2-7 初めての危機
そんなこんなで、ダンジョンを突き進んでいるわけだが。
なぜか、バトルにならない。わりとすぐ近くをモンスターが通り過ぎても気づかれないんだけど。オレらそんなに特別な回避行動とってるわけでもないのに。そもそもこのフロアは石造りで神殿とか宮殿みたいな造りだから、隠れる場所なんてほとんどないんだが。
「すごいな、お前の隠密スキル」
「隠密スキル? 何それ?」
「全然敵に見つからないなって事」
「ああ、今スイッチオンしてるからね」
「スイッチオン?」
何だよその世界観ガン無視した単語は!? もうこの世界わかんねえわ!
「ほら、これだよこれ」
そう言ってリアが片足を上げながら足元を指差す。そこには足輪がはめられていて、赤いボタンのようなものがついていた。
「これをカチッ、とね」
おい、こんなお手軽システムなのかよ! だったら日常生活ももっと楽チンにしてくれよ!
「てわけで、13階まではモンスターとはエンカウントしないと思うよ。私、超絶ハイスペック美少女盗賊だし」
「……まあ、そいつはありがたいわ」
もう、あんまり考えないようにしよう……。考えたら負けだわこりゃ。
「さーて、この辺りだよー」
結局、ここに来るまで一度も戦闘にはならなかったな。盗賊すげえわ。13階は地面が土で、ところどころ沼や池っぽいものがある。いかにもトカゲが出そうなエリアだな。
「いきなり囲まれたりしないだろうな」
「大丈夫だよ、大体一、二匹でしか出てこないから」
「それなら心配ないな」
「むしろ獲物がなかなか見つからない事を心配した方がいいんじゃない?」
なるほどな。じゃあもう少し奥の方行ってみるか。
そしてオレたちは無事ツインリザードを発見する事ができた。それも一度に四匹も。
「おい! 一匹か二匹で出るんじゃなかったのかよ!」
「あらら……」
意外にもリアはマジな顔で一言こぼし、オレの前に歩み出た。そのままこちらを振り返らずにつぶやく。
「今さら言っても遅いんだけど……」
「うん?」
「ケガさせちゃったら、ごめんね」
おいおい、なんかトーンがスゲーマジなんですけど? ちょっと茶化せるムードじゃないぞ。ここはがんばっていい事言うべきか?
「大丈夫さ、リアがオレを守ってくれるんだろ?」
お? 今のセリフ、かっこよくね? オレはお前の事信じてるぜ的な?
「そうだね……うん、ルイは絶対に私が守る」
いや、なんて言うか……シリアスすぎて空気が重いわ。これ、マジでがんばんないとヤバいんじゃね?
「ねえ、お願い」
リアの瞳は、決意に満ちている。
「私の応援歌、歌って」
だから、オレも。
「ああ、最高のヤツを聴かせてやるさ」
リアの願いに、全力で応える事にした。
突然のシリアス展開。
二人は無事にこの危機を乗り越えられるのか?
次回、ついに詩人がその真価を発揮! ……するかも。




