2-3 人前で発表するのって、緊張するよね
「ルイー、来たよー」
クエスト当日。オレがメシを食い終わって一息ついていると、リアが扉をドコドコ叩いてオレを呼んだ。えー、オレまだゆっくりしたかったんだけど。
「おう、入れよ」
とりあえず中に招き入れる。
「おじゃましまーす」
遠慮なくうちに入ってきて椅子に座るリア。てかコイツとオレは結局どういう関係なんだ? 少なくとも付き合ってるって感じではないが。
「とりあえず、お茶でもしようよ」
え? お前がそれ言うの? オレ舐められすぎじゃね?
「へいへい、わかったよ」
そんなわがままにも文句ひとつ言わず従うオレ。人間できてるぜ。お湯を沸かしながら、リアのどうでもいい話を聞き流す。
「ところでさー」
ついだお茶に口をつけながら、リアが竪琴を指さした。
「できた? 私の応援歌」
「ああ、できたぜ」
そう言いながら、竪琴を手に取る。
「お前にはもったいないくらいの曲がな」
「えー、なにー? ルイのくせに生意気ー」
少しムッとした様子で頬杖をつくリア。
「ご大層な事言っておいて、変な曲だったら容赦しないからね。鼻水たらすまで酷評してやるんだから」
サラリと恐ろしい事言ってくれんな、この女。オレこう見えて結構豆腐メンタルだから、わりとマジでヘコむかも。
「ま、ルイの曲でマトモなものなんて今までなかったけどねー。これはもう土下座確定かな?」
そんな言ってられんのも今のうちだ。聴いて驚けよ、オレの渾身の応援ソング! 制作時間約20分!
そしてイントロをかき鳴らす! 聴け! ジャジャジャジャージャージャジャジャジャジャージャージャ……。
「え、ウソ……?」
ん? イントロ聴いただけでなんか驚いてるな。だがまだ早いぞ! 驚くのはオレの歌を聴いてからにするんだな!
風となって 大地駆け抜け
放つ刃 闇を切り裂く
音もなく 忍び寄って
宝の山 その手につかむ
さあ、ここからがサビだ!
リア 美しき
リア 謎の戦士
その名は盗賊 リア
どうだ! オレの歌唱力と歌詞センス! シビれたか? シビれただろ!
……なんだ、この間は……? 不安になるだろ、なんか言えよ。え、ウソ、これってダメなのか……?
自信を失いかけてきたその時、リアが口を開いた。
とりあえず曲を仕上げてお披露目までこぎつけたルイ君。
果たしてリアちゃんのジャッジやいかに?
しっかし我ながらひっどい歌詞ですね~。いや、書いたのはルイだけどさ。
何だよ「謎の戦士」って(笑)。
どうでもいいですが、サビで名前を連呼するのって特撮ヒーローものの主題歌っぽいですね。