第38話 量子テレポーテーション
「そうよ。明日がXデー。世界中のアンドロイドが一斉にコントロールされ、人間に殺戮を起こすと確かな情報があるの。私達が阻止しようとしている事を軍は把握していた。ショーンの元、アメリカに向かう移動手段を邪魔されたのよ。飛行機が意図的に欠航したり」とイーラン。
「そうだったのか。俺は一人で行くしかなかったんだな」
「すまん。LyLyを同期していて、エリア51に潜入はできたようだが、内部でLyLyが停止したね」イラックが言った。
「LyLyはカフェインを必要としていて、コーヒーキャンディーを舐めてたのだが、それもなくなってダウンしたようだ」
「エネキス博士。脳内PCはカフェインを必要とするのですか?」イラックが聞いた。
「ふむ。カフェインはリパーゼという酵素を活発にし、体脂肪をエネルギー源として利用しやすい遊離脂肪酸に分解するが、興味深い事柄だ。脳内PCにカフェインか・・」
「話を戻そう。ショーン。エリア51の内部はどうなっていた?」イラックが言った。
「俺はアンドロイドが300体ぐらいある部屋を見つけた。そいつを爆弾で爆破した。そして、メインコンピューター室に潜入できたんだ。そして、爆弾をメインコンピューターに2個セットした所で捕まってしまった」
「なんと!爆弾を!?」イラックが興奮した。
「希望があるじゃない!」イーランが言った。
「その爆弾を詳しく知りたい。ショーン」エネキス博士が言った。
「爆弾はすべて使ってしまったが、その遠隔操作のリモコンはあるよ」ショーンはエネキスにリモコンをみせた。
「ちょっといいかね。私の脳内PCを使うよ」エネキスは眼球アイで脳内PC(LyLy)に分析させた。
皆は見守った。
「この爆弾には量子通信モジュールが搭載されている。起爆信号は量子鍵で暗号化され、量子もつれ粒子を通じて送信できる。通信は一度限りで、傍受・改ざんは不可能。起爆者は世界のどこにいても、量子リンクさえあれば爆破可能だ。よし、量子テレポーテーションによる信号送信を試みよう」
「博士。量子テレポーテーションによる信号送信って?」イーランが言った。
「量子テレポーテーションは「物体の転送」ではなく、「量子状態の転送」です。つまり送信者が持つ量子状態(情報)を、物理的に移動させずに遠隔地の受信者に“瞬時に”再現させる技術。セキュリティの強いエリア51にはうってつけだわい」
「どうやるんだ?」ショーンが言った。
「ここにいるすべての脳内PC(LyLy)を一斉に起動し、量子テレポーテーションする。爆弾と起爆装置は、事前に量子もつれ粒子ペアでリンクされている。出来るさ」
「みんな!ここに集まって!脳内PCを起動して」イーランが言った。
 




