彼は何を創ったのか
「研究員の諸君!! またもや世紀の大発明を思い付いた!! 早速製作に取り掛かれ!!」
黒のワイシャツに黒のズボンの上からまとった白衣を翻し、中肉中背の男はそう叫んだ。
「声でけーよ、つーか研究員諸君って俺一人しかいねーし、研究員でもねーよ」
そう気だるそうにかなりラフな服装で、ピアスや指輪、ネックレスなどのシルバーアクセサリーをじゃらじゃらと身に付け、安っぽいパイプ椅子に座った茶髪の人物が応
える。
「ファハハハハハッ!! これが実現すれば私を笑った、エッバやイザやヘリカル達を見返せるわ!! ファハハハハハッ!!」
「聞いちゃいねーし」
そもそも誰だよそいつら、と言いながら、両手を天井にかかげ、海老ぞりになって高笑いをする姿を見て茶髪の人物は手を顔に当て溜め息を吐きながら俯く。
「さあ!! 無駄口を叩いている暇は無いぞ!! すぐに準備をはじめるのだ!!」
「てめぇだけには無駄口云々いわれたかぁねぇよ」
と、言いつつ立ち上がり棚に入っている工具や何に使うのか解らない準備を始める。
「んで? 取り合えず工具とか出したけど当然その"世紀の大発明"とやらの材料は揃ってんだよな?」
「もちろん、これから準備する!!」
「ふざけろ、この野郎」
「狼狽えるな!! 屑め!! それでも私の助手か!!」
「誰が助手だ、誰が。てめぇが屑だ屑野郎。てめぇのエセ発明なんだからてめぇで材料くらいてめぇで揃えろ」
「そこまで言うならば貴様が揃えれば良いであろうがっ!!」
「なぁんでだよ! 今までの流れでどうしてそうなる!」
「まったく、助手が駄目だと苦労するのは天才の私だな。君は私に相手にしてもらっている事に地にひれ伏し、むせび泣いて感謝すべきだよ。」
ビシッという効果音が出そうな勢いで彼は自分の助手を指差した。
「はぁ…… なんで俺コイツの相手してんだろ……」
光の無い目で宙を見ながら茶髪は呟く。
「さあ!! さっさと材料を揃えるのだ!! 愚図!!」
「はぁ…… 分かったよ。まず何揃えりゃいいんだ?」
どうやら彼は吹っ切れたようだ。諦めた、と言うのも当てはまるかもしれない。
「そうだな、まず、PCのハードディスク、人参、爪楊枝、携帯電話、五百キロの金属の塊、それを置ける机、金属の板、生きたリュウグウノツカイ、そ~れから、光ケーブルだな後はここにある物で代用しよう」
「あっそれらだったら調度全部今日鞄に入れて持ってきてたわ。ほれ」
「おぉ!! 確かに全て揃っている!! 早速取りかかるぞ!!」
散らばった材料を弄くり始めた男を眺めながら茶髪は最初から抱いていた疑問を口にする。
「けどこんなの使ってなにつくるんだ? まったく想像できねぇし創造もできそうにないけど」
「分からん!! しか~し、天才の私が導きだした材料とこの天才の技術があれば過去に発明に失敗した世紀の大発明のどれかへとなるはずだ!!」
その言葉に眉間を揉みながらうめくように茶髪は返事を返した。
「あ~つまり、適当に思い付いた材料をいじってりゃあ何かに成るだろうっつー事か?」
「適当などではない!! この神より授かりし才能と技術により無価値の物に価値をあたえr「分かったから黙ってさっさと終わらせろ!!!」
五時間後
「できたのか」
グチャガチャグチャガチャグチャガチャ
「あぁ完成だ」
そこには何かをやり遂げ、達成感に溢れた一人の人間の姿があった。
「で、何なのこれ」
機械の様な生き物の様な、個体の様な液体の様な、奇妙な音を発する物を何とも言えない表情で指差し尋ねる。
「分からん!!!!」
グチャガチャグチャガチャグチャガチャ
「分からんって、お前が作ったんだろう」
グチャガチャグチャガチャグチャガチャ
茶髪は元気良い無駄にでかい返事に呆れ顔で冷静に返した。
「ファハハハハハッ!! 真の大発明とは未知なのだよ」
「お前なに言ってんの?」
話しているとその"何か"がゴキブリの様な早さで移動し始めた。
グチャガチャッチャッチャッチャッ
「うわっ! おい! 逃げたぞ!」
「おのれ!! 小癪な!! 捕らえろ!!」
こうして人間二匹と、"何か"とのおいかけっこが始まった。
「うおっ箪笥のうらに!」
「ははっ!! 寧ろ好都合!! 袋の鼠だ!! 私は右から、お前は左から行け」
「おっし、こい」
「そりゃぁあ!! がぉはぁぐえ!!」
「何ぃ!? こいつ飛べるのか?」
「おんのれぇ!! これでも食らえ!!」
「おい! バカ!! そんなものつか、ぎゃあぁぁ」
「なぁ、私の助手を良くも!!死ねぇ!!」
「お、お前のせいだろうが……」
「ぐえ!!」
パリん
ぐしゃ
「うわっ!」
ドガン
「うわぁー止めてぇー」
ボキグシャ
三時間後
「はぁ、はぁ、はぁ、」
「さ、さすがわ私の発明品、て、手強かった」
三時間もの戦闘(?)で二人は憔悴しきっている。
「つーかホントになんだったんだあれ、粉々になってもう分かんないけど」
「ふうーむ、才能が有りすぎるのも困りものだな」
「言ってろ、んったく。あーもう、これどうやって片付けんだよ。そこらじゅうに"あれ"がへばりついてるし、壊れた機材の言い訳だってどうすんだよ。はぁ~あ……」
茶髪はこれからまた面倒事が起こるのを想像し頭を抱えしゃがみこんでしまった。
「安心しろ!! 全てを片付けるスゥープゥァーマッシーンを直ぐ、発明してやる!!」
「お願いだからやめてくれ……んったく何でそんなに元気なんだよ」
グチュガチャジュチュチュチ
「は?」
「む?」
嫌というほど聞いたなんとも言えない不快な音の方向を二人は恐る恐る目を向けた、するとそこには粉々になりあちこちにへばり付いた"何か"の欠片一つ一つが元の大きさより明らかに大きく成長していく姿があった。
「…………………」
「…………………」
二人は非常に落ち着いた様子で互いの顔を見つめ合い静かに頷きあった。言葉はいらない、お互い相手が何を考えているのか完全に分かりあっている。
「逃げるぞ」
「ああ……」
二人はとても穏やかな表情を浮かべながら素早く、まるで疾風の如くその場を立ち去った。
ある国にある屈指の学術院が謎の物体に埋め尽くされるという事件が起こった。幸い数日で解決したものの、その物体がなんだったのか、どこから来たのか、誰にも解明出来なかったそうだ。
終わり?
いかがでしたでしょうか。乗りで書いたこの作品。
ここまで大規模にはなりませんが二人はいつもこんな感じで、茶髪はいつも苦労しています。本当にお人好しなんです。
たぶん続きはありません。
6/17修正




