61 ナベエラお姉さまの元へ
いつも読んでくださってありがとうございます。
このお話は、”大好きな作品にファンレターを書いたのに感想を受け付けていませんって出てきちゃうどうしたら良いんだろうって思っていたらとんでもない事になっちゃった。”
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に登場する王妃侍女アイシャのお話です。本編の舞台裏をお楽しみください。
王都から戻ってきて会社に顔を出したカオリ殿下に、ダイヤル式の計算機械と離れた所でも会話が出来る機械の報告をすると、「ああ、電話が出来たのね」と、明るい表情で言われたカオリ殿下は直ぐに製品化に向けた概略を紙に書いてアイシャに手渡すと、また聖女の仕事の為に馬車に乗って出かけて行かれました。
翌朝王都へ向かう前に本社に立ち寄ったカオリ殿下はレオナルドがまだ来ていない研究室に居た若い研究員に話しかけました。そして「ごめんなさい、時間がないので貴方に伝えるわね、レオナルドを飛ばしてしまって済まないのだけど」と言いながら研究員に電話の概略を話しすると、研究員はひたすらメモを取るのでした。そして電話の使い方なども、レクチャーして、試作機ができたら直ぐに社内に電話を設置するように指示を出して、急いで王都へと向かわれました。途中まで一緒にいたアイシャは、電話という物が何だかやっと分かってきました。
実用的になったらすぐに使えるように、王宮と本社の間に電話線を引くことになりました。会社の中にも実験用に各部屋に電話線がひかれました。社内の連絡は、試作機が出来上がり次第、電話を使うことになりました。
これからどんどんと、国中に電話を引いていく予定ですが、その予算は「加入権」という物を作ってそこから電話線を引く為の予算にするというのです、カオリ殿下はなんでもご存知で凄いのです。
皆が新製品開発に向けて大盛り上がりになっている時、王宮からアイシャのいる社長室に使者がやって来ました。
どうやら、王様の従兄であるスンズオカ辺境伯の元へ嫁いだバールトン公爵家二次女のナベエラお姉さまが、流行り病にかかって病の床へ伏せていると言う事でした。スンズオカ領全域で奇妙な病が流行っているのだそうです。そして、もちろん聖女カオリ殿下の元にも報せが行っているのですが、アイシャも辺境伯家の義理の妹になるので、王家が知らせてくれたのでした。
午後になると、王都での聖女の仕事を終えたカオリ殿下が本社にやって来ました。
「アイシャ、スンズオカ領の事聞きましたか?」アイシャは黙って頷きました。「私は今夜からスンズオカ領に向かいますが、貴女も一緒に」とカオリ殿下が言い終わる前に、アイシャは「行きます」と、答えました。
アイシャは研究室に歩いてレオナルドの元に向かいました。
レオナルドは、普段と違う様子のアイシャに気が付いて仕事の手を止めると、アイシャから辺境の病気の事を聞いたのでした。「僕はこれでも医者だよ、僕も一緒に行くよ」二人の話を聞いていた他の研究員達は「どうぞ安心して行ってきてください、皆さんが戻ってくるまでに電話を完成させて起きますからね。」と明るく送り出してくれました。
「最近は、病気が少なくなっていたから、久しぶりに病気と向き合うな」と医学の棚に向かうレオナルドを見て、アイシャは心強く思うのでした。
スンズオカへはまだ鉄道が引かれていないので、全て馬車での移動になります。アイシャとレオナルドが行くと聞いたウィリアム様もカオリ殿下と一緒に行きたがりましたが、ウィリアムさまは新しい営業所の設置に向けて最後の段階な事とエミリ様を1人ヴァヴィンチョに残して行くことは、できないとの思いがあり、ウィリアムは残ることにしてくれました。結婚式迄に戻って来る事ができるのか、アイシャは少し不安はありましたが、3人はスンズオカへ出発するのでした。
聖女仕様で制作された上質な馬車に揺られたカオリとアイシャの2人と、会社の役員用の上等な馬車を堪能するレオナルド、王宮から来たメイドや護衛の皆さんの馬車も一緒に来ているので、かなりの大所帯になっています。初日は3人とも日頃の疲れが出たのか、宿に着くなり倒れるように寝てしまい途中で目を覚ましたレオナルドだけが夕食を口にしました。何度かメイドが起こしに来たのですがアイシャもカオリも二人共全く目を覚ましませんでした。
今夜はちゃんと夕食を食べましょうねと誓い合っていた二人を乗せた馬車は二日目の宿屋に到着しました。「明日にはスンズオカ公爵のお屋敷ですね。」
安い宿をと注文しておいたというのに、警備上の理由と言われて、またもや最上級のお部屋が二部屋用意されました。アイシャは、まだ未婚なのでカオリ殿下と一緒の部屋でレオナルド様は別の部屋に泊まりました。
レオナルド様は、夕食の時に連絡を受けている病状から考えられる病名と療法を解りやすく教えてくれました。けれど未知の病気の可能性が否定できないと言いました。スンズオカにも優秀な医者が居るのに、これだけ蔓延しているのには何か、理由があるのだと思う、そう言って黙り込んでいたレオナルドでしたが、「出来れば、聖なる力ではなく、誰でも使える薬などで治るようにしたい。そうしないと、二人の体が幾つ有っても足りなくなってしまう」と、言いました。
「確かにそうですね」カオリ殿下も同じ事を、感じていたようです。
美味しい食事の筈が、3人は砂を噛むような、なんとも言い難い重苦しい気持ちになり、食事が進まないのでした。
三日目の昼近くになって、スンズオカの関所を通る時に異常な事態に気が付きました。
関所の職員がとても少ないのです。
カオリ殿下が話しかけました。
「人が少ないのは、病に倒れられているのからでしょうか?」
関所の職員はやつれた表情で頷きました。
「レオナルドさん」カオリ殿下が呼びかけると、レオナルドが職員にいつ頃から具合が悪いのかなど問診を始めました。レオナルドがもう良いよと、言うと、カオリ殿下は関所一帯に聖なる力を発生させました。
直に、皆んなの顔色は良くなりました。
「カオリさんありがとう、しかし、かなり広がっているみたいだね。そして出勤出来ていない人がかなりいる、これは普通の病ではないかも知れないな」
レオナルド様がお礼を言うと、カオリ殿下は、「私も普通の病とは違うものを感じます」と答えました。
皆に礼を言われた一行は、案内を買って出た騎士について領主の館を目指すのでした。
関所を通過して2つの集落で病を治すと、既に陽は落ちてしまい真っ暗になってしまっていました。
案内の騎士が、「遅くなってしまい申しわけありません、この集落に泊まりますか?領主の館迄に後一時間程進まなくてはなりません」と言いました。
レオナルドがニコニコしながら、全ての馬車に大型の懐中電灯を取り付けました。
松明とは比べ物にならない明るさに、騎士は驚いていました。
「「直にこれが当たり前になりますよ」」レオナルド様とカオリ殿下は二人で同じ事を、言いました。
アイシャは少しヤキモチを焼いてしまいましたが、二人が、開発したんだものねと、思い直しました。そして、いつかは私も何か、開発してみせるわと、思うのでした。




