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5 教えてもらった事なんてなかったわ

 「アイシャ様?」目を大きく見開いたセリナが私に聞いてきました。

「ひあぃ、アイシャです」セリナの顔が近すぎて、なんだか食べられてしまいそうな恐怖を感じます。


 私の事を凝視しているせいで、なんだか怪獣が迫っているようです。

セリナは、普段俯き加減なので良く分からなかったのですが、美人系のかなり怖い顔立ちだったので、今は恐怖を感じる程です。


「あの・・・百足さんを窓から逃がそうと思ったら、こんなに小さくなってしまいました。戻り方を知りませんか?」

恐怖の大魔王様に話すように、恐る恐るセリナに話してみました。

「う~ん、どうなんだろう、確かにアイシャ様の魔力を感じるし、アイシャ様なのは分かるんだけど、魔力で小さくなるって、おとぎ話位だと思ってた」セリナが言うと


「あと、ファイーストにはそんな魔法ありそうだよね」クララがそんな事を言いました。


「あそこは別世界でしょ」セリナが渋い表情で答えます。


「うーん、神官様に聞くしかないかなぁ?」クララが呟くように言うと


「そうしたら、みんなにばれちゃうじゃない」私が大きな声で言いました。


「待って、うちのおばあちゃんに聞いてみる」

そう言うとセリナが部屋から出て行きました。


「クララ、ベッドの上に降ろして」

ふぅ。。。

クララにベッドの上に置いて貰って、私は大の字になりました。


「お嬢様、魔力の事を教えてしまってすみませんでした」

クララが謝ってくれましたが、治す方法が見つかったわけじゃありません。


「そうだ、またもう一度何か持ち上げようとしたら、元に戻るかな? やってみるね」

 私は小さくなった時の魔力の流し方を思い出しながら、手始めに、ベッドの上に載っている枕を持ち上げてみました。

ふわっとした感触があって、枕は静かに持ち上がりました。

持ち上げた枕を部屋の中を何周も飛行させてみましたが、特に何も起こりませんでした。


 元の場所に枕を戻して、ため息をつきました。

「戻りませんでしたね、お嬢様小さくなったのは今日が初めてなのですね?」クララに聞かれたので


「ううん、昨日も小さくなったわ」と言いました。

クララは、目を見開いて言いました

「ど・・・どのようにして戻られたのですか?」


「昨日は、小さくなって蟻さん達に襲われたの、腕と足に噛みつかれて、痛い、止めてって思ったら蟻の巣穴を壊して元の大きさに戻ったの」

そう言うと、クララは、「ちょっと待っていてくださいませ」と言うと少しして「裁縫道具箱を持って来ました」と戻ってきました。


「お嬢様、少しチクンとしますね。」


そう言うと、待ち針を私に向けて来ました。

「ちょっ、やだ、身体に刺そうとしてるでしょ、腕にして」

クララの持つ針が私の身体に向けられているように感じます。

「はい、勿論です」クララは、平然と答えてそのまま針を私に近づけてきます。


「やだ~怖いよ」身体が小さいので、針が物凄く太い物にしか見えません、恐怖で全身が固まったように動けません。


針の先っぽが、私の腕に食い込んできました。

「ぎゃ~痛い~」針が刺さる痛みじゃなく、太い尖ったもので腕をへし折りに来ている感覚です。

この針が刺さったら、腕が引きちぎれるか骨が折れてしまいそうです。

ボンッという音がして、私はベッドの上に横たわっていました。

クララの持っていた針は、飛んで行ってベッドに刺さりました。

私の服は埃を吸ってしまって、灰色基調に汚れていますし、腕は骨折寸前だったせいで、針が食い込んでいた辺りは赤黒くなってしまっています。

「痛いけど、何とか元に戻ったわ」私は安堵して答えました。


「お嬢様、お風呂に入りましょう」クララに言われて、隣りの部屋へ移動して風呂に入りました。

「痛たたたたた、滲みる」血が滲んでいた腕に、石鹸の泡が滲みました。

「すみませんでした」クララが謝って来ました。


「クララのせいじゃないから、ああして貰わなかったら今も未だ小さいままだったと思うよ」

そんな会話をしてると、ガチャリと扉が開きました。


「この大馬鹿者」という声がして、副メイド長のリリア様がセリナと一緒に入って来ました、そして、リリア様がクララの頬を叩いて言いました。


「お前がお嬢様に余計な事を教えたせいで、お嬢様は一生残る傷を負ったのだぞ、なんと愚かな事をしたんだお前は、旦那様と奥様に一生詫びを入れ続けろ、この戯けもの」

と言い、私の方を向くと「お嬢様、大変申し訳ありませんでした、この者は侯爵様に厳しい処分を与えさせます、お嬢様あああ」と言うと泣き始めてしまいました。


私は突然の事であっけに取られていましたが、


「あの、もう元の身体に戻れたし、気にしていません、クララだって、親切で魔法を教えてくれたんです」


そう言いましたが、副メイド長は厳しい表情のままです。


「お嬢様、この国では魔法は使えない事になっているのは、ご存知の事と思います、なぜ使えないのか、それはこのような事が起きるからでございます」


少し考えるようにして、間が空きましたが、副メイド長は続けて言われました。


「お嬢様はかなり魔力が御強ようございます、それゆえ、神殿で繊細な魔力の制御を学ばなければなりませんでした。しかし魔力の使い方を習った事も無いこの者から乱暴なやり方で身体に魔力を流してしまったので、周りの物等に流れている生命力や物体の記憶と同調してしまうようになってしまったのです、この先よほどの高位な神官に治して貰わない限り、普通の人間としては生きていられない体になってしまったのです。」


クララは初めて自分の行いで、幼い侯爵令嬢に一生の傷を負わせてしまった事を知りました。

その場で土下座をすると「お嬢様大変申し訳ありませんでした」と頭を床に擦りつけながら、謝り続けるのでした。

お読みいただきありがとうございます。

『☆☆☆☆☆』の評価やブクマいただけると幸いです。

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