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光と波  作者: 善文 杏南
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1-3

 廊下は暗い。

 川の湿った匂いがする。窓の一つが開いていたので直人が閉めた。この時間はいつも見回りをする。

 二階から大階段を降りて円形のホールを囲む廊下を一周歩く。

 戸締りの確認が済むと舞台裏に入る。見上げると鉄製の格子状の天井が見える。そこに滑車が設置されてワイヤーが巻かれている。ワイヤーにはバトン[ 幕や大道具、装飾品を吊り下げるパイプ]が吊るされて沢山の照明が取り付けられている。

 階段を上がる。

 公演で使う水槽は今は天井に収納されている。魚が普段過ごす水槽もそこから少し離れた所にある。

 舞台の上は広いけど窓がなくて暗い。今は作業灯も点いてない。ここは昼間でも五メートル先は真っ暗である。

 床は格子状なので注意していないと足が隙間に嵌まってしまうし場所によってはそのまま舞台まで落ちてしまう。

 魚の名前はキキという。直人の養父が付けた名前である。

 キキが泳いでいる水槽の周囲にはカーテンが張り巡らされている。直人は石油ストーブに火をつけた。

 板を敷いてあるのでここで足を踏み外す心配はない。歩は柱に凭れて座り込む。

 直人はキキの餌の準備をする。

 作業灯が点いて辺りが急に明るくなった。歩がカーテンから顔を出すと龍水の低い声が下の舞台から聞こえた。ホールに響く。

「歩! 直人も、降りてこいよ、後片付けするぞ」

 いつの間にか客席の照明が点いている。

 見下ろすと舞台の下に龍水が見えた。モスグリーンのジャージ姿である。履き古したアディダスのスニーカーは踵が潰れている。

「直人は先に上の装置、歩はここに掃除機な。俺はロビーと外を見てくる」

 龍水は大声で言うとすぐにホールから出て行った。

 公演では龍水が照明と音響を担当している。だけど演者の一人でもある彼が全て一人でというのは不可能なので彼が指揮を執って力仕事や簡単な操作は直人や姫氏原が手伝う。龍水の指示に従って重い機材を設置したり外したりしているせいか彼らは皆骨格からして逞しい。



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