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15.夢醒

 芳しい花の香りと心地良い潮騒の音が、意識を表層に導いてくれた。


 力の代償として長い眠りに就いてから、およそ八年ぶりの覚醒だった。


 休息のさなか、無防備になった自身を守る為に作り上げた鉄の檻は、瑞々しい若葉と海鳥の羽根に姿を変えている。


 未だ夢見心地の眼に、二人の女性の姿が映る。記憶の中の印象とは大きく異なるが、二人とも見知った顔だった。


 一人は、知的な面影に滑らかな黒髪を携えている。以前見かけた時よりも背丈が伸び、長かった髪も肩のあたりで切り揃えられていた。


「始めまして。……ようやく、あなたとお話する事ができました」


 黒髪の女性は歓喜に満ちた声で言った。応えるように、こちらも微笑みを返した。


 もう一人は、相変わらず派手なオレンジ色の髪を揺らし、雨のように泣いている。歳を重ねて随分と大人びたが、あどけない雰囲気も残ったままだ。そう思ってしまうのは、この子の母親だからだろうか。


「夜明けを知らせに来たよ、母さん」


 嗚咽混じりの声が少し可笑しかった。徐ろに腕を上げ、愛娘の涙をひと粒掬い取る。


「おはよう、私の太陽」



(完)



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