1-1-9:今日から…【初音side】
先生を追い、明日から正式に所属するエアリーズ魔導学院を出て今日から住む家に向かう。
学院から出る際にも、隣を歩くアシュレイさん(私は先生と呼んでいる)を見ては、
「なんか変わってるけど、あの伝説のアシュレイ・バークレインが返ってきたってのか、マジで!?」
とか話しているのを見た。
流石有名人だなと思うも、どうしてか自分のことのように鼻が高いなとか思ったりした。
もっとも、先生は周囲の話には興味ゼロ。我関せずと言うか、視界や耳に入ってない様だった。
今日から住む家は学院から南方に位置する街にある。
魔導学院は浮遊島のほぼ中央に設立されている。
それは如何なる方向から人類の脅威である【魔核獣】の襲撃に対応出来るように配慮されているのです。
先生の家も南部にあると言う事で、家の位置も教えてもらっている。
(明日は一緒に学院まで先生と…アシュレイさんと行きたいな…)
そんな希望を抱きながら街並みを先生の隣を歩く。
家に着くまでに、先生から街にある御店を説明してくれました。
先生と一緒に買い物をする。
それが凄く嬉しく思う。
まるで、デートをしているかのように思えた。
もちろん先生はそんな風に私を見ていないことは分かっている。
それでも気を回してくれているのが殆ど感情を表に出すことない先生が表情を緩めてくれている。
信用されているのが嬉しく思う。
そして楽しい買い物デート(私視点)を終え今日から住む家に着いた。
「あら、おかえりなさい、初音。それにアシュレイ君も。ありがとうね、初音についてくれて」
私達が家に着き玄関扉を開けようとしたら、先にお母さんが開けて私達を迎えてくれた。
優しさ溢れる笑みでおかえりと言ってくれた。そして先生に感謝を伝えていた。
「ん?…おお!おかえり初音!それにアシュレイ君。今日はすまなかったね」
家の奥からお父さんも顔を出して私にお帰りと言ってくれた。そして先生に今日の同行に感謝を言った。
「いえ。彼方では俺も世話になったので気にしてませんよ」
「そうは言ってもだね。本来であれば親である私達が付いて行くべきところを」
「お二人はこちらへの引っ越しと仕事が重なっていたのですから」
先生は気にする必要はない、両親はただ感謝を伝えていた。
「そうだ!どうだねアシュレイ君。今日は一緒に夕食を摂らないかね?」
お父さんが先生に夕食に誘った。グッジョブ!
お母さんも「良いですわね」と同調し賛成する。
「お誘いは有り難いですが、俺もこの後自分の家で荷卸しと明日からの準備作業が有りますので、今日は此処でお暇します」
断られた。凄く残念です。
両親もそんな事情があるのであれば引き留めるのも悪いと思ったようだった。
ただまたの機会に食事をしようと言う話になり、機会があれば是非に、と先生が告げた。
やった!
+
今日から住む家は洋風だ。
以前は畳部屋だったからフローリングの床が何だか新鮮に感じた。
両親との夕食を終え、明日の為に早めの就寝をする為、お風呂に入った。
さっぱりした。
いつも見るアニメDVDは明日の為と断念する。
私はアニメが好き。特に魔法を扱う少女アニメが好み。
私がアニメ好きと知ると「意外」とよく言われる。
魔法物が好きなのは【魔法】に憧れがあったから。
いつか自分もアニメの様な魔法を覚えて華麗に魔法を扱えたらな、とか空想していた。
まさか自分がその魔法を扱う才能を持ったことは思いもしなかった。
この才能を持った時はただただ『憧れ』が現実になり『歓喜』した。
嬉しさでいっぱいだった。
けど――私は知った。
『現実』の魔法は残酷なものであると言う事を。
魔法は危険と隣り合わせで、一歩間違えは死に繋がる。
私はそう知ることになった。
先生…アシュレイさんと出会い。
そして、あの事件。
あの事件が切っ掛けで、私はアシュレイさんを『先生』と呼び慕いだした。
正直始めは彼の事は嫌いだった。
私の憧れを何度も否定したから。
「魔法は憧れるものではない。魔法が危険なもの」
彼の言ったことは真実だった。
あの『事件』でそれを私は身をもって体感した。
あの時私は間違いなく『死』を体感した。
それをあの人が…アシュレイさんが守ってくれた。
今の私があるのは彼の、先生のおかげ。
たぶん彼は私を守る気ではなかったと思う。ただ結果的に私を救ってくれただけなのだとも思う。
それでも、私の中では彼が私を『死』から救ってくれた人である事実は消えない。
あの時から私は彼に、アシュレイさんに恋をした。
吊り橋効果であるとも思っているけど、あの日から『好き』と言う感情が溢れて仕方ない。
そして……一度目にしたあの光景。
「ああ、何だか興奮してたわ。こんなんじゃダメ…ん?」
ふとベッドに横になって眠ろうとしていたけど、先生の事を思い浮かぶと興奮からなかなか眠気がやってこない。
明日の為にと羊でも数えようかなとか考えていたら、枕もとにアラーム設定しておいたPlateにメール着信が届いた。
「なんだろこんな夜に…」
夜にと言ったけど、まだ夜の8時になるかくらいの時間だけど。まあ夜には違いない。
そう呟いてメールを確認すると、メール元は学院からだった。
メールを確認すると、内容は明日から所属する組と、今後組む小隊のメンバーが記載されていた。
その小隊メンバーの中のある部分に思わず「やった!」と声にした。
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学院より――
初音・フュードリッヒ
学年1回生・所属組【Aクラス】
○小隊メンバー
指導教官:アシュレイ・バークレイン【教導科・4年】
小隊:初音・フュードリッヒ【1年Aクラス『魔法科』】
:レスター・リディエル・カルテット【1年Aクラス『魔法科』】
:ミツキ・フォン・トリニティ【1年Dクラス『魔技科』】
=====
先生が教官を務めてくれる。
それだけでやってやるぜー!って気になってくる。
あの事件以降触り程度の魔法指導を受けていたけど、明日からは本格的に教えてもらうことが出来るんだ!
どうしよ!眠れなくなりそう!
でも寝不足で指導を受けるなんて醜態晒すわけにはいかない!
あと、私を含めて小隊メンバーは3人みたい。しかも皆1回生。つまり本年度に入学したばかりの人達と言う事だろう。
一人は私と同じAクラスのようだ。
……たぶんレスターって名前だから男子だと思う。でもなぁ、なんだか男性とも取れるし、この『リディエル』って所が女性ぽく感じるんだけども。
まあ考えても仕方ない。どうせ明日顔を合わせられるんだし、その時に確認で良いでしょ!
そしてもう一人、『魔技科』と言う事は、今の先生が使っている魔導器を用いて魔法を扱う子と言う事みたいね。
この子は女の子ね。
フフ、どんな子だろう。仲良くなれたらいいわね。
「明日が楽しみになってきた……
…あれ、何だか…
急に眠気が来る…
ふぁ……
ああ、そうだ……
明日早くに…先生にメールして…
一緒に行こうって…伝え……
フフ……zzz…」
Zzz…
何時の間にか私は眠りに付き、次に目を覚ました時には朝であった。