どうやって口説き落としたのかを息子に聞かれて、夫が嬉々として語り出しました
「母様は、どうして父様と結婚したの?」
「えっ」
「父様が熱烈に母様を口説き落としたって、有名な話なんでしょ?」
「なんで生まれる前のことを知っているのよ…。それに私と旦那様は、政略結婚よ?」
「ええ!?父様はあんなに愛ダダ漏れなのに!?」
年頃の息子に言われると、なんとも複雑な気持ちがするというか、なんというか。
「僕が口説いていたのは、本当さ」
「あ、旦那様」
夫は私のそばにくると、すぐに髪を掬ってキスを落とす。
息子も今更何も言わない。
ん〜、こういうところを見ているから、言い出したのかしら。
もう少し子どもの前では、控えてもらった方がいいかしら。
でも、この人がやめてくれるわけないし…。
「何を困った顔をしているのかな、僕の可愛い人は」
「…ちゃんと、政略結婚だって説明してくださいな」
私が少し距離を取ると、笑ってすぐに距離を詰めてくる。
楽しそうに私の表情を探っているのがわかる。
うん、だめね。今も昔もこの人に敵う気がしないのよ。
「僕が一目惚れして口説いていた際に、母様のご実家の林業が街道整備に困っていたから、我が家と手を組むのはいかがですかとお義父様の方を先に口説き落として、婚約したんだよ」
「えっ、父様卑怯。ずるい」
息子の声に、夫は笑顔で答える。
「愛する人のために手段を選ばなかったと言いなさい。それに、変わらず婚約してからもずっと口説いていたさ」
その怖いくらいの笑顔に、息子も引いていますよあなた…?
「…それが熱烈に愛を囁かれていたに、変換されたんじゃないかしら。随分と昔のことなのに、今も言われているなんてねぇ」
「僕の愛は、あの頃よりもずっと深いけれど?」
「うっ、ちゃんとわかっていますよ」
「ええっ、じゃあやっぱり口説き落としたってこと?」
「旦那様の押しの強さに根負けしたのよ」
「そりゃそうだ、父様執念深いもんね!」
「愛情深いと言いなさい」
夫が息子の頭をぐりぐり撫でて、息子から非難めいた声が漏れる。
「いいなぁ、俺も好きな人と結婚したいよ」
「あら、好きな人ができたの?」
「…それは、まだだけど」
「ふふっ、じゃあ大丈夫よ」
「何が?」
「あなたは父様の子ですもの。きっとどんな相手でも愛情深く接することができるわ」
「…俺も執念深いってこと?」
ものすごく嫌そうな声に、思わず笑ってしまう。
「よかったな、僕に似て」
「全然よくない」
「あらあら」
そっくりな親子を見て、今日も我が家が平和なことを嬉しく思うのだった。
了
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