2-8 女盗賊、駆ける
「それじゃ、いくよっ!」
かけ声とともに、リアがトカゲの群れに突っ込んでいった。オレも竪琴を構える。
「いくぜ! オレの歌!」
そう叫ぶや否やイントロを刻み始めるオレ。デデデデーデーデデデデデーデーデ……。
ん? リアの速さが増したように思えるのは気のせいか? すでに先頭のツインリザードに肉薄している。さあ、ここからがオレの歌だ! かぜとなってー、だいちかけぬけー……。
っておい! すげえ剣さばきでトカゲの首二つともぶったぎったぞ! 速過ぎて動きがよくわかんねえ! コイツこんなに強かったのか!? ってヤベえ、一匹こっちに突進してきたぞ! はなつやいばー、やみをきりさくー……。
「行かせはしない!」
うおぉぉぉい! 投げつけた短剣がキリモミしながらトカゲをぶち抜いたぞ! 飛び道具で一撃かよ! 「放つ刃」の威力おかしいだろ! コイツどんだけ化けモンなんだよ! リアー、うつくしきー、リアー、なぞのせんしー……。
「絶対に!」
リアがツインリザードの二つの頭の間に剣をぶち込み、バターでもカットするかのように容易く切り裂いていく。
「ルイは!」
そのまま剣を引き抜き、オレの方に向かっていたトカゲに一気に迫る。
「私が守る!」
空高く飛び上がったリアが着地と同時に剣を二振りすると、トカゲの頭が二つ、左右へと吹っ飛んでいった。
「はあ、はあ……」
「あの……リアさん?」
肩で息をするリアに、おそるおそる声をかける。
「アンタ、こんなに強かったんスか……?」
リアは推定レベル30弱だからツインリザードが五匹や十匹出ようと負けるわけはないんだが、四体のトカゲに全く何もさせずに瞬殺するとなると話は別だ。一体どうなってるんだ? 覚醒スキルとかか?
「それが、変なんだよねぇ……」
オレの疑問をよそに、当のリア自身が首をひねっている。
「なんかすごい体が動いちゃってさ」
「そうなん?」
「うん。ルイが竪琴弾き始めると、ちぎれるくらいに脚が動いて」
確かにイントロ弾いたらすごいスピードで敵に迫っていったもんな。あれは気のせいじゃなかったのか。
「剣を振るスピードもおかしかったし、私の筋力じゃ首を一発ではねるなんてできるわけないし」
そうだよな。女の、しかも盗賊の力で首をはねるとか一体レベルいくつだよって話だ。
「何より投げナイフでツインリザードを一撃なんて、私のまわりで聞いた事ないよ」
ホントだよ! 結局あれで全部倒せたって事じゃねーか! オレにはお前の方がよっぽど脅威だよ!
というわけで、無双したのはリアちゃんでした。
しかし本人はどうも合点がいかない様子。あの強さ、一体どういう事なんでしょうか。
次回は貴重なリアちゃんのちょいデレ回です。




