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胡蝶の夢  作者: 秋澤 えで
幼少期
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赤霧涼という人

相変わらず低い視界。いまだに紅葉の手。

五か月になった涼です。名前的に男の子かと思っていたが女の子だった。中性的な顔だけど、両親のDNAをついで美形なので一応喜んでおこう。


自我が芽生えたのが三か月のときだった。どうやら私は 赤霧涼(あかぎりりょう) という名前らしいことが分かった。当初はライトノベルやネット小説でよくある転生トリップや剣と魔法のファンタジーな世界か、などと考えていたが、魔法などはないいたって普通の世界だった。


それではと、両親が着物を着ていることと室内が純和風であることからタイムトリップかもしれないなどと思ったがそんなことなかった。よく見たら普通にエアコンがあった。純和風にエアコン、というのはなかなか妙で完全にエアコンが浮いている。現代でエアコンがないのは困るためありがたいと言えばありがたいのだが……。


小さな世界を見て考察する限り、どうやら私は現代の女の子に生まれたらしい。なぜ生まれているのかは分からない。そもそも死んだ記憶もないのだ。何が何だかわからないが、元の世界に戻れる様子は数カ月たった今もないし、しっかり世話してもらっているから特別困ったこともない。



二ヶ月ほどはいたって普通だと思ってたけど、環境はどうやら普通でも無いらしい。

この『赤霧家』は江戸の前から続く旧家らしい。そして代々主である『白樺家』に仕え、護衛でもある御側付の家系だった。ただ基本的に御側付は男性の仕事らしいので私には関係ない。

更に見た目で言えば赤霧の家系は皆、赤髪赤目。無論赤霧の子である私も類を漏れない。母親である 赤霧千里(あかぎりちさと)さんは入り嫁なので黒髪黒目の和風美人だ。私も出来れば黒髪黒目の女の子らしい美人になりたかった。



次に最大の驚き、私には双子の兄がいた。お互いに起きあがったりすることも出来なかったから随分認識出来なかったのだ。


名前は 赤霧翡翠(あかぎりひすい)


赤髪赤目、中性的な顔立ち。ただ双子と言っても二卵性双生児なのであまり似ていない。翡翠はたれ目で私は少し吊り目だ。その所為で私はより男の子っぽく見られる。私は父様の血を濃く継ぎ、翡翠は母様の血が濃いようだった。受け継ぐ血が逆であれば私も美人さんになれるかも、と期待したが今更かなわない。



しかし私が驚いたのは双子だったからではなく、その名前と見た目だ。

我が兄の赤霧翡翠は私の友達がドップリと、はまり込んだ乙女ゲームの攻略キャラだった。私はやったことはないのでよく知らないが、要はプレイヤーがイベントこなして好みのキャラクターと恋愛をするとか大体はそんな感じだろう。友達が一番好きだったキャラが赤霧翡翠なのだ。散々携帯に画像が送られてきたから覚えている。


となると恐らく、白樺家には 白樺蓮(しらかばれん)がいるのだろう。兄と同じくゲームの攻略キャラで詳しい性格の設定は知らないがアルビノ設定だった。因みに貴腐人でもあった友達が翡翠×蓮で美味しく頂いていたのは蛇足だろう。


尤も、乙女ゲームのキャラクターだろうが何だろうが、攻略キャラのただの妹である私には何の関係も無いはず。ヒロインだろうと何だろうと勝手に攻略してやってくれ。何より私達はまだ一歳にも満たない、ゲームが始まるのが高校一年から、何にせよまだまだ先の話である。



正直目前の問題は羞恥にまみれる幼児期をどう乗り越えるかだ。オムツを付けていた頃が一番の苦痛であったが幼児の全力をもって早めに卒業させて頂いた。本当に辛かった。乳離れを終えた私の次の目標は喋れるようになることだ。



「あう!」

「涼ちゃんどうしたの?」

「なう、あうう。」

「お腹すいたの?」



道のりはまだまだ遠いようだ。

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