第33話 妄想
時刻は14日目の9:15
ショーンは保護室で朝食を終え、ぼんやりしていた。
まさか、このままこの病棟を出れないのか。まずい事になった。なんでドラミも起動できないし、テレパシーも使えないんだ。なぜなんだ。
その時、主治医のロイス・ハリーと看護師が入ってきた。
「やあ。ショーン。おはよう。良く眠れたかい?」
「ああ。大丈夫だ。検査結果はどうなったんだ?」
「今、脳外科医と詳しく分析している所だ。しかし、脳内にコンピューターらしき物は見当たらなさそうなんだが・・・」
「脳の中に埋め込んだりはしてないんだ。起動するにはカフェインが必要だ。コーヒーを持ってきてくれないか?起動してみせる」
「分かった。すぐ持ってこさせよう」
やった!コーヒーが飲めるぞ!ショーンはしめたと思った。
しばらくして看護師がホットコーヒーを持ってきた。
「さあ、ショーン。飲んでくれ」Dr.ハリーが言った。
ショーンはホットコーヒーをグビグビ飲んだ。至って普通のコーヒーなんだろうが、久しぶりのコーヒーは美味かった。ショーンは一気に飲み干した。
「どうだ?ショーン。起動できそうかな」
ショーンはドラミを呼んだ。ドラミ?起動してくれ。LyLy!
LyLyは反応がなかった。
「おかしい。カフェインが足りないのかも」
「では、医療用カフェインを持ってこよう。カフェイン水和物を0.6g持ってきてくれ」
Dr.ハリーは看護師に言った。
医療用カフェインが運び込まれた。ショーンは服用した。
「どうだ。ショーン。しばらく立つが、起動できそうか?」
ドラミ?おいドラミ?
反応はなかった。
「おかしい。反応がない。起動しない」
「ショーン。今、君が毎日飲んでいる薬は妄想や興奮などを取る薬だ。テレパシーや脳内PCなどは妄想だったのではないか?良くあることだ。つまり・・君は統合失調症だろう。それならテレパシーや脳内のパソコンなどと会話することは変ではない」
「妄想だと?テレパシーとかが・・」
「テレパシーもこの病棟で薬を飲んでから出来なのだろう?ショーン」
「・・・たしかにこの病棟に来てから出来ない・・」
「そうだろう?君の妄想だったのだよ。まあ、もうじき昼食だ。また来るよ」
ハリーと看護師たちは退出した。
妄想だと?長年のテレパシーが?しかし、ドラミの指示でエリア51の内部構造が分かったじゃないか。ハッキングも彼女がしたじゃないか!アンドロイドと人間の識別も間違ってない。妄想なんかじゃない!
ショーンはひどく困惑し、何もない白い壁の保護室で頭を抱え込んだ。




