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初めての蜥蜴人 名前と使い魔と魔杖器

主人公より強い使い魔の誕生です。あと、この話でようやく主人公の名前を出しました。


3月9日誤字脱字報告頂きました。修正しました。

広い部屋の中には、特殊な魔力触媒を用いて俺の半径10mに渡り大規模な魔方陣が描かれていた。


使魔創造(ファミリア・クリエイト)の準備がいよいよ整った。


ラムセイダさんの解説通りに、揃えられた最高の触媒素材を消費していく。




ゴゴゴ…と緊張の余り少し喉がなる。

何せ、今俺のやっている事は世紀の大儀式魔法なのだ。



手に持つ魔導書はキチンと手順通りに儀式を行うことで明滅を繰り返していた。


ファミリア・クリエイトの作成には使用者の一部分とあったが、正確には俺自身(・・・)で間違いないそうだ。

使魔創造を扱う上でキチンとした知識を持っているか?

これが著者マリウス・クレインマンが使用者に対する引っかけでもあるのだと言う。


俺の一部分である爪や牙などを用いても間違いではなく、ファミリアはちゃんと作成される。

ただそのやり方で行うと、主に命令されるのみのゴーレムやガーゴイルなどの無機質なファミリアの完成度に準ずる。



それを回避する為にも、一部ではなく俺自身を直接媒体に使うことが重要な鍵となる。


自身の心層無意識を切り取り、アストラルをコピー。

ファミリアとの心層回路(アストラル・パス)に深い接続を果たすことで初めて可能とさせるからだ。


そう、それにちゃんと読み取れば別に必要な素材は使用者に限って肉体とは一言も記されてなかったのである。


そして繋がった状態での主契約では、メイン素材にも寄るところが大きい。

その分、正式な心層回路(アストラル・パス)が形成されていたら、加えてファミリアに反映される個性と能力、ステータスが非常に高くなるそうなのだ。



正直ファミリアに捧げる俺の切り取られる心層無意識は良く解ってないが…ラムセイダさんに尋ねても問題ないですよ一言あるのみ。


まぁ痛くもないそうなので、不安は不安だがそう言うなら気にしない事にした。





そしてメインに使うファミリアの素材は、勿論【魔王心核(ベリアール・ハート)】と名付けられた超希少素材である魔王の心臓を加工されたモノです。


魔王(正確には一部分)を元に使い魔。

寧ろ、これ以上の素材はないと断言出来ます!!




ワクワク、ドキドキと早鐘を鳴らす心臓の音を心地よく聞きながら、最後の儀式手順は終了したのだった。



大規模魔方陣から炎が立ち上る。膨大な魔力が素材を吸い付くす用に、貪るように中へと取り込まれていく。

最後まで取り込んだと同時に、手に持つ魔導書も瞬時に燃え尽き真っ白な灰へと変わった。


ハッ…と皆が見守る中、真っ白な灰から白炎の塊が浮かび上がり、遂に俺のファミリアが誕生した。


白炎が全て収まると、宙に立ち尽くす10歳前後くらいの歳に見える子供が佇んでいた。



『主殿、我に名前を』


流暢で美しい発声を出したのは男性とも女性とも解らないほど…美しく中性的な顔立ちをしていた。


髪は白色で燃え盛っていた白炎のように輝き美しく、身長は猫くらいで小さい。


身体には黒い半袖、半ズボン姿でインナーを着込んでいる。

…何故そこは全裸じゃないんだ。いや、ロリでは無いよロリでは。




取り敢えず、この子が俺のファミリア。メロメロに魅了されるくらい可愛い子だね。




名前はメイン素材となった魔王心核(ベリアール・ハート)からとって…ベリア?ベア…ベル。

そうだな、男の子でも女の子でも言いように【べル】と名付けようと思う。




「ベル…この言葉が君の名前だよ」


『ベル…ベル。良き名を頂戴しました。感謝します』



あら、口調はアレだけどにっこり笑うと、とても可愛らしい。

次に行った行動はベルの宣言だった。


魔導書(ファミリア・クリエイト)に残る魔導王マリウス・クレインマン様の契約により、正式な手順の儀式を確認致しました。

……最終手続き完了です。

では主殿。書に残されている術式からメッセージを再生します。


其により汝に対価として【真の使魔創造】のキーとなる魔杖器を授ける…との事です。

かなり貴重な極上素材ばかりを使ったようですので、特別で最上級の一点品(イレギュラー)となっております。

これ程の素材を集める事の出来る汝に相応しいと心得るゆえ、遠慮せずに受け取るように…と』


キッとした表情で別人のように厳かな口調になったベルは誇らし気な様子だ。





両手を組んだベルは、黒光する魔方陣が発生させたかと思うと、瞬時に一振りの杖が現れた。


俺の身の丈よりも大きい長杖は黒い結晶で作られていて、彫金も非常に美術価値の高い装飾が施されている。


しかし、それを台無しにするかのように長杖には禍々しい何かの生物の紋様が描かれていた。


その杖を受け取った瞬間に膨大な魔力が杖から飛び出し、俺を包んだ。


























〈これよりマリウス・クレインマン様の要望により、契約の精霊小人マリウスが担当します。

では、次に術式により魔杖器主人契約(システムウェア)を行っています〉


小人?精霊?何処からか聞こえる声。しかし俺はそれを気にしている余裕無くなった。

ぐぅ…は。何故なら頭に入ってくる情報…膨大な情報が脳に無理矢理焼き付けられているように激痛が走る。

この杖の主として強制的に登録されている…ん…だと…思う……発狂しそうな程の情報量は俺に蹲ませる事も赦さない。








それでも懸命に意識を保とうとしていると、不意に意識にノイズが走った。


〈error error error error…〉


謎の声のerror報告。


俺の記憶にない映像が…写し出される。



(何だ、これ…)



辺りは煙と炎に覆われた焦土。


その過酷な環境の中で誰かが巨大な存在と戦っている…空に浮かび上がり、膨大な攻撃、魔法の応酬。


誰かは黄金と白銀のローブを羽織り、フードを目深に被ってて表情や顔立ちは解らないが…何となく男性で有ることが解る。


彼の手に持つ杖は終焉の煌魔杖に類似しているが、別物のように生命に溢れる格別の魔力に、白銀に輝く気品と美しさに満ちている。

杖からの攻撃は4色の魔力を伴い、巨大な存在へと容赦なく放たれる。


男性の他に共に宙に浮かぶ7人の男女はそれぞれ武装しており、一目見てもどれも一級品である装備を身に付けて隊列を組んで戦っていた。


巨大な存在は身を震わせ、巨躯から発生した7本の触手を操り、至るところからおぞましき黒く汚れた炎を放つ。


黒い炎は激しさを増して襲いかかってくるが、予期していたかのように男性は誰より前へと躍り出て、杖に魔力を注いで結界を展開。

悉く弾いている。

しかし、何度か攻防を繰り返していく内に彼の持つ杖は暗く黒く侵食されていく……。


何なんだ、何のためにこんな映像を見せる。


そしてブラックアウトした。














終焉の煌魔杖(レーヴァテイン・グロウケス)


反逆英雄級(アンチブレイバー)


異界の高次元存在に取り込まれ、炭化した世界樹の杖を魔杖器として再生させた長杖。

頂杖には世界樹の樹液が宝珠として先端に取り付けられている。

持ち主の魔力を超大させ、消えぬ侵炎を召喚させる権能を宿す。

かの魔導王マリウス・クレインマンの魔導書契約により、創生された使い魔の位に応じて宝物庫から選定。

その為、魔杖器と認定され最高の褒美として託される。



解放〈全能力向上〉〈多重詠唱〉〈未完の大器〉〈異界生物特攻〉

未解放〈???〉



















主人殿(リザードマン)からの不確定要素を確認。

…不確定要素の検出。

高速起動を推奨…error排除は不可能と判断。通常起動に切り替えます〉


不思議な映像から現実へと戻り、今度は内臓を滅茶苦茶にかき回されている激痛に苛まれた。


いつまで続けるんだ…と思う余裕があったのは最初だけ。


思考は停止しかかり、体感時間的には何時間、いや何日も過ぎたような気がする。


〈最終警告!終焉の煌魔杖より干渉する敵対反応を確認…〉



おいおい…今度は警告かよ。

先程との映像と激痛とは違い、今度は体の中にナニカ入り込もうとする感覚がある。

しかし、俺はおぞましさよりも最早限界に近い痛みで、抵抗も何も出来ない。

思考放棄に近いが、考えられなくなってきている。


涎が溢れ、遂に俺という存在が杖に込められたおぞましいナニモノかに喰われながら書き換えられようとしたその時…例えるならバチバチバチと脳内に火花が走り、ハッと我に気付く。


〈…契約者より敵対干渉部を完全に遮断。排除に成功しました。

主人契約を完了致しました。

未解放以外の【終焉の煌魔杖(レーヴァテイン・グロウケス)】の使い方を脳内インプットを完全移行しました。

以後はファミリア個体名【ベル】が担当します。お疲れ様でした〉



やっと終わった。


体はもう汗だくだ。大量の水分と塩分を消費して喉よりも鱗がカラカラだ。

ようやく膝をおる事が出き、そのまましゃがむ事が出来た。








はぁはぁと、荒い息を付いていると、アイシャ、ボルデッカは怪訝そうな表情をしていた。


「一瞬杖が光ったかと思えば、いきなり白ボウズがしゃがみおって…大丈夫かの?」


一瞬?アレは一瞬の出来事だったのか?


なんつう恐ろしい…出来事だったのか。


それに俺に入り込もうとしたあのおぞましい意識(ナニカ)はもう感じられない。

error、不確定要素、敵対干渉?聞こえてきた謎の声…もう突っ込む気力すら無いよ。




萎える気力に渇を入れて、長杖を片手に立ち上がる。

杖には先程まで描かれていた禍々しい生物の紋様は一切消え去っており、最初からそんなモノは無かったかのようになっている。


うん、あんな不気味なのはいらないから無い方が断然良いじゃん。


手に取ると改めて、内包する魔力が桁違いで有ることを悟った。


今まで俺が手にした中で一番であった遺跡級(ユニーク)であるカドゥケスの杖を軽く越えている。


しかし、反逆英雄級(アンチブレイバー)って何?


英雄級(ブレイバー)と違う点を考えて見るも…情報が無さすぎる。

てか、不思議過ぎる。

エルからは褒美とは聞いてるけど何故なんだろう?疑問は尽きない。












気を取り直して解らないことは後回しだ。


魔杖器とは終焉の煌魔杖(レーヴァテイン・グロウケス)という武器であると同時に、魔導王マリウス・クレインマンが創成した最高傑作(オリジナル)の使い魔シリーズの一部なのだと、植え付けられた知識にあった。


その知識の中にも反逆英雄級(アンチブレイバー)は謎のまま記述は全く無い。



因みに現代では使い魔を作る術式や知識はもう失われている。

それでも、小動物などに強制契約などを行い使い魔擬きを作ることは可能である。

それすら、モンスターテイマーなどで従魔にしたり、滅多にいないが召喚を行える者がいれば事足りる話なのだ。


オルグフェン王国では、余りに需要の無さから使い魔研究等からは早々に撤退して属性魔法の研究、習得にチカラを入れているので、上記のそれすら出来ない魔法使いは多々いる。

人気が無いので、その分野の専門知識すら持つ者すらいないだろう。


余所のお国はまだ研究している所もあると聴くが芳しい結果は出せていない。







この【使魔創造(ファミリア・クリエイト)】の魔導書は、使い魔一筋で魔導王まで極めた男が丹精込めて作り上げた術式を詰め込んだ傑作。


その叡智がつめられた魔導書は、子供からお年寄りまで扱うことが出来るが、知識の無い者ならば凡用な使い魔が出来上がるのみ。


魔導書の内容を十分に吟味し理解した有資格者ならば、有能な使い魔の誕生から、今のように~器と呼ばれる武器を内蔵(・・)したマリウスの最高傑作(オリジナル)を産み出す事が可能な両極端な仕様となっていた。


…なんて面倒くせぇ。多分、マリウスは人格に問題があったんだな。



さてはて、ソレは置いといてだ。


使用者の遺伝子と魔力パターンを取り込み、1から人間を創る事に等しい難解過ぎる作業と専門知識を必要とする高度な魔導書は、中の術式が作動補助してくれるとは言え、魂すらも創生するなんてオーバーテクノロジーも良いとこだ。


魔導書へと一旦取り込まれるのでメイン素材以外の素材となるモノは必要とする基準を満たしていれば、何でもいい。

取り込んだ素材は全て分解されて、それに応じた使い魔のボディが組上がる。


ラムセイダが今回用意してくれた全素材はその殆どが最高級のモノ。

その為補正が二重三重にもかかり、恐ろしい程の出来映えのボディとなっている。


そしてメインには入手自体が不可能に近い本物の魔王の心臓から加工された【魔王心核(ベリアール・ハート)】。


この儀式で作られた使い魔は、簡単に言えば人造生命体に近い。


でも同じような人造人間(ホムンクルス)やゴーレムとは違い、使い魔は【成長】出来るってことが出来るってことが一番の特徴なんだ。







ラムセイダさんから一度カードを返して貰ってステータスを確認したらやっぱり偉い事になってました…。












name【ベル】


煌魔(ファミリア)準戦闘型(セミバトルタイプ) Lv0


unique skill

〈光焔保持〉

魂欠片(アニマ・フラグメント)魔王(デモンズ)刻印(タイプ・アソート)


rare skill

〈炎属性魔法:1階悌〉〈覚醒因子〉

〈物理耐性【小】〉〈魔法耐性【小】〉

〈属性強化〉〈回復技能〉〈補佐技能〉



normal skill

〈身体強化【小】〉〈下級魔力強化〉〈魅了(チャーム)〉〈魔力飛翔〉〈魔力制御〉〈戦闘感〉〈成長促進〉

〈補助魔法〉〈魔力感知【小】〉〈外部魔素吸収〉



familiar skill

〈上位使い魔契約→【同調】【記憶共有⚠】【心話(テレパス】〉

〈???〉











おぉ、あなた様はどこの勇者ですか!!


いや、魔王だったか…と、いうくらいに叫びたい。

なんてskillの数が多い。

流石に俺のようなspecial skillは無いけど、unique skillはある。使われたメイン素材が元魔王様だからか?


また〈???〉もあるし…産まれたばかりなのに上位個体並。


主人より強い万能型の使い魔【様】の誕生だよ…。




ともあれ、宜しくねベル。


今後は俺とベルが成長することで、魔杖器である終焉の煌魔杖(レーヴァテイン・グロウケス)は真の能力の解放と役割を果たすことになる。


ベルの主人として宝の持ち腐れにならないように、精進しなきゃな。


何か勇者していた時代よりも中身が充実して濃い気が…いいや、気にしたら負けなような気がするわー。












早速アイシャとボルデッカが此方へと駆けてきてくれた。宙に浮かびベルを楽しそうに眺めていた。


「ほぉ、これは小さくて可愛いのぅ」


「本当!ねぇ、お名前は?」


『ベルと名付けて貰いました』


「ベルかぁ、可愛い名前だね。私はアイシャって言うの。此方のおじいちゃんはボルデッカさん。宜しくね」


『アイシャ殿ですね。そちらはボルデッカ殿。

主殿との記憶共有で存じておりました。こちらこそ宜しくお願いします』


「生まれたばかりなのに流暢な言語ですね…興味深い。私はラムセイダと申します。アイシャの父です。

初めて拝見するが何と言う素晴らしい使い魔だ。

成長につれて親である白いリザードマンくんの力も受け継いで発現するようになるでしょう。

どんどんskillや力が上がるので精進あるのみですよ」


『…宜しくお願い致します』




挨拶が終わった見たいだね。でも、ラムセイダさんには少し硬いような表情を向けた。

まぁ、興味深いって言ってたから何か思うところが有ったのかも知れない。


〈主殿…聞こえていますか?ベルです〉


そう思っていると、脳内にベルの声が聞こえた。

驚いていると


〈ご安心下さい。

skillの心話(テレパス)を使っていますのでこの会話は他者には聞こえません。主殿もベルに意識して心の中で語り掛けて下さい〉


〈えーっと、こうかな?聞こえるかい?〉


〈はい、流石は主殿。直ぐにマスターされましたね。急遽お伝えしたいことがありますので内密に願います〉


半信半疑だったけど繋がって何よりだ。


〈どうしたの?〉


〈アイシャさんのお父上のラムセイダ殿にはお気をつけ下さい。

私のskillの〈魔力感知〉から違和感が…変なモヤが見えます。まるで偽装された魔力を感じます。

ベルの気のし過ぎかも知れませんが〉


…成る程、それは確かに変な事だね?

声には出せない内密な話に違いない。


〈底の知れない只者じゃないと思っていたけど…その感覚に間違いはない?〉


〈微かな偽装を伴う魔力…ですが、

念のためご注意を…と思った迄です。アイシャさんのお父上の事ゆえ、ご不快かも知れませんが〉


〈いいや、有り難うベル。また気になった事があったら遠慮なく教えてね〉


〈ご寛大なお心に感謝致します〉


そのやり取りを心でしながら、実際に怪しまれないようにボルデッカと話をしていた。


こちとら営業の仕事をしていたときに培われ、鍛えられたreal skillだ。なんて事はない。


『そう言えば皆様からご紹介が有りましたが、主殿のお名前は何て仰るのでしょうか?』



ベルがその問いを発すると、辺りはシーンとした静寂に包まれる。


「あ、ボク知らないよ。何て言う名前なの?」


アイシャが気まずい静寂を破ってにこやかに答えた。

空気読めない()ちゃんだけど、助かった。


そう言えば…俺、名前無いんだった!!




ボルデッカを見つめると、頭の鱗をポリポリと掻いていた。


「そう言えばそうじゃったの。なら、今決めるか?」


ルタラやドルゾィまでしか名付けしとらんかったわいと笑顔で真実を告げられた。





軽っ、軽いよボルデッカ爺ちゃん。俺に名前がなかった真相が判明した。


まあ、不都合ないからいいけどさ!



顎に手を当てて鱗を掻きながら思案しているボルデッカが、一声上げる。


「ふむぅ…ならば儂の一文字をとってデッカではどうじゃ?なかなか良い響きじゃ」


「却下。何か可愛くない」


即座にアイシャからのダメ出しを受けた。


「どうして何じゃ!?…うむむ、ならばボルで…」


「却下。しっくりこない」


その後、次々と名前候補を出すも悉く却下され続ける内にうっすらと涙目になる爺ちゃん。


アイシャさんや…見ているのが辛いから、もうやめたげて下さい!!



『楽しそうですね、主殿』


「う、うーん。そうだね。ところでベルは何かしたい事はあるかな?折角だから教えて欲しいな」


『私は…私は自分のボディを構成する元となった強い魔物達と戦ってみたいです。

そして、叶うならその素材を〈覚醒因子〉で再度取り込みたいのです』


「捧げた素材で強いと言えば、代表的なのはミスリルスライムや緑亜竜王(ワイバーンキング)とかだね。

今の俺達には強敵過ぎる相手だ。

…今よりももっと強くならなきゃいけないね!」


『はい主殿。ご指導お願いします』


「俺も弱いままじゃベルをそこまで連れて行って上げられない。一緒に頑張るよ」




流石、目標は大きい。


差し当たってベルの装備を見繕いに行こうか。


「あっ、ちょっと待ってよ~」


倉庫へと向かう俺達に気付いたアイシャとボルデッカが追いかけてくる。







あ、因みに俺の名前は【リィザ】に決まりました。



実は先々代の族長の白の英雄の名前で【ヴォルリーザ】からとったとのこと!



アイシャからも同意を得られ、ようやく名前付けから解放されてホッとした表情のボルデッカが由来を教えてくれました。


うん、良い感じ。同じ白いリザードマンだしね。


今日から俺の名はリィザ。解りやすくて、気に入ってます。





その後、エルの武具探しに倉庫へと向かう。


エルはskill〈魔力感知〉、俺は『魔力活用』で対象に魔力を放って反応する武器を探し始めた。


例外もあるけど、魔力が籠る武器の方がいいモノが多い。


得意な武器は分からないとの事なので、取り敢えず片っ端から気に入ったモノを選んでいく。


大きな猫程の大きさの為、人間では生まれて半年くらいの赤ちゃんくらいの大きさに近い。

その為、元々サイズが少ないので限られてくるんだけどね。



エルの選んだモノは全て宝具級以上であり、一度俺の〈時空間収納扉(ゲート)〉へと一旦しまう。


大まかな事はわからないけど、武具の名前が判明するからね。


あ、ラムセイダさんにも持ち出しの許可はもらってます!


最初に訪れた時は時間なかったけど、自分用のアクセサリーもちゃっかり見ていこう。










30㎝くらいで魔力を帯びたダガーを短剣用の戸棚から発見。

時空間収納扉(ゲート)〉から名は【サンダーダガー】と判明。

珍しい雷属性のダガーだけど、潜在保有魔力が低い事から、この一般倉庫に置いてあったのだと思われる。

実際に持つと今のエルには丁度良い剣程の大きさに見えた。


残念ながら魔力反応のある武器でエルが装備出来そうなモノはこれ以上見当たらない。

ダガー以外に扱いたい武器を見付けたら、いずれ製造してもらうのもありだろう。



後は防具類として、エルの手に装着出来た小人の籠手【ホビット・グローブ】。

昔、ここにもホビット族の誰かが勤めていたのだろうか?魔力反応はあるので何らかの魔力は宿しているのは間違いない。



脚装備には【風霊の靴】。

風霊は風の下位精霊の一種だ。

魔力反応があったので俺が靴を試しに履いてみた所、ブカブカだったのにジャストフィットした。

エルにも履かせて見たらジャストフィトした。

恐らく自動調整機能がエンチャントされていると思う。防御力も高く軽い。

折角なので俺よりもサイズが合うものが少ないエルに装備して貰うことにした。



身体に身につける防具はアイシャが小さい頃使っていた衣服を、ラムセイダさんが裁縫と補強の為に新しい触媒と魔法で付与(エンチャント)してくれた。

裁縫まで出来るなんて、多才。

正体不明な感じで怪しいけど一家に一台は欲しいラムセイダさんの性能だ。


出来上がった身体防具には【アイシャのおさがり】と、まんまな名前が表記されていた。

しかもデザインは物凄く可愛い。少しフリフリな感じも黒タイツもエルに良く似合う。

白磁の肌に白髪と、装備品の黒のコントラストが一層美形を際ださせて凄い。


新しくエンチャントされたのは防御力向上。

下手な店売りのレザーメイルよりも防御力が高いそうで、アイシャと同じドレスアーマータイプのようです。


一層可愛くなったエルもとても嬉しそうで、何か思うことはあってもラムセイダさんにちゃんとお礼を言っていた。















俺自身の装備は幼体の俺には今の所扱うには長すぎる長杖【終焉の煌魔杖】(レーヴァテイン・グロウケス)。

全身を覆い隠せて羽織れる防具に耐熱、耐火性に優れ若干の防刃性を誇る【耐火のクローク】。


予備武器として指輪型の魔導触媒の【ワンダリング・シーカー】がある。


そこに一般倉庫で魔力反応があった魔法が込められた武具を装備する。







銀の鶏を象徴した首飾り【ハート・オブ・チキン】。

名前からするに多分、臆病な弱い心に打ち勝てって事か?精神に対する補正でもついてるんだろうね。


蛮勇よりは臆病の方が良いような気もするけど…俺にも恐ろしいモノはある。

あの終焉の煌魔杖(レーヴァテイン・グロウケス)の映像に出てきたような恐ろしい存在と敵対せざる終えない時は、きっと背を押してくれる心強い支えとなってくれると思う。






頑丈なレザー製のベルトにほんのり輝く魔法金属が使われているバックル型の【ソーサラーベルト】。


腰に装着してるだけで既にそれなりの魔力の補正を感じ取れてます。

また、(おこさま)の身体の成長に合わせて調整が可能な優れもの。

末永く使いたい代物です。



さて本日最後に紹介する品は、【幸運卵(ラッキーエッグ)】。

昔、観光地のお土産で卵形のパワーストーンが売られていたが、そんな感じの金属で作られた特有の冷たさがそこにはあった。

ピアス状に加工されていて、卵型を全く傷付けないように外枠から支えるような形になっている。


小説とかでは実は此れは伝説の生物の卵だったり、レアな種族の卵だったりするんだろうけど、恐らくこれは違うと思われる。

流石に小指の第一関節ほどの大きさで黄金色に輝く生物卵なんて…無いだろう。

……無いよね?

ちょっとフラグを立ててみた俺だった。








そして武器に関して、自らを助けるために杖を壊してしまった事を気に病んで、特別にラムセイダさんから一般倉庫に在庫のある月鎌(ムーンサイズ)を加工調整して、アイシャのように杖のような魔導触媒を兼ねる武器として魔改造後にプレゼントしてくれるそうだ。

血月鎌(ブラッディサイズ)のような機能は持たせられないけど…と申し訳無さそうにしていたがとんでもない。


代わりに鎌を武器として扱うため、魔力も耐久性自体も出来る限り上げてくれるらしい。

よぅし、名前は月鎌(ムーンサイズ)Ⅱだ。

終焉の煌魔杖(レーヴァテイン・グロウケス)を扱えるまでは当座の武器は君に決めたよ!


アイシャもお揃いだと嬉しそうにしてくれているので、今からとても楽しみに待ってます。















そのまま宴会へと雪崩れ込み、疲れもあってリィザとボルデッカ、アイシャも早々に眠りに付いた。


ラムセイダは防犯上の対策があるとして、1人作業をしていた。

深夜遅くまで破壊され半壊したタイラント・ゴーレムを作業用ゴーレムを使って回収させ、オーバーホールしている最中だった。


(今回は本当に危なかった。

あのままだったらタイラント・ゴーレムも完全破壊されていた。封印(・・)されていても私なら何とかなると過信したのが間違いのもとだったようですね。

私も志半ばで死んでいたに違いない…これも娘が彼等を連れて助けに来てくれたお陰だな。感謝せねば)


火ダルマの残骸を漁り、元々(・・)探していた目的の回収物を発見する。


あれだけの破壊痕があるのにも関わらず無事だったのは正に僥倖(ぎょうこう)だったとしか言えまい。

いや、これを作ったのがあのディアドラならば或いは…。


そう考えを巡らせながら、火ダルマから回収した小さな金属片を眺めた。



「フフフ、魔王心核は勿体なかったけれど、私には此方(・・)のモノが無事手に入ったのだから満足だよ。

それに、まさかこんな所に偏屈魔導師(しんゆう)マリウス・クレインマンの魔導書があっただなんて。

これも必然…いや運命なんだろうね、

それも元勇者と元魔王のコンビか…彼等は第3勢力に育つに相応しい強大なチカラを手に入れた」


そして、思いを馳せながら次に来ている世代を感じる。


「今更、放逐していった大多数の神族にも侵略者(・・・)共にもこの世界を好きにはさせない…この世界は私達、人類(・・)のモノなのだから」

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