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ワールドロード・sin again  作者: オメガ
序章・ Jacta alea est
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ナイアルラトホテプ

 『前回のあらすじ』

 幻想の地を襲撃した黒幕だと自ら名乗る、見知らぬ鎧に身を包んだ相手と戦うが……それ自体が罠。

 愛用のバイクが窮地を救うも、邪魔をした代償に爆散。破壊者の逆鱗に触れ、相手は灰に。

 仲間達の下へ帰ろうとするが、力尽きて倒れてしまうも誰かに回収され、湖の館へ。

 館に現れた副王ヨグ・ソトースは破壊者と桔梗、如月を黄泉の国へ送り、ゼノ・クライムを迎える。



 無限無窮の宇宙の最奥、沸騰し湧き立つ原始の混沌の中心。あらゆる次元から切り離され。

 時間を超越した無明の閨房(けいぼう)に。ぐぐもったフルートとオーボエ、野蛮な太鼓の連打音が響く中。

 設置された人族専用の手術台へ近付き、宙に浮かす破壊者から脱がせた黒コートが風に舞うが如く。

 宙を舞い、副王へ吸い込まれる形で白衣代わりに着る。余分な裾や袖は丁度合う様に調整されて行く。


「貴方のお陰で彼を見付けれた。感謝するわ──ワールドロード。いえ、ベーゼレブル・ツヴァイ」


 手術台に破壊者を寝かせる形で降ろし、白いTシャツを鷲掴み引き千切ると日本人特有の素肌が見える。

 だが刺し傷や切り傷、爆発傷等多種多様な傷跡があり、日焼けこそないが……とても綺麗とは言い難い。

 胸骨柄から腹部へと指をなぞり。振り返らず、視線は破壊者より離さず背後に居る存在へ話し掛ける。

 すると話し掛けられた存在は不可視の術を解き、蜃気楼が如く揺れつつ神父服の男が現れる。


「個人的には後者を望みます、母上様」


「分割してた分身は全部回収したのね。それで?唯一無二の友にして宿敵(ライバル)の戦いはどうだった?」


「正直──期待外れと言わざるを得ません」


 コーヒーブラウンの短い髪、カソックと呼ばれる黒衣、黒い革靴に茶色い瞳を持つ百八十センチの男。

 ベーゼレブル・ツヴァイ。彼は自身の一部を産んだ副王に対し一礼し母上様と呼び、後者で呼ぶ様頼む。

 破壊者の宿敵であり友たる神父は肉体を複数に分け、様々な形で友をサポートした分身や過去。

 破壊者が倒した魔神王の素体も取り戻し、副王の問い掛けに対しては目を閉じ、期待外れと言い放つ。


「えぇ、復帰直後は。ですがあの戦いで我が友の力は目覚め、此処から更なる二重のシンカが始まるかと」


「それは重畳(ちょうじょう)。後の問題は……彼の融合パートナーが全員居なくなった事かしら?」


「新しい仲間を増やせるか否かは……あの子次第じゃないの?」


 但し復帰直後は……と挟み、更なるシンカはこの後からと続ける。それを聞いた副王は満足げに頷き。

 現時点での問題は前大戦の融合仲間が全員消失した点。最大の強みを失った今、戦力低下が著しい。

 近・中・遠や相手に合わせた対応に加え、人智を凌駕する性能を有するじゃじゃ馬両極端性能を持つ。

 罪の名を冠する追加装甲も今や使えない。それを危惧する副王に言葉を投げ掛ける女性の声が一つ。

 銀髪ストレートの背に届く長い髪に黒い修道女の服を着、深く紅い瞳をその目に宿す人物が現れる。

 右手には成人男性が余裕で入る大きな棺桶を軽々と持ち、副王やベーゼレブルの近くで下ろす。


「とは言っても、あの子の成長は止まる事を知らない。人間としての器も、潜在能力や才能も」


「確かに。過酷な環境や他者との繋がりに叩き上げられ、我々の領域まで急成長するからな」


「這い寄る混沌達の一番弟子たる破壊者と原初の闇にして我が子の一人……強いのはどちらかしらね?」


「「勿論──(あの子)()。んんっ?!」」


 彼女こそは這い寄る混沌こと、ナイアルラトホテプ。前大戦では最後まで共に戦い抜き。

 破壊者の潜在能力や人間としての成長を傍で見守り続けた。故に天井知らずの成長と言えば。

 宿敵故、何度も戦ったベーゼレブルもその言葉に賛同。その強さや成長の秘密は環境や人間関係と言う。

 共通の人物を賞賛する二人に、手術中の副王が議論・戦争の種を投下。それは雌雄決しがたい内容。

 当然自身や愛弟子だと即答する二人。食い違う回答にお互い睨み合い答えた理由を語り合う。


「例え貴方が咎める罪や悪だとしても──貴方に救われた命は如何なる善人が救う命よりも、遥かに多い」


 右手で破壊者の心臓から虹の七色を持つ光球を取り出し──両手を向ければ、左右へ引き裂き分解。

 赤・橙・黄・緑・青・藍・紫・透明の八色に。例え己を悪と認識し、咎められる罪を背負ったとしても。

 善人が救済を行うよりも。救った命の数は計り知れない程に多く、人生すら変える程の影響を与えた。

 そう話す副王の背後に、四神の面を被る子供達が近付く。前大戦で幾度も彼に問い掛けた、魔皇の夢。

 すると子供達は青・白・朱・黒の光球となり青は黄・橙と。白が青・藍、朱に赤・紫、黒へ緑と──

 ナイアが持って来た棺桶から飛び出す紅蓮の球が混じり合い、透明な球に戻ると心臓へ浸透して行く。


「イヴはアダムの肋骨から創られ、アナタは……アダムの心から、不死鳥の如く再誕の時を迎える」


「繰り返される罪。繰り返される歴史。シン世界へ生まれいずる命に。蕃神よ、祝福の音を奏でなさい」


「あぁ……願わくばどうかその力で我が友を救い──是非とも我々を絶えず、楽しませてくれたまえ」


「破壊者の絶対なる従者にして最強の牙──例え千度泣こうと、主の為だけに仕え続けなさい」


 聖書にあるイヴ誕生と紐付け、虹の光を放つ心臓を三角形に囲う副王、修道女(シスター)、神父。

 外見は聖職者と信者だが、役職と中身は真逆。邪神であり、再び世界に混沌と破壊を与える為の儀式。

 新たなる命の誕生に。修道女姿の這い寄る混沌が狂った様に楽器を奏でる蕃神達へ、祝福の音を吹かし。

 神父姿のベーゼレブルは、新たなる命が破壊者と共に自身らを楽しませる活躍を求め、手を包み祈む。

 破壊者の心臓へ副王の華奢な両手が伸びると、赤・橙・藍・緑。四色が手を繋ぐ様な光輪に吸い込まれ。

 その光景はまるで帝王切開。掬い上げられた赤子──否。光の球体は副王の向かい側へ静かに降りる。


「Happy Birthday──TETRA(テトラ)-FANG(ファング)


「して、我らが母上様。この新たなる命に、如何なる名を与えましょうか」


「破壊者の絶対なる牙にして盾。決して裏切らず、心に寄り添う者。どんな名前が良いかしら?」


 その場から動かず、見下ろしながら誕生を祝い、四つの牙と言う意味深な言葉を投げ掛ける副王。

 徐々に収縮し、人肌が見えるとナイアは近付き黒いローブを被せて屈み、相手へ右手を差し出す。

 相手は何が起きたのか分からず、辺りを見渡せばナイアの手を取り、震える足で立ち上がる。

 その姿はまさに、親の手を借りて立ち上がろうとする幼子も同然。そして目にする……解剖された男を。


「…………」


「TETRA-FANGの千泣(せんな)。それが貴女の名前であり、二つ名よ」


 誕生した命にどんな名前を与えるべきか?悩む二人とは対照的に、ローブに隠れた顔から頬を伝い。

 流れ落ち続ける涙。それが悲しみなのか、喜びなのか。どの感情から来る涙かは邪神達には分からない。

 されどその泣き続ける様子を見たナイアの口が自然と動き……名前と二つ名を相手に与える。

 相手は承諾する様に頷くとローブを掴み、変化させて黒いロングスカートのメイド服と白いエプロン。

 顔を隠していたローブもホワイトブリムに変化。首に届く白髪と右が赤と緑、左は藍と橙の瞳へ。


「TETRA-FANGの千泣。成る程、上手い名付けを方をする」


「まあね。それで?目的となる時代の状態はどうなってるの?」


「今回の目的時代は西暦が終わり、sin(シン)歴と呼ばれる歴史なんだが……融合獣が確認出来た」


「融合獣?今更ね。貴方なら朝飯前の相手でしょうに」


 ナイアが付けた名前と意味に納得し、素直に褒めるも気にも留めない様子で返せば、目的時代を聞く。

 幻想種との戦争に負けた人類史の西暦は終わり、双方の罪を忘れない様にする意味も兼ねた新しい歴史。

 sin歴が始まったそうだが……融合獣が現れたとベーゼレブルは語る。されど副王が言う通り今更な相手。

 進化と強化を繰り返した破壊者や敵を喰らい続け、成長し続けたベーゼレブルの敵ではない。

 そう思っていたら。ベーゼレブルは静かに首を横へ振り、そうではない。と言葉ではなく行動で示す。


「あの時代の融合獣は、自ら罪を取り込んでいる。その強さは核となる存在次第で更に強さを増す」


「……現れるのは融合獣だけなの?」


「察しが良いな。テラー化を利用した恐怖心より生まれる未知のΧ(かい)獣が人工的に創られている」


「成る程、『破壊者』が必要な理由が見えたわ。それで──アンタと副王、どっちから殺されたい訳?」


 sin歴に現れる融合獣は如何なる理由・方法かで、罪を取り込み強化されていると話すも。

 その強さは個体によって全く異なる。右人差し指を唇に軽く当て、何かを察したナイアが訊ねると。

 何度か出て来た『テラー化』と言う現象や恐怖心を利用し誕生する、未知なる怪物──Χ獣が存在する。

 何故破壊者が必要かの理由を察した途端、ナイアの体から黒・紫・赤。三色のマナを二人へ吹き出し。

 顔が燃える三眼化し二人を睨むが……副王は涼しい顔、ベーゼレブルは真っ青になり滝の如く汗を流す。


「ま、待て!こ、これには深い事情があってだな!」


「へぇ~……その深ぁ~い事情って言うのを、是非とも聞かせて貰おうかしら?」


 一歩。また一歩と近付いて来るナイアに両手を向け、静止を促すと同時に弁解しようと話し掛ける。

 それを聞いて燃える三眼化を解くも。その下にある笑顔は許す気等微塵もなく、歩みも止めない。

 それは何故か?答えは至極単純。一つ、唯一無二のお気に入り。二つ、前大戦の元凶は目の前の神父。

 三つ、今回の原因もベーゼレブルの分身体であるワールドロードが破壊者を求め、彷徨ったが為。

 四つ、それが原因で元の生活を取り戻した破壊者が今回の黒幕に狙われ結果死ぬ事に……以上。


「何度っ!!あの子に!迷惑を!!掛ければ!済むのよ!このッ、元凶はぁぁぁ!!」


 某奇妙な冒険でゴミ収集車へ叩き込まれた元医者の如く。約三十秒の間、執拗に繰り返されるは……

 ナイアによる百二十二連発の高速蹴り。副王はその間に何処かへ電話を掛け、話している模様。

 しかし……彼女の怒りは至極当然な為、ベーゼレブルや副王も反論が出来ない故──敢えて受け入れる。

 漸く気持ちが落ち着いたのか。蹴る動きを止め、手術中の破壊者へ悲しげな表情を向け、頬に触れ。


「ごめんね。十中八九新しい変態が貴方の前に現れると思うけど……私が合流するまで耐えてね」


「新しい変態って、どの口が──ああぁぁぁ!?」


「黙りなさい、重度の辛党戦闘狂の変態!」


 謝罪と新たな苦悩が襲い来るだろうが、自身が駆け付けれる時まで耐えて欲しいと呼び掛ける。

 が……空気を読まなかったのか、それとも耐え切れず倒れ伏したままツッコミを入れたのか。

 口を出した途端、右足で左顔面を徐々に。されどゆっくりじっくり、力を込められ痛みの余りに叫ぶ。

 そんなこんなが続いた頃。副王の方も電話が終わった様で、ナイアとベーゼレブルに向き直る。


「ハスターも巻き込んだわ。さあ──私達も罪の歴史へ向かいましょう。魔王誕生は見逃せないもの」




『ベーゼレブル・ツヴァイの弁解内容』


「実は前大戦でワールドロードに取り憑いていた虫ケラが破壊者に逆襲を誓い行動していると知ってな。

これはイカンと思い、破壊者の居る世界軸を探し見付けた分身体を回収したのだが……」


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