5-9 で、出た~っ!
「はぁ、はぁ……」
ひとしきりステラにポージングをお願いし終え、脳内メモリを使い果たしたオレ。リアがジト目でオレを見る。
「……気は済んだ?」
「ああ……」
「これは友人としての忠告なんだけどさ……さすがにあれは、キモいよ?」
「オレもそう思う……」
オレの視界の片隅で、ステラがランドセルを下ろす。あのランドセル、どっかに売ってねえかなあ……。
「これで良かったでしょうか?」
「ああ、最高だったぜ……」
息も絶え絶えに仰向けに横たわるオレを、少し心配そうに覗き込むステラ。オレは右腕を上げて親指を立てる。
「はあ……。バカやってないで、早く帰るよ」
へいへい、っと。コイツはランドセル背負っても、単に痛い高校生くらいにしか見えないだろうなあ……。そんな事を思いながら立ち上がる。
「早く帰らないと、オバケが出たらいけないもんな」
「バッ……! こ、怖くなんかないもん!」
「はあ? オレはただ、ゾンビ切って武器や服が汚れたら大変だって話をしただけだぜ? 怖いって何の話だよ?」
「なっ……!? 何さ、ルイのクセに! そんなの、わかってるもん!」
顔を真っ赤にして声を荒げるリアの頭を、ステラが優しく撫でる。うっわ、ホントいいお姉ちゃんだなおい。
「あんまり女の子をからかっちゃダメですよ?」
「わ、わかった……」
笑顔でオレを諭すステラ。やっぱこの人、26歳なだけあるわ。
薬草の採集も終わり、帰路につく。しっかし不気味な森だな……。てかこんな洞窟じゃ光合成もできないだろうに、なんでこんなに木が生えてるんだ? 今さらすぎる話だけど。それに、霧も濃いんだよな……。お陰で視界が悪い事悪い事。
「でも、香水買っといてホントよかったよねー」
「そうですね」
「全然出てこないじゃん、ゾンビなんてさ」
32階の出口も近くなり、少し気が大きくなったのか軽口を叩くリア。てか、香水じゃねえだろ。
「まだ31階もあるんだから、出ないかどうかはわからんだろ」
「あれ、ルイ君はもしかして怖いのかなー? ねえ、怖い? 怖い?」
怖がってたのはオメーだろ! 思わずオレがそうツッコみかけたその時。
がちゃり。
何やら耳慣れない金属音が聴こえてきた。甲冑を着込んだ騎士が歩く時のSEみたいな音が辺りに響く。他の冒険者かと思い音の方を見たオレたちは、一瞬息を飲んだ。
霧の向こう側から、木陰を甲冑姿の騎士が二体歩いてくる。そのすぐ後を見ると――一糸纏わぬ姿の若い女が、悠然と歩いていた。オレがオパーイオパーイはしゃぎまわらないのは、その女の肌が異様に青白かったからというのと、そして――。
(で、出たあぁぁぁぁあっ!)
オレたちは慌てて木陰に引っ込む。そう、女の周りには……このあたりのモンスターの成れの果てとおぼしい、無数のゾンビどもが群がっていた。
不気味すぎる森の中、怪しい群れに遭遇してしまった一行。
果たしてリアちゃんは精神の均衡を保てるのか!?




