7話
しばらくすると、まん丸いものがごろごろと、坂をころがってやってきました。
イガイガをもった栗のような、ぷぅっ、とふくれたハリセンボンのような、まん丸の物体です。それは皿の前でぴたりと止まり、もぞもぞ動きだしました。にゅうっ、と顔がつき出ます。
全身トゲトゲでおおわれた一匹の茶色いハリネズミでした。
土がもくもくもりあがり、さっきのモグラが顔を出します。ひょい、とハリネズミを振りむきました。
「このお皿なんだけどさ、どうにかできないものかなあ」
大きな手で皿をさされて、ハリネズミは、うーん、と首をひねりました。
「ね、だったら、こうしたら、どう?」
ピンク色した小さな手を、龍のわきに伸ばします。そして、
「こちょこちょこちょ!」
《 わわ! くすぐったいよ! くすぐったいよお! 》
龍はのけぞって笑いました。
あんまりあばれるものだから、皿がぴょんぴょん、とびはねます。
けれど、ちょん切れた胴のほうは皿の割れ目にくっついたまま、龍は皿から出てきません。龍がひーひー笑いころげただけでした。
「ごめんね。やっぱり、だめだったみたい」
ハリネズミはモグラをふりかえり、トゲトゲの頭をかきました。
くすぐる作戦も失敗のようです。
それでも、モグラとハリネズミはがんばりました。
木の実のごちそうをつみあげて龍を外に誘い出す作戦、龍の鼻をくすぐって、くしゃみしたはずみで飛び出させる作戦──どったん、ばったん大ふんとう。けれど、やっぱり、どれも、うまくいきません。
「なにしてるのー?」
さわぎをききつけ、森に住む動物たちが、わらわら川辺にあつまってきました。うさぎにキツネ、たぬきにネズミ、スズメに、ゾウに、クマに、トラまで。
モグラとハリネズミは一生けんめい、身ぶり手ぶりで説明します。かわいそうなこの龍を、なんとか出してやりたいのです。
ことのあらましを聞きおえて、みんなは顔を見あわせました。皿から龍を出すなんて、聞いたこともありません。いったい全体どうしたら、皿から出てくるというのでしょう。
うーん、うーんと、みんなが知恵をしぼっていると、「おおお?」とどこかで、野太い声があがりました。
「それだったら、こうしたら、どーお?」
ぶっとい足で、のっそりのっそり進み出たのは、目もさめるような黄色と黒の、あざやかなしま柄のトラでした。
あんぐ、とトラは口をあけ、ひょいと皿をくわえます。そして、
「そーれ!」
ぶんぶん、皿を振りまわしました。
《 わ! わ! やめてえ! 目がまわるぅ! 》
目玉にぐるぐるうずまきを作って、龍は悲鳴をあげました。赤い舌を、ぺろんと出して、ふらふらになってしまっています。
けれど、ちょん切れた胴のほうは皿の割れ目にくっついたまま、龍は皿から出てきません。皿がトラのよだれだらけになって、龍が目をまわしただけでした。
「……ごめんよお」
トラはしょんぼり頭をさげて、めんぼくなさそうに言いました。
ぶんまわし作戦も失敗のようです。