。その人の顔を正面から見て正直女の子の顔達をしているなぁと思った。声もどちらかと言うと中性的と言うより女性ぽいと思った。でもこの学院の男性用の制服を着用しているので男子なのだろう。
「お前が初音・フュードリッヒだな。オレはレスター・リディエル・カルテットだ。今日から組む同じ小隊チームだ!よろしく頼む、精々オレの足を引っ張るなよ!」
「むっ。いきなりね。初対面でしかも同じ小隊メンバーになる人にその態度はいけないわ」
思わず言い返してた。なんか態度が上から目線で腹が立ってしまった。
「ん?ああ、言い方が悪かったか?悪い悪い、始めだし強めで出る方がいいと思ったんだ。悪かったな」
あら素直に謝ってきた。
此方も少し言い過ぎたと返す。
気持ちを静めないと。彼?とはこれから組むチームメイトの一人なのだから。
彼?の顔を見てふと思った疑問を聞いた。
「少し聞いていい?あなたって男?それとも女?」
笑みを浮かべていた彼?は困った表情を浮かべていた。
「はは、よく言われるがオレは男だぜ。変なことを言う奴だ。と言うかどう見ても男ではないか。オレはいずれ最強の魔法師となるのだからな!まあ今の質問は気にしない事にしてやるぜ」
「そうなの。ごめんなさいね。失礼なことを聞いたわ」
「はは、気にするなって。それより…えっとお前の事は何て呼んだらいい?名前が良いか?それとも家名の方が良いか?」
「好きに呼んでくれていいわ。同じチームなんだし名前での方が良いと思ってるんだけどね」
「おーけー。じゃあこれからは名前で呼ぶことにするからな。まあ同じ魔法師のチームメイトだしよろしくな、初音!」
満面の笑みでそう言った彼。ただ彼のその発言の『魔法師』の部分を強調していたように感じた。
「ええ。まあよろしく、レスター」
相手が名前呼び出し此方も名前で呼ぶことにした。