31 アイシャ天啓を受ける
いつも読んでくださってありがとうございます。
急に本業が忙しくなってしまい、暫く執筆が難しそうな状況です
この所シャーロット妃殿下はとても嬉しそうにしています。
先日は市井の書店から、子供向けの童話を取り寄せて、またニコニコとしていました。一日が終わりアイシャが、妃殿下に就寝の挨拶をしようとした時に、シャーロット妃殿下に呼び止められました。
「ちょっと待ってくれる。この本読んでくれる?」そう言ってシャーロット妃殿下は、アイシャに絵本を渡しました。
船で3か月以上もかかるファイーストという国の言い伝えで、今から300年ほど前に聖女が現れて、魔法を使って人々の病気やけがを直したり、街を綺麗にして、魔物を退治して、食べ物も沢山生み出して、国が豊かになったお話でした。
「私ね、子供の時にこのお話が大好きだったの、いつか女王になってこの聖女みたいにみんなの病気を治して、食べ物を美味しくして、世界を平和にするんだって、そんな事を思っていたの。結局女王ではなく、王妃になったけれど、国民の幸せを願う事は昔から変わりないわ」
そう言うと、少し寂し気に微笑まれました。
「でもね、最近本当の聖女が現れたみたいなの、だって水洗トイレが出来てから、病気の発生率が下がってるのよ、この間の報告書にもあったから知ってるでしょ?」
シャーロット妃殿下は、喜んでいるのか、不思議な表情で、聖女への憧れを話してくれました。
この絵本が私が国の統治者になろうと思ったきっかけなのよ。聖女様は私の永遠の憧れなの。
何度も何度もそう言いながら、アイシャにもたれかかる様に眠りについたのでした。
アイシャは、夜番の侍女を呼び、シャーロットを落とさないように気を付けて、二人でベッドまで運びこむと、そっと布団をかけて、明かりを消すと夜番の侍女に後を任せて、自室へ戻ったのでした。
「聖女様か・・・」
「こんなに豊かで平和なこの国に聖女様って必要なのかしら?」
アイシャがふと考えてみましたが、この国はとても豊かで、みんな幸せそうにしている所しか思い浮かびませんでした。冬になると季節風邪で多くの人が命を落としてはいますが、普通の事でした。
季節風邪が激減している。 アイシャは報告書の内容をもう一度読み直していました。
ファイースト国ではニホンという世界から魔法によって1人の女タナベレイコを聖女として召喚した、一年後ニシダケンタと言う男も召喚された
その半年後にアカリが、ヴァヴィンチョに現れた。ファイーストもアカリを調査している可能性が高い
アカリはまだ魔法を使った形跡が無い。
しかし次々と見た事も無い物がヴァヴィンチョの集落で作り出されて、マルポンポン領は未来の国かと思われるほどに変化している。
ランス全土に広げるべき製品である。
スイッチを入れるだけで明るくなる電球と電池の詳細や
モーターなる発明品の詳細
水道と浄化槽の詳細
染物の詳細
ファイーストでしか食べられていない米の食べ方をアカリが話していると言う報告もある。
十年間の疫病の発生件数と、死者数の報告書では、この1年だけが異常に下がっていた。
マルポンポン領で既に行われているが、ごみを集めて、燃えるものと燃やさない物に分けて、焼却する事を全土に推奨すると書かれていた。
発案はアカリの指導 と言う部分に朱色の線が書かれていた。
最近色々な色のインクが増えていたが、これもアカリの発案だと書かれている。
アイシャは、報告書を読みながら、シャーロット妃殿下の渡してくれた絵本を思い出していた。
異世界から来た、病気が激減し、街が綺麗になった・・・
現代の聖女だ・・・
なぜシャーロット妃殿下が夢中になっているのかが分かった瞬間、アイシャのやるべきことが決まった。
あの世界にいた私だけが、聖剣を使う事が出来た、アカリは私と同じだ、
私はこの聖女を支えたい。
かつてクララと一緒に行った世界で、王女は微笑むだけで、作物は豊かに実った
この世界にも、あの王女のような人が現れたのだ。
翌朝一睡もできなかったアイシャは、少しばかり肌艶が良くなかったけれども、それ以上に輝いた顔でシャーロット妃殿下に挨拶に行った。
「おはようございます、シャーロット様、私も聖女様をお支えしたいと思います」
シャーロット妃殿下は眠そうな顔でしたが、アイシャの挨拶を聞いた瞬間飛び上がって、笑顔になりました。
「アイシャ、あなたが助けてくれたら安心だわ、嬉しい、本当に嬉しい」
シャーロット妃殿下は他にもメイドたちがいるにもかかわらずアイシャに飛びついてくるくると踊り出しました。
「ああ、そうだわ、聖女様をこの城に住まわせましょう、ヴァヴィンチョは田舎過ぎるわよ」とシャーロット妃殿下は勝手に城内に聖女用の居住場所を作る事に決めてしまいました。
「アイシャ、報告書見た? お風呂が健康にいいらしいわよ、聖女様が大浴場の建設を指示したらしいわ」
そう言うより早く、シャーロット様はヴァヴィンチョに作られたと言う公衆温泉施設に似た、大きな風呂を城の中に建造するように命じていました。
「アイシャ、報告書見た? 防火・防災ですって」
「シャーロット様、これは、ご主人様へ注進された方が良いのでは」
「そっそれもそうね、じゃぁ今日の会議には私達も参加しましょう」
こうして、急に予算会議に参加するシャーロットとアイシャなのでした。
アイシャが会議に出てきた=重要案件という事は既にこの王城でも定着している事でしたから、防火・防災は重要超特急案件としてまとめ上げられて、ランスの国は超先進的な防災国家へと変貌して行くのでした。
次回は2月4日午前6時ごろ投稿の予定です。
只今、次作品を執筆中です。
少し間を頂きまして2月12日日曜日の頃には発表できるようにしたいと思っております。
どうぞ今後ともよろしくお願い致します。




