番外編 中央ギルドのステラさん 3
26階の詰所を出ると、さらさらと川のせせらぎが耳に入ってきました。天井は高く、明るいダンジョン内は緑にあふれていました。見晴らしのいい草原には、何本もの小道ができています。草の臭いが意外と強く、ステラさんの鼻腔を刺激します。クエストは28階の岩掃除という事なので、まずは27階への階段へ続く道をまっすぐ突き進んでいきます。
そんなわけで、28階目指して道を歩くステラさん。それでもたまに他のパーティーとすれ違う事がありましたが、ステラさんの姿を見るやあわてて横道にそれていきます。中には彼女の姿を見るや悲鳴を上げて逃げていく女の子もいたりして、その度にステラさんは申し訳なさそうに「すみません……」と頭を下げるのでした。
レベル35の高レベルプレイヤーという事もあり、このあたりのフロアのモンスターとはめったにエンカウントしないステラさんでしたが、27階、足場の悪い湿地帯で、3匹のトカゲ人間と2匹の大ガメに遭遇しました。筋力と防御力に優れる種族・リザードマンと、圧倒的な物理防御力を誇るモンスター・ロックタートルです。トカゲの手には、ごついナタのようなものが握られています。モンスターたちはステラさんの姿を確認すると、獲物を見つけたとばかりにずいずいと迫ってきました。ステラさんも、自身の肩まで届くほどの丈の巨大な大斧を両手でつかみ、戦闘態勢を整えます。
リザードマンの一体があと10歩の距離に入ってくるや、足場の悪さをものともせずステラさんが猛然と突進していきました。6歩駆けて斧を振るうと、リザードマンはあまりの速さに対応できず真っ二つになりました。残る二体も驚いた様子でナタを振り上げますが、その動きはステラさんのそれとは比べ物にならないほどゆっくりとしたものでした。ナタより遥かに重そうな斧を一閃、二閃すると、強靭な肉体を誇るはずのリザードマンたちの体は、いとも容易く引き裂かれていきました。
さて、残るはカメだけです。しかし名前からもわかる通り、ロックタートルの甲羅の硬さは尋常ではありません。通常は甲羅から出てきた頭や手足を辛抱強く攻撃するのがセオリーです。足が速いパーティーの場合は全力で逃げ出す場合も多いです。
そんな大ガメさんに、しかしステラさんは、躊躇する事なく斧を振りかぶりました。そのまま、甲羅目がけて全力で振り下ろします。すると、がぁんという大音響とともに、岩にも匹敵する硬い甲羅がなんと木っ端微塵に砕け散っていきました。致命傷には至らなかったようですが、よほど驚いたのでしょう。甲羅を砕かれた方のみならず、もう一匹の方も恐れをなして逃げ出していきました。
「ふぅ……」
逃げていくカメたちを見送りながら、ステラさんはひとつ息をつきました。もっとも、それほど疲れているようには見えません。顔を上げると、彼女は再び28階目指して歩き始めるのでした。




