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6 そんなに怒らなくっても

 私はお湯から上がり、新しい部屋着を着せて頂きましたが、まだクララは叱られていました。

 「あのリリア私は怒っていません、クララは悪気があったわけじゃありません、それ以上叱らないでください」

私が言うと、リリアは漸く叱る事をやめてくれました。

 そうは言っても、部屋の中は重苦しい空気に包まれていて、嫌な感じです。

 私は床に座り込んでいるクララの傍に行き、しゃがんでクララに言いました。

「私は怒っていないわ、これからも私のお世話をお願いします」

クララは、泣きそうな顔で顔を横に振りました。

「お嬢様、すじまぜんでじた」

クララの目から大粒の涙がポロポロと落ちて、私はどうしたら良いのかと困っていると目の前にぴょんと何かが現れました。

 さっきのクモです。

「あら、今日は良く会うわね、どうしたの?」

クモは私の方を指さしたり、クララを指さしたりしていますが、私が人間の大きさに戻ったせいなのか、クモの言葉は聞き取れません。

 困ったわ、なんて言ってるのか分からない。

「ごめんなさい、あなたの言っている事が聞こえないの、さっきは小さかったからちゃんとお話し出来たのにね」

そう言いましたが、クモはますますぴょんぴょんと跳ねてクララの上に乗って、前二本の腕で私とクララの顔を交互に指さしています。


う~ん、なんて言ってるんだろう、また小さくなって話を聞いてみようかな、クララに針を刺して貰えば元に戻れるんだしと思って、「クララ」と声を掛けてクララの手を握りました。

「分かりました」クララが言って手を握り返してくれました。


セリナが、「あ、クモが何か言っているみたい」と小声でつぶやきましたが、周りの誰も気が付きませんでした。


 私はクモさんに魔力を向けて軽く持ち上げました。

次の瞬間、私とクララの二人が小さくなっていました。


「えっ」


 「えっ」


  「おや、二人とも小さくなったんだね」


そういえば百足さんはカッコいい男の子だったのに、クモさんは・・・劇場の舞台の中から出てきたような美丈夫で、切りそろえられた短髪のブロンドがキラキラとして綺麗で、服の上からでも分かる鍛え上げられた筋肉が眩しい渋いオヤジでした。狩人のような生成りの服を着ていますが、絶対職業は狩人じゃないわ、所作も美しくてお父様よりもカッコいいし、この方貴族が平民の格好をしている感じがします。

さっきまでは普段のクモさんだったのに・・・


 クララは、クモさんを見てボーっとしています。


小さくなってしまった私たち二人を見て、メイドさん達は驚きの声をあげました。「きゃぁお嬢様・・・」


リリアが言いました「お嬢様、なんでまた小さくなったのですか、クララあなたまで小さくなって、何を考えているの」


セリナが「私がクモの言葉を通訳しようとしてたのに、なんで先に小さくなるのよ」と今度は大きな声で文句を言いました。


「悪いな、折角小さくなって貰ったんだ、ちょっと来てもらえるかな? この家の人達にも関係ある事なんだ、後で感謝されると思うぜ」

「セリナ、聞こえた? ちょっと行ってくるね」

「分かりました、お嬢様 クララあなた、ちゃんとお嬢様をお守りしなさいよ」

セリナは困ったような表情で、私達を送り出してくれました。


私達はクモの後ろをついて歩いて、風呂場を出て私の寝室を横切って私のベッドの裏の壁の隙間から壁の中に入りました。

その様子を、メイドの皆さんがぞろぞろと付いて来て見ていました。

「いってらっしゃい」誰が言ったのか良く分かりませんが、壁の向こうから送り出されました。

虫の死骸を始めてみるクララは、声こそ出しませんが、ギクッとして私にしがみ付いています。


「大丈夫か、お嬢ちゃん」クモさんが全く心配していなさそうな口調で、声を掛けてきました。

「はい・・・あの、なんか知らない所で、こんな風に亡くなられていたんだなと思いまして・・・」

「ああ、みんな自然の中にいるよりは住みやすいからな、ここで生まれて、生活をして、そして死んでいく、ある物は干からびて、ある物は喰われる、それだけの事だ」


カッコいい人が言うと、そんな言葉でもカッコよく聞こえてしまいます。クララはなんだかクモさんにずっとくぎ付けになって歩いています。

「あっクララ足元気を付けて」

と言いましたが一歩遅かったです。

クララは、足元の釘に足を引っかけて、転んでしまいました。

が場所が悪くクララが壁の中に落ちて行きそうになりました。今の身体の大きさから言ったら、数百メートルある崖から落ちてしまったのです。クモさんがクララに飛びついて反対側の壁に着地しました。

「あ・・・あの・・・すみませんでした」クララが言うと

「気にすんな、ちゃんと足元を見るんだ、俺たちは死なないが、お前さん達は、ちょっと落ちたらすぐにケガするか死ぬんだからね」

クモさんに言われたクララは、「ひあぃ、気を付けます」と言いました。

「さっ、そっちに戻るとします、お嬢様暫くその場でお待ちください」クモさんが、私に礼をするとクララの手を引いて逆方向に歩いて行きました。

いつも読んでくださってありがとうございます。

『☆☆☆☆☆』の評価やブクマいただけると幸いです。

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