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異界を流離う無法者(アウトロー) 色物武器を造って使う  作者:  ・ω・
2章 無法者の藁しべ長者
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持つべき人に返そう

 森を抜ければ街が広がる。

 盛況な市場は人が行き交いぶつかりそうだ。石造りの街のなか、血と汚れだらけになっている少年の姿はとても目立った。

 タツミは他人の目など気にもとめず歩き続ける。人混みに紛れてしまえば気にされなくなるからだ。

 この街は冒険者のような存在がよく滞在する地域として知られているゆえ問題ごとや荒事に首を突っ込む輩は数知れず。たった一人で地下迷宮を攻略していたとしても、気付かれなければ汚れ仕事をしてきた一人にしかカウントされやしないのだ。


「あ」


 タツミは声をあげる。実を言えば喧嘩に近い別れ方をしてしまったため、相棒と顔を合わせるのは気不味いものがあった。怒られないようプレゼントの一つでも買っていくべきか。



 宿屋に向かう途中、スイカと似た果実を購入する。

 黒と白の縞模様をした大玉の果実はカラホワ。

 内側は緑色で見てくれは酷いが味は最高のフルーツであった。

 ゲームの設定ではプチドラゴンの好物に部類するのだが。

 アカネは我儘で生意気な性格をしているからか、色々と別なモノを気分的に食べる傾向がある。要するにその日の好みは気分次第なのだ。


「アカネぇ?」


 宿屋のドアをノックする。

 黒塗りの木製ドアは以外と硬い。

 鍵はかけられておらず進入する。


 途端に顔面に枕が飛んできた。


 ぼふっと枕を鼻面に受け、部屋のベッドにアカネが寝転がっていた。

 翼をひろげうつ伏せの状態、首を伸ばしこちらを睨んでいる。


「ただいま」


「……クソ野郎! 勝手に迷宮に行っただろバカ! あたいひとりじゃ入れないんだよ!」


「ひとりで行くって行ったじゃないか。アカネは行きたくなさそうだったし、良いじゃない」


「いいわけあるかボケ!!」


 アカネは浮き、尻尾でビンタしてきた。ぺしぺし頬を叩かれる。


「バカバカバカ! 相棒のあたいを置いて危険な場所に行くなよ!! ゲームのとき回復も探知も十分にできなくて何回もゲームオーバーになっただろ! ちょっとは学習しろよホントに! この世界では死んだらコンテニューできないんだぞ!!?」


「ごめんごめん」


「ふっざけんな!!」


「それより、迷宮は攻略し終えて、デザート買ってきたよ。食堂で御飯にしよう」


「……本当にバカやろー」


「心配かけてごめんね。あと、消耗品をいっぱい使っちゃったから、錬成し直さないといけないんだ。悪いんだけど素材集めするとき手伝ってもらえるかな」


「そんなの今はどうだっていいだろー」


 頭に乗り、べしべし叩いてきたアカネは、頭髪にしがみついてきた。

 タツミはその行為の意味を察していなかったが自分が悪いことをしたのだけは理解していた。

 しかし相棒の嘆きを聞き入れず、相棒も空腹じゃないかと心配しながら下に降りていく。

 宿の一階は食堂になっている。そこで別料金で好きな料理が食べられるゆえ、ここは素泊まり以外なかった。

 タツミは何を食べようか考えているが。

 先に済ませなければならない用事があった。

 食堂の厨房に顔をのぞかせ声をかける。


「すみません」


「あら? ぼうやじゃない、どうしたの?」


 宿屋の食堂をキリモミしてくれているエルフの女性を発見する。

 エプロン姿の彼女は客の料理をつくっている手をとめ、こちらによってきた。

 タツミはポケットから迷宮から探してきた指輪を差し出し、一言。


「見つけてきました」


「…………は?」


「ホブゴブリンやその部下は俺が皆殺しから、もう生きてません。勝手にあなたの、親の仇を殺してすみません」


「あんた謝るところが間違ってるのに気づいてんの?」


 まるで「オマエの獲物を俺が狩ってしまって済まない」とばかりに謝っている。


「この指輪……のために迷宮に行ったのかい?」


「はい」


「どうして?」


「どうしてって……要らなかったんですか?」


「そ、そうじゃない! どうして指輪ひとつのために命を危険にさらしたんだ!?」


「お母さんの形見を盗まれたと聞いたから、奪い返しました。理由は、形見は本人が持っておくべきだと思ったからです。それだけ」


 不慣れな敬語を使いながら、あっけに取られるエルフの女性に言った。

 それから彼女は涙ぐみ、指輪を両手で握りしめていた。無理もない。


「……ありがとう」


「いいえ。構いません、趣味の一貫ですから」


「照れ隠しするんだったらもっと台詞を選びなタツミ。それじゃあ料理人さん、お邪魔しました」


「ええ……ありがとう」


 彼女は震えていた、指輪が手元に帰ってきたのが嬉しくてたまらないのだろう。涙をこぼす。

 タツミはそれを見ていたが、カラホワを抱きながらテーブルに向かい呟いた。


「料理はしばらく出来そうにないから、最初はデザートから食べようか」


「……あんた、ほんと食べることばっかりだな」


「アカネは要らないの?」


「言ってないから、そんなこと」



 タツミは迷っていた、目の前でスイカよろしく切り分けたカラホワ。その緑色の果肉にかじりつき笑顔でいるプチドラゴンに真実を打ち明けるべきか。

 旅の路銀にするために持ってきた貴金属の中に厄介な代物があった。


「どうしたタツミ? 食欲ないの?」


「あるよ。ありすぎて食べられないくらい食欲があるんだ」


「変な言い方だな。お腹が痛いくらい吸いてる、程度でいいんだぞ」


「次はそうしようかな」


 ポケットにある貴金属のなかに、こう文字が刻まれていた。


『我が愛する娘。ベルモンドへ捧ぐ』


 つまり、これも形見のひとつなのだ。

 見てみぬフリは性に合わない、だからタツミは、これを元あるべき場所に返そうと考えている。


「文字とか刻まれてなければ知らん顔できたのになぁ」


 カラホワを齧れば緑色の汁が漏れだし、口のなかが甘くなった。


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