53 シュペイの商人
いつも読んでくださってありがとうございます。
このお話は、”大好きな作品にファンレターを書いたのに感想を受け付けていませんって出てきちゃうどうしたら良いんだろうって思っていたらとんでもない事になっちゃった。”
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に登場する王妃侍女アイシャのお話です。本編の舞台裏をお楽しみください。
隣国シュペイの商会は、今、情報交換が盛んにおこなわれている。
2年ほど前から、ランスの山奥ヴァヴィンチョで生産されている染物がとても美しく品質も上がった上に価格も安めで良いことづくめだったのだが、数か月前から村を代表してヤマダとか言う商会がまとめて扱うようになってしまった。
最近は、ランスの人間は皆読み書き・計算が出来るようになってきていて、今までのように簡単に安く購入し高く売りつける事が難しくなっていた、これまでならば、頭の悪いランスの住民一人一人に会って話をして行けば、必ず一人二人と思うように話に乗って来る連中が居た、彼らにとって大金と思える金額を渡せば、丸め込む事が出来たのだが、ヤマダ商会が扱うようになると、今までのような安い金額で買い取る事が出来なくなり、とても困っていたのだった。
さらにあのヤマダ商会は、電灯や発電機・冷蔵庫・掃除機・ドライヤーなど数えきれないほどの製品を、次々と発売しているのだ。それらの製品をシュペイに持ち込もうとしたのだが、なんとランスの関所はそれらの製品を国境から持ち出してはならないと没収してしまうのだ。今ではランスの国境だけでなく他の近隣国の国境でもランスの製品をシュペイへ持ち込むことは
始めは堂々と持ち込もうとしていたのだが、没収されてしまう事が分かったので、服の中に隠したりカバンを二重底にして隠したりしてみたが、ことごとく見つかって没収されてしまった。
我々商人はしょっちゅう国境を行き来しているから、顔を覚えられてしまっているので、それはもうくまなく検査されてしまうのだ。
そこで、ランスの住民を買収してランスで購入してからシュペイへ旅行へするついでに持って来てもらう計画を立てたが、やはりランスの国境で取り上げられてしまったのだ。どうにかしてあれらの製品を輸入したい。シュペイの国王にランスの製品を輸入をしたい旨を陳情したのだが、王族は見たことも無い製品について、全く興味が無いのか返事を貰う事すらできていなかったのだ。
ある時ランスに娘が嫁いでいるシュペイの老夫婦が居る事を耳にした。早速彼らと会って話をすると、隔月で娘と会っているから、お安い御用だと引き受けてくれた。
早速彼らに、先ずは数日ランスに滞在して貰い、合法の製品をカバンの隠しポケットに入れて持ち帰ってもらうと、全く検査されなかったという。次に一週間後に一晩だけ滞在して、懐中電灯と電気スタンドを持って来てもらった、電気スタンドは大きいので直ぐに没収されたが、カバンの二重底は検査されなかったので、懐中電灯を持ち帰ることに成功したのだ。
うちの商会が持ち帰ることに成功した事は、他の商会にも大きな希望になった、ランスの街がどんどん綺麗になっていっている事は、我々商人が一番肌で感じている事なのだから。ランスの優れた製品を手に入れて、シュペイで売る事は夢であった。
早速街の宝飾店の職人に懐中電灯を分解して同じものを作れるか聞いてみた。
「見たことも無いものだ」懐中電灯の分解をした職人たちは、電球や電池の分解をし終わって、同じものを作れるかと言う質問に対し、首を横に振ったのだった。
仕方がないので、これらを元通りに組み立ててくれと言ったのだが、彼らは何時間も苦労して形こそ元通りになったのだが、スイッチを入れても光は出て来なかったのだ。つまり復元は出来なかったという事だった。
しかし、分解しながら、スケッチを取ってもらっていたので、我が国の学者にそのスケッチを渡すと、彼らは復元に失敗した懐中電灯を見たいと、言って来た。だが、懐中電灯は鍛冶屋に渡して、調べて貰っていたので、学者に見せるのはまだ先になるのだった。実はもう一つ懐中電灯が手元にあるのだが、この懐中電灯まで壊されてしまうともう、後が無いので、これは王様に実際に見せる為に残してある。
そんな時悲報が入ってきた、前回懐中電灯を持って来ることに成功した夫婦がランスで拘束されて取り調べを受けているという事だった、しかも入国した時から追跡されていたらしく、協力者たちも拘束されてしまったというのだ。
折角出来たと思ったルートだが、思った以上に厳しい事になりそうだった。次の手はランスで分解して詳細なスケッチを取って、シュペイで研究する事だった。シュペイで生産できれば何もランスに隠れて密輸をしなくても済むのだから。我々商人の底力を見せるのだ。と




