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5-10 オバケ、怖い!




 32階の出口まであと少しという所で、ゾンビのご一行と出くわしてしまったオレたち。


(ちょっと、どうするの!? ていうか、あの女の人って、オ、オバケなの!?)


 小声でささやくリアは恐怖で顔面蒼白だ。


(ゾンビさんも、八匹くらいいますよ?)


 いや、ゾンビに「さん」はいらないから。しかしあれは、ちと数が多すぎるな……。ん? 向こうから風が……。


(くっせえぇぇぇえええ!)


(バカ! 大声出さないでよ!)


 ヤベえ、鼻もげる! マジでムリ! ムリだって! 逃げよう! 逃げ、逃げ!


(ね、おとなしく逃げよ? あの鎧、メチャクチャ強そうだし)


 リアのヤツ、よっぽど怖いのか体ガタガタ言わせてんぞ……。歯のカチカチ音が思いのほか大きくて、オレとしてはそっちの方が向こうに聴こえるんじゃないかと気が気でない。


(この階なら他にも帰り道はありますから、そちらから帰る事にしましょう)


 そうだな、どう見ても今のリアがマトモに戦えるとも思えんし……。しっかしあの女、幽霊なのか……。めっちゃ美人なのにもったいないな……。マッパなのに胸の先端とかはその長い黒髪で隠されてるのが、また何とも恨めしいな。幽霊だけに。


 そんな事を思いながら女幽霊ちゃんを見てると、ふと目が合った。


「あ」


 思わず声が漏れる。ヤバい、めっちゃこっち見てる。


(ヤバい、見つかったっぽい)


(え?)


 女につられてか、甲冑野郎どももこちらを向く。


(これは……)


(見つかってますね……)


 リザードマンやら一角イノシシやらのゾンビどもも、次々にこちらに向き直る。


(こうなったら……)


 リアも、覚悟を決めたようだ。


(みんな、用意はいい?)


(はい)


(おう)


(それじゃあ……)


 大きく息を吸うオレたち。そして……。


「逃げろおぉぉぉーっ!」


 今来た道を、一目散に駆け抜ける。後ろを振り返る余裕などどこにもない。オレも右手に竪琴、背中にランドセルという超絶変態ルックで暗い木々の間を爆走した。




「はぁ、はぁ……」


 しばらくの間全力で疾走したオレたち。ゾンビどもが追ってくる様子はない。


「ど、どうやら撒いたようだな……」


「はい、そうみたいです……」


 ようやく一息つく。いやホント、マジで怖かったぜ……。ふとリアの方を見ると、地面に座り込んで何やら洞窟の天井を見上げている。もうなんていうか、放心状態だな……。


「ゾンビさんたちはあちらに向かって歩いてましたから、こちらのルートを使えば出会わずに済むと思います」


 ステラ、こんな時でも冷静だな……。さて、リアは……。おお、こっちの世界に帰ってきたみたいだな……って、なんか泣きベソかいてないか?


「うう……怖かったよぉ……」


 今にも涙腺が決壊しそうな顔のリア。気づいたステラが、リアを抱き寄せて頭を撫でる。


「もう大丈夫ですよ」


「うぅ……ステラぁ……」


 鼻をグズグズ言わせながら、子供のようにステラの胸に顔をうずめる。ああ、かわりてえ……じゃなくて、ステラみたいな気が利くお姉さんがいてよかったぜ……。




 こうしてハプニングこそあったものの、オレたちは無事にダンジョンを出てギルドまで戻る事ができた。ふぅ、一時はどうなる事かと思ったわ……。




辛くも逃走に成功した一行。

リアちゃん、ホントにオバケがダメなんですね。

そして私はステラさんみたいなお姉さんがほしいです(笑)。

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