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父親像

 

 あの日から、匠を寝かすの日課になった。可愛い寝顔を見ながら、この子にとって最高の父親像とは何かということを考え続けた。

 何をしてやれるのか、何を教えてやれるのか、何を助けてやれるのか、必死になって考え続けた。しかし、世間一般に言われているようなことしか思いつかなかった。正しい人の道を教えるとか、可能な限りの教育を受けさせるとか、やりたいことを思う存分やらせてあげるとか、困った時には手を差し伸べてやるとか、そんなことしか考えつかなかった。


 子供を育てるということの意味を本当にわかっているのだろうか? 


 自らに問うたが、〈まったくわかっていない〉という言葉が胸の奥から湧き上がってきただけだった。

 そもそも自分はまだ大人になり切れていない。というより、ガキなのだ。視野が狭いし包容力もない。自分のことで精一杯のガキなのだ。 


 ガキが子育てなんてチャンチャラおかしいよな、


 自嘲的な笑いしか出てこなかった。〈この子に見せる背中はまだない〉と思うと、絶望的な思いに囚われた。


        *


「お兄ちゃん、決めてくれた?」


 日曜日の昼過ぎに匠を連れて実家に行くと、玄関で鉢合わせした妹に明るく声をかけられた。


「いや、まだ……」


 口を濁すことしかできなかった。


「そう……」


 がっかりしたような表情に変わった。


「わるい……」


 逃げるように背を向けて、靴を脱いだ。



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