未成年と見間違われて。
担任の先生は現代史を教えている南ひろみ先生である。
でも、担任の先生は40代だけど、アンチエイジングで若さを保っている。
若返ることは人類の夢だったが、若く見えすぎるのも困ったものである。
「すみません。ぶどう酒を小さな小瓶に一杯」
担任の南先生は、見た目は女学院の生徒と見間違うほど若く見える。
「お客さん、手のひらを見せてください」
手のひらの中にはマイクロ・メモリーチップという目に見えないほどの小さいチップがある。これが23世紀の日本の身分証明書である。
「確認OK、年齢は42歳。私立学院の教師。お客さん安定した職業についていていいですね」
「でも、社会主義社会だからみんな公務員みたいなものでしょう」
「そうですけど、みんなが平等の社会が実現できても、仕事の大変さは職業によって違いますし」
「そう思います。教師の仕事は生徒たちの未来を守るとても大きな責任があるのよ」
「そうですか。責任重大ですね」
「で、どうして社会主義が成功したのか」
「それはビックブラザーという天才的な指導者がいるからです」
「そうなの」
「私は嘘をつきません」
「私も、支持しています」
「お客さん嘘をつかないように。心拍数と脳波に若干の乱れがありますよ」
「そ、そうなの。嘘も言えない時代なのね」
「で、社会主義経済とは全ての人が平等な社会を作ること。私はそれに賛成です」
「人間、無制限の富を持つと、ろくな事を考えなくなります」
「そう思うわ。では、ごちそうさま。お題は」
「今回ははじめてなので、ただです」
「また、来るわ」
「では、気をつけて」
「ありがとう」
そして、夜の繁華街に未成年の女の子が歩いていると通報され、また、街中にある監視カメラにも顔認識されて、警察官から保護されて帰宅した。
「夕べ、残業で遅くなって帰り道で酒場で延々とお話したら夜中になっていたのよ」
「南先生、私たちと区別できないほど、とても若く見えるから未成年の女性だと勘違いされたのですね」
「そうなのよ。でもアンチエイジングは、年齢を重ねても美しさを保てるけど」
「でも不便なことも多いですね」
「私、未成年と見間違われることが多くって」
「今はお酒をのむのも制限されているし」
「いくらお金があっても医療局から止められるのよ」
「アルコールも適度ならいいけど」
「その適度が人によって違うのよ」
「先生なら飲み過ぎないし」
私は担任の南先生の服装を見た。ミニスカートからでた足は長いし細く肌がきれい。地球温暖化で熱帯になってしまった日本では薄着のファッションを楽しむ若い女性も多いし。
そもそも宗教的な理由によるドレスコードは、23世紀の日本には存在できない。政策上の理由である。
ドレスコードは信仰の強要だと解釈されるのである。
なお、一部の外国人の信仰と良心の自由のために例外的にドレスコードをする行為は認められるが、これもいろいろと面倒な手続きが必要で。
「先生、ちょっと相談にのって欲しいのです」
「どんなことなの」
「同じ寮の部屋にいる田中さんが、アイドルになる気がないです」
「でも、本人と会って話し合わないと。そのことで、あたなと田中さんとどんな関係があるのですか」
「えーと、相談されて。あら、これは内緒だったけど」
「まあ、いいでしょう。別に悪い話ではないから」
「私、悪いことしてしまったわ。この話は秘密にするつもりだったのに」
「いいのよ。気にしないで。では、田中さんが相談するときまで、このことを内緒にして」
「はい」
私は友達の悩みを秘密にしなければならない。でも、それをつい先生に言ってしまった。
そして、担任の先生は教室から職員室へと移動した。
その時、田中美優が職員室に入った。学校を辞めたいという。でも、私が彼女のことに、これ以上干渉しないようにと思った。




