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ウェルキエル学院のセプテット  作者: 葉月エルナ
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第14話

 中間試験前日、学生寮のとある一室にて。


「全員、当日の流れは頭に入っているわね?」


 ニーナは自室に集めた五人の顔を見渡しながら最終確認を行っていた。


「えぇ、無論ですわ。私とリーヴィアでB地点を、あなたとユーフィアでC地点を押さえる。手堅い戦略ですわね」

「こっちは私がいるから最悪の場合離脱できるけど……そっちは本当に大丈夫なんでしょうね?」


 スピカは自信に満ちた瞳で頷き、リーヴィアは不安げな視線をニーナに向ける。


「心配しないで。ユーフィアとの連携もある程度は形になってきたし、並大抵の相手には引けを取らないと断言するわ。万が一に備えて逃走ルートも確保済みよ。ね、ユーフィア」

「……は、はい。わ、私も、頑張ります……!」


 既に緊張し始めているらしいユーフィアも健気に敢闘精神を示してみせる。


「飛び入り参加の二人も、大丈夫よね? ルドウィンがいるから、あまり心配はしていないけれど……」

「あぁ、当日ボクたちは斥候に集中して極力戦闘は避ける。それでいいんだろう?」


 ルドウィンの能力は領域展開型。自身を中心とした半径一キロメートル以内の全てを把握することが可能な能力だ。建造物の構造は当然として、どこに誰がいるのか細かい情報まで得ることができる。


 戦闘能力こそ他メンバーに劣るものの、そこはライオネルが上手くカバーしてくれるだろう。そのための二人一組である。


「俺はルドウィンと行動してりゃいいんだよな?」

「えぇ、万が一交戦になった時はあなたが敵を引き付けて時間を稼いで。もちろん、勝てるなら勝ってくれても構わないわ。でも無理そうなら私かスピカ、近い方で対処するから」


 ライオネルの異能力は自己再生。常人ならば即死レベルの傷を負っても数分程度で回復できる、というものだ。


「とはいえ、治癒限界……。この制限は痛いわね」


 ライオネルの自己再生には【治癒限界】という再生限界が存在する。治療する傷の大きさによって必要となるマナの量も変動するため、無駄遣いを続けると体内のマナを使い果たすことになりかねない。必然的にマナの節約が求められるのだが使いどころを見誤ってしまえばそれまでだ。


「でもよ、生徒同士でやり合う分には問題ねぇんだろ?」

「それはそうだけど、回復能力に頼った被弾が前提の戦術は通用しないのよ? まぁ、まず戦闘にならないのが最善なんだけど……」


 ライオネルのバトルスタイルは良くも悪くも異能力頼りだった。一朝一夕で抜ける癖ではないため、参謀を担当しているニーナとしては頭を抱えるしかない。


「明日はボクもいるんだ、こいつがマナを無駄遣いしないようにしっかり見張っておくさ。それより、他人の心配ばかりして自分たちが足元を掬われないように気を付けろよ」


 皮肉げな口調はそのままに、ルドウィンから激励の言葉が飛ぶ。続けてスピカも口を開いた。


「そうですわよ。色々あって神経質になるのも分かりますが、気楽にいきなさい。何かあれば手を貸すと言ったはずです」

「アンタらに脱落されると私たちも困るの、しっかりしてよね」


 手元のティーカップに口をつけつつリーヴィアが素っ気なく言う。そんなルームメイトの様子に苦笑し、スピカが小声でニーナに耳打ちした。


「ここだけの話、あの子もあなたたちのことは気にかけていたんですのよ。もちろん、私もそうです。口下手なせいで理解されにくい子ですが、悪く思わないでくださいませ」

「……わ、私も、できる限り頑張りますから……!」


 ユーフィアもこの流れに乗るように声を上げた。


「そうね、試験は明日から一週間。全員で生き残りましょう」


 力強く頷く友人たちの姿を見回し、ニーナはチラリと部屋の扉へ視線を向ける。部屋の外ではセヴラールが、この会話を聞いていた。試験前に声をかけておこうと思って足を運んだのだが、どうやらその必要はなかったらしい。


 漏れ聞こえてくる少年少女の喧騒に背を向けて、セヴラールは一人歩き出す。ニーナがいるとはいえ、あの輪の中に入っていくことは今のセヴラールにはできなかった。

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