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ワールドロード・sin again  作者: オメガ
序章・ Jacta alea est
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罪をもう一度

 序章・第一話は前作ワールドロードの最終章・第二十話の後から。序章・特定の話数からは第二十一話へ続き、その先へとなる各章に進む物語。

 今から──約一万二千年。西暦二千十二年十一月十日。双子月より並行世界を含む全宇宙平和を行う者。

 魔神王が完全復活。融合計画に反旗を翻し、挑む者達。先陣を駆ける彼は心強い仲間や家族と共に。

 長き旅路を越え、魔神王を撃破。しかし彼の肉体は既に限界を越え、強大な力の対価と契約により消滅。

 その後、世界にたった一年足らずの平和が訪れ……そして今。人類は自らの意思で罪をもう一度犯す。


「滅ぼせ!人外等と言う異物を──この星から一匹足りとも残すな!!これは天皇陛下最後お言葉でもある!」


「オォォオォォォッ!!」


 西暦二千十三年十一月十日。人類と夢物語にしか登場しなかった空想の産物、亜人や魔族と言った存在。

 幻想種が各地で現れ、突然の事に混乱する双方が代表を決め、対話を行った結果──十二月二十五日。

 人類対幻想種の戦争が勃発。小さな島国から世界へと戦火は広がり、雷鳴轟き強風が吹く曇り空の下。

 荒れ果てた大地。荒れ狂う海と暗雲に包まれた空。この世の終わりに響く、軍服を着た男司令官の命令。

 それに共鳴する様に兵隊達は各々銃器や刀剣、各国の旗を掲げて猛々しい雄叫びを上げて正面へ進む。


「これは我らの領地、存在を守る為の戦!!全員、我らが悪党(英雄)の為にも挑めぇぇ!」


「ウオォオォォォッ!!」


 青いポニーテールと瞳が特徴的な青き龍神の元姫、青空遥は白を基調とした和風鎧を纏い。

 右手に持つ白き杖を暗雲へ掲げ、契約により消滅して存在すら忘れ去られた筈の彼を理由に檄を飛ばす。

 エルフやドワーフ、獣に天使と悪魔。多種多様な亜人・種族達が握り拳を上げ、雄叫びを上げる。

 幻想軍も進撃し──人類は武器を持つ反対の手に持った盾を主軸にぶつかり、押し込もうと意気込む。

 地上では双方が押しては押され、制空権を奪う為に空中で戦闘機相手にドッグファイトを行う幻想軍。


「畏まりました大統領。我が軍の融合獣軍団諸共、亜人達に対する新兵器の投下を開始!」


「了解。太陽光発電式衛星兵器・マスドライバーに告ぐ。地殻破壊爆弾Z・(ゾーン)三七五(さんななご)六四(ろくよん)式……投下!!」


 魔神王と反逆者の戦い。光闇大戦により、現実と幻想の境界が大きく揺らいでしまった。その結果……

 人類から幻想種に対し、一方的な嫌悪感と畏怖の念を抱き──第三次世界大戦が始まってしまった。

 されど幻想種は強く、一般的な常識が思った以上に通用しない。そこで目を付けたのが……前大戦の技術。

 エックスは長い年月の間、数多くの敵達を倒した。どの勢力も人類には持て余す技術力と科学力を誇る。

 中でも融合獣の力は凄まじく、人類側の敗北危機から幻想種側の亜人混成軍団を一気に押し返す程。

 融合獣と成り自国を守ろうと奮闘する自軍も巻き込み……宇宙(ソラ)から落とされた一つの黒い円錐形。


「見ろ!!我々人類の勝利──っ!!」


 地殻破壊爆弾Z・三七五=六四式。それは陸海空を幻想種の亜人達により、制圧された人類に唯一残った。

 宇宙へ打ち上げた太陽光発電式衛星兵器・マスドライバーから放たれる、人類最後の切り札である。

 文字通り地殻を破壊する威力を誇り、大気圏からの降下加速と先端部の掘削機で即地殻まで掘り進み。

 爆発させた結果──地球(ワールド)の大陸は八割が崩壊。許可を出した国も地盤崩落に飲み込まれ壊滅。

 第三次世界大戦は人類の無条件降伏により敗北。幻想種の温情で、絶滅危惧種に指定され約五千十年後……


「オラシオン。ヴォール王国の守護として祈りの名を冠する、少数精鋭の最強メイド部隊と聞いていたが」


「ッ……まさか、前大戦の生き残り?!だとしたら、御礼参りに来たのかしら?」


 西暦七千三十三年、十二月二十五日。ヴォール王国の聖夜に雪降り積もる街中──午後五時五十五分。

 足首程まで積もった人気の無い通りに雪を踏み締め、肩で息をする紫髪のメイドに近付く足音が一つ。

 魔導電灯に照される茶色い革の長靴、黒いローブを纏う存在は彼女を知っている口調で話し始め。

 オラシオンとして、自身らが認めし王が帰還するまで、ヴォール王国を護らんと残りし者……琴音が返す。


「お礼参り?ふっ──ある意味正解であり、不正解でもある。君達の王は……我々が既に対処したがね」


「馬鹿ね。あの坊やはもう、長い旅路を終えてるのよ?生きている筈がないわ」


「フッ。もう一度言うが『我々が対処した』のだよ。魔王・琴音。これがその証拠だ」


「こ……これ、は……」


 お礼参りの意味を半分正解・半分不正解と言い、今や消えた筈の琴音達が慕う王を対処したと発言。

 しかし消滅した者を対処する事等不可能。現実を突き付けるも、これが証拠だと目の前に投げられた物。

 それは何の変哲もない、何処にでもあるたった一枚の写真。なのだが──問題は写っている人物と結果。

 消滅したと思っていた主人……なのだが。照明がなく、真っ暗な狭い部屋で首を吊っており全く動かない。

 大切な物を扱う様に、両手で写真を掬い取るその顔は──溢れ出る涙と、口を開いても出ない表情。


「己が使命を終え、元の世界へ戻ったかの者は自ら命を断ち、我々に出来たのは」


「……いつの世も──そうなのね。何度世界を救っても、世界は救世主を救わないって事実は」


 戦意は無い、と言う意思表示か。謎の人物は直ぐ側で崩れ落ちている琴音に背を向け、事情を話す。

 彼女はポツリと呟き、世界の悪循環を改めて痛感する。世界を救っても、世界はその人物を救わない。

 フラりと揺れ立ち上がれば雪を踏む足音に気付き、謎の人物は振り返ると琴音に対して右手を差し出し。


「我々『ディクテイター』と共に世界を──人類の未来を破壊する気はないか?」


「…………アンタ、名前は?」


「ゼノ。ゼノ(異形)クライム(の罪)──ディクテイター(独裁者・暴君)の総帥だ」


 前大戦を最前線と後方支援で戦い抜き、ヴォール王国が誇る最強メイド隊が一人……琴音をスカウト。

 一度思い悩む様に顔を背け、数秒の間目を閉じて考える。今の自身では敵わない相手からの悪魔の囁き。

 再び顔を向かい合わせ、右手で差し出された手を優しく払い、立ち上がりながら目の前の存在に対し。

 名前を問う。訊ねられた相手はローブに付いたフードを外し、隠れた素顔を自ら晒し自己紹介をする。

 新たな敵……ディクテイター。しかもトップが直々に、自身を勧誘しに来た事にフッと鼻で笑い、微笑む。


「ブッ飛んだクリスマスプレゼントね。……条件次第よ。アンタ達の仲間になるのは」


「Good!レディーが寒空の下で体を冷やすものじゃない。暖かく静かな店で事細かに話すとしよう」


 不適な笑みを浮かべ。とんだプレゼントだと呟き、メイド服のスカートに付いた雪を右手で払い──

 横目で、相手を睨み付けながら。仲間になるのは条件次第と、冷たく言い返すのだが……

 ゼノ・クライムは払われた右手でグッドサインをし、冷たい言い方に対して体を冷やさない様。

 暖房の効いた店で話そうと勧め、エスコートする様に自身が先頭を進む。その顔は笑顔そのもの。

 だからこそ、琴音は警戒心を解かず緩めない。自身らが認めた王が顔で笑い、心で泣く人物故に。

 地球でそんな事が起こる数ヶ月前。宇宙・牡牛座プレアデス星団の恒星セラエノの第四惑星では……


「大変大変!大変大変!!」


「大変大変大変態!!変態変態!」


 巨石で造られし壮大な建造物、セラエノ図書館。其処は旧支配者が旧神から盗み、隠した知識の書物場。

 図書館の名に相応しく、様々な知識や歴史が書物として保管され、地球から四百万光年離れた場所。

 邪神ハスターの支配地。そんな場所で右往左往するは、黄色い触手に蝙蝠の様な翼を生やす謎生物。

 其処へ廊下をハイヒールで歩く様な音を鳴らし、謎生物へ近付き頭部へ人間らしき手を置く人物が一人。


「落ち着け。何が起こったか、一つずつゆっくりと話せ」


「は……ハスター様!!実は──」


 その人物とは邪神ハスター。黄色い皮膚をローブ同然に纏い、人間で言う青年と同じ容姿。

 前髪は目元、後ろは肩にまで届くコバルトブルーの髪。レモンイエローの瞳が相手を捉え、話し掛ける。

 主人の存在に大層驚いた為か。慌てふためく感情は落ち着き、セラエノ図書館で発生した問題を話す。

 此処で起きた問題。それは──盗難。勿論宇宙規模の図書館故、セキュリティや警備は常に万全。

 それでも起きた。当然だろう。宇宙中の知識が集結するのだ、欲しがる存在は腐る程にいる。


「何の本が盗まれた?物と場合によっては、犯人に対し相当厳しい罰を与える必要があるが」


「は、ハスター様が毎日愛読されている本……ワールドロードを八冊、全巻に御座います」


「何?!アレにはあの惑星(ほし)の最重要機密、オメガファイルの内容が事細かに書かれているんだぞ!?」


 何の本が盗まれたと呆れた様子で聞けば。彼自身が認め、再戦を求めた相手が戦い抜いた物語にして。

 全邪神の父、もしくは原点・起点とも言える盲目白知の邪神・アザトースが記録し、納めた希少な本。

 全八巻を盗まれたらしく。ハスターとしても『アレ』の重要性、地球(ワールド)に置けるパンドラの箱な上。

 彼から言えば、曾祖父に該当する存在が直々に記録し納めた本。それの事実が、彼にとっては大問題。

 謎生物達に背を向け、両手で頭を抱え屈む程に重大なミス。人類的に言えば、曾祖父の大切な物を。

 当事者ではないが、間接的に紛失したも同然。頭を悩ます彼に代わり、鳴り響く黒電話を取る謎生物。


「はい。はい。分かりました。ハスター達、お父上様……改め、副王様からお電話です」


「ヨグソトス先輩から?もしもし、お電話代わりました」


 通話相手と話し、相槌をすると主人であるハスターへと受話器を渡せば、もう一匹が黒電話を持ち。

 黒電話本体が受話器に引っ張られて、宙ぶらりんにならない様、触手を伸ばし高さを調節中。

 電話対応者が代わった旨を伝えた途端……ハスターの顔色はみるみる青く、顔には冷や汗が次々と流れる。


『もう一度言うわよ?今は蕃神達、演奏隊がなんとか眠らせてるけど……最悪、宇宙が崩壊するわよ?』


「…………ッ!!」


『どうするの?私達お気に入りの彼は社会に押し潰されて、自殺してしまったのよ?』


「つ……詰んだ……」


 返事が無い為、聞こえていなかったと判断し、もう一度アザトースの居る玉座で起きている現状を話す。

 ぐぐもったフルートとオーボエ、野蛮な太鼓の連打が副王の声と共に受話器越しで聴こえてくる。

 魔皇アザトースの起床。それは、全宇宙の崩壊にも繋がる最悪のシナリオ。それだけは絶対に避けたい。

 一瞬、脳裏に過る解決案。自身が認めた彼に協力を仰ぐのはどうだろう?此方側から消滅したが。

 彼自身の世界へは戻った筈!と思考するも……副王から伝えられた事実が、最後の希望と言う灯火を消す。



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