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胡蝶の夢  作者: 秋澤 えで
幼少期
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春の甘味

冬が終わりを迎え、再び庭の梅が花を付け始めた。



「涼ちゃん、これ裏ごし頼んでも良いですか?」

「分かりました、じゃあさよさんは饅頭の皮をお願いします?」

「はい、涼ちゃんも蓮様も抹茶って大丈夫でしたか?」

「あ、はい大丈夫ですよ」



僕のあまり人に言えない趣味、それはお菓子作りだ。

今さよさんと二人で挽き茶饅頭を作っている。

人に言えないというのも僕の中では料理好き男子はセーフ、でもお菓子作りが好きな男子はアウト。お菓子作りが好きな男装少女はアウトな気がするのだ。昨今では料理好き男子は珍しくないが、お菓子作りだと何となく『女子力』な匂いがする、あくまでも僕の主観ではあるが。


基本的には料理全般が好きだがやはり何か作るとなれば甘味を作りたい。洋菓子も和菓子も大好き、食べるのも作るのも。ちなみに僕の中では甘党男子はセーフだ。

洋菓子ではなく和菓子の饅頭を選んだ理由、蓮様も食べるとなるとアレルギーに気を遣わなければならないのだ。一応今のところ何かのアレルギー症状はでていないが、極力アレルゲンになりかねない卵や牛乳は避けておきたい。そうすると洋菓子は卵や牛乳を使うものが多いので必然的に和菓子が中心になるのだ。


それに饅頭はかなり簡単だし材料も割と家にあるもので作ることができる。小麦粉、ベーキングパウダー、砂糖、抹茶、水、小豆、片栗粉だけ。蒸し器が家に無いと代用品など用意したりして面倒だがここの台所には「こんな器具いつ使うの!?」なレベルの調理器まで揃っているため、どんな料理でもやろうと思えばできてしまう。料理好きとしてはまさに楽園だ。


なので今日は白樺家の台所で作業している。お菓子が作りたい旨をさよさんに言うと快く了承してくれ、一緒に作ることになったのだ。



「にしても意外ですね、涼ちゃんが料理好きだなんて」

「そうですか?割と何でも作りますよ」

「ん~何というか、涼ちゃんは男の子っぽくなることに全力を懸けているイメージが強いので、女の子みたいに料理なんかするかー、って感じなのかと……」

「料理に男も女も関係ないですよ。……お菓子作りについては我慢出来ないだけです。これだけ色々な器具があるのに使わない手はありません」



あんこの裏ごしを終え、さよさんの作った抹茶の皮に餡を包んでいく。

こういうとき子供の小さな手は不便だ。どうしても饅頭がさよさんのと比べて小さくなってしまう。



「ふふっ涼ちゃんは手が小さいから形作りにくいですね」

「今に見ててください、五年もすれば食パン大位の大きさの手になりますから」

「大きく出ましたね!?」



形成した饅頭に片栗粉をまぶし、七分間蒸す。これで挽き茶饅頭の完成。



「にしても簡単ですね~どこでこれの作り方知ったんですか?」

「む、昔本で見たことがあって……」



昔というのがどれくらい昔なのかは是非とも気にしないで頂きたい。



「よく作り方覚えてますね……」



びっくりはしているが怪訝な様子は無いのを見て安心した。





「蓮様、饅頭作ったんですけど食べませんか?」

「今度は饅頭か、お前に作れないものは無いのか?」

「まあ色々ありますよ、多分」



饅頭と一緒に50~60℃程度のお湯で淹れた玉露を持って離れに訪れる。

縁側にさよさん、僕、蓮様と並んで座る。梅の木には一羽のウグイスが止まっていた。



「一年って早いですね。写真を撮ったのが昨日のようです」

「そうか?俺は長く感じた」

「蓮様、大人になると時間の流れが早く感じるようになるそうですよ」

「涼ちゃん、それなんか私がお年寄りみたいに聞こえるんですけど……」



のんびりと饅頭をたべながら春の心地に浸っていると、ふと4月からのことを思い出した。



「そういえばなんですけど、4月からはこちらに来れる時間が減ります」

「ええっ何で!?」



これを聞いて蓮様は掴みかからんばかりの勢いで僕に詰め寄る。



「あ、そっか。涼ちゃんも来年7歳だからね」

「な、7歳だと何かあるのかっ!?」

「来年7歳になる年ですから僕は小学校に通うんですよ」



そう、幼稚園や保育園には行かずに済んだのだが、小学校は義務教育だからそうは行かない。

というより小学校とか不安過ぎる。蓮様はある程度落ち着きがあるからマシだと言えるが、阿呆真っ盛りの小学生に馴染める気がしない。



「俺も7歳」

「あ~蓮様はまだ行けませんね、多分」

「何で!?」

「蓮様は身体が弱いので、多分行くのは小学二年生から、再来年になると思いますよ」

「じゃあ会える時間が……!」

「はい、必然的に減ると思います。こちらに来れるように努力はしますが、午前中は土曜日と日曜日以外まず会えませんね」

「そんな…!」



蓮様はがくりと肩を落とすが、バッと顔を上げ僕にしがみついた。



「涼、行くな……!」



珍しく真剣な顔で僕を見る蓮様に対し、さよさんは何やら期待の眼差しで僕を見ている。何を期待しているのだろうか……?



「いや、無理ですよ。行かなきゃいけないって法律で決まってますから。行かないと僕の両親が逮捕されちゃいます」

「涼ちゃんがドライ過ぎる……!」



今度はさよさんが膝をつく。どうやら彼女の期待に添う回答ではなかったらしい。勝手に期待されて勝手にがっかりされても困る。



「そこをなんとか!」

「なりませんから。それに全く会えなくなる訳じゃないんですから我慢してくださいね」



しがみついてきた蓮様の頭をポンポンと撫でる。



「あうう……」



顔を赤くしてうなだれながらも、それ以上我が儘は言わなかった。一年半付き合って分かったが、どうやら頭を撫でられると弱いらしい。便利だ。



まあ何にもしなくても小学生になるが、どうにかして高校生になるまでに圧倒的かつ安定の地位を得るために長期の計画の根回しを始めておこう。


全ては僕の望む未来のために。


やっと、やっと小学生です…!長かった。とりあえず一段落つけときます


ただ来年から受験生なので春から更新が停滞するかもです…

もちろんできる限り三日に一話を心がけます(`・ω・´)

これからもよろしくお願いします!

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