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絵師の皿  作者: カリン
7/10

7話

 しばらくすると、まん丸いものがごろごろと、坂をころがってやってきました。

 イガイガをもった栗のような、ぷぅっ、とふくれたハリセンボンのような、まん丸の物体です。それは皿の前でぴたりと止まり、もぞもぞ動きだしました。にゅうっ、と顔がつき出ます。

 全身トゲトゲでおおわれた一匹の茶色いハリネズミでした。

 土がもくもくもりあがり、さっきのモグラが顔を出します。ひょい、とハリネズミを振りむきました。

「このお皿なんだけどさ、どうにかできないものかなあ」

 大きな手で皿をさされて、ハリネズミは、うーん、と首をひねりました。

「ね、だったら、こうしたら、どう?」

 ピンク色した小さな手を、龍のわきに伸ばします。そして、

「こちょこちょこちょ!」

《 わわ! くすぐったいよ! くすぐったいよお! 》

 龍はのけぞって笑いました。

 あんまりあばれるものだから、皿がぴょんぴょん、とびはねます。

 けれど、ちょん切れた胴のほうは皿の割れ目にくっついたまま、龍は皿から出てきません。龍がひーひー笑いころげただけでした。

「ごめんね。やっぱり、だめだったみたい」

 ハリネズミはモグラをふりかえり、トゲトゲの頭をかきました。

 くすぐる作戦も失敗のようです。

 

 それでも、モグラとハリネズミはがんばりました。

 木の実のごちそうをつみあげて龍を外に誘い出す作戦、龍の鼻をくすぐって、くしゃみしたはずみで飛び出させる作戦──どったん、ばったん大ふんとう。けれど、やっぱり、どれも、うまくいきません。

「なにしてるのー?」

 さわぎをききつけ、森に住む動物たちが、わらわら川辺にあつまってきました。うさぎにキツネ、たぬきにネズミ、スズメに、ゾウに、クマに、トラまで。

 モグラとハリネズミは一生けんめい、身ぶり手ぶりで説明します。かわいそうなこの龍を、なんとか出してやりたいのです。

 ことのあらましを聞きおえて、みんなは顔を見あわせました。皿から龍を出すなんて、聞いたこともありません。いったい全体どうしたら、皿から出てくるというのでしょう。

 うーん、うーんと、みんなが知恵をしぼっていると、「おおお?」とどこかで、野太い声があがりました。

「それだったら、こうしたら、どーお?」

 ぶっとい足で、のっそりのっそり進み出たのは、目もさめるような黄色と黒の、あざやかなしま柄のトラでした。

 あんぐ、とトラは口をあけ、ひょいと皿をくわえます。そして、

「そーれ!」

 ぶんぶん、皿を振りまわしました。

《 わ! わ! やめてえ! 目がまわるぅ! 》

 目玉にぐるぐるうずまきを作って、龍は悲鳴をあげました。赤い舌を、ぺろんと出して、ふらふらになってしまっています。

 けれど、ちょん切れた胴のほうは皿の割れ目にくっついたまま、龍は皿から出てきません。皿がトラのよだれだらけになって、龍が目をまわしただけでした。

「……ごめんよお」

 トラはしょんぼり頭をさげて、めんぼくなさそうに言いました。

 ぶんまわし作戦も失敗のようです。


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