21 私のやりたい事は何だろう?
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何度も何度も真っ暗になったり、草原や謁見の間が見えたりしていましたが、やがて真っ白になったかと思うと、青い鎧の少年が目の前にいました。
アイシャは久しぶりに見る少年の姿に、喜びを感じていました。
ですが、少年はアイシャを見ると斬りかかって来るのでした。
10年間騎士団と共に剣術・体術を身に付けたアイシャは少年の振り下ろす剣を華麗にかわしました。
少年は驚いて何度も突きを繰り返したり斬りかかってきましたが、今のアイシャにとって、少年の剣は下手過ぎるので、かすりもしませんでした。
アイシャが全く息も上がっていないのに、少年はクタクタになってしまったようで、どこかへ行ってしまいました。
こんな所で、怪我でもしたらどうしようかと思っていたアイシャは胸をなでおろしました。
スライムを探していると、女神さまの姿が見えました。
「あの・・・すみません、私の事を覚えていらっしゃるでしょうか、10年前にスライムを生み出されていらっしゃる所へ、やって来た時のものです」
「ああ、覚えているわ、急に消えたから、自分の世界に戻られたのだと思っていました。」
アイシャは、この10年の間に起った事を掻い摘んで話ししました。
気が付くと足元に白と黒のふわふわした犬がいました「パール」と声をかけると、パールは嬉しそうにお尻をフリフリと振りました。
「パールの名前を憶えていたのですね、あなたは自分の役目は分かりましたか?」
「10年間魔王を退治しましたけれど、自分の役割ではないと分かったので、また振出しに戻ってしまいました。」
「振り出しではありませんよ、今までの経験全てが、将来必要となるものです大切にしてくださいね。」
「そろそろ元の世界に戻りましょうか?」女神が言うと、パールが鼻先でアイシャの腰の辺りを突っつきました。
☆ ☆ ☆
バールトン侯爵家の屋根裏部屋に一人の少女が倒れていました、その脇には死んで干からびたムカデとクモが転がっていて、2本の剣がその脇にありました。
んっ、ん~、アイシャは指に刺さってしまった床板の棘を抜くと部屋の中を見回しました。
戻ってこれたのねおまけに棘が刺さったおかげで身体も元に戻っているわ、自分の脇にあるクモとムカデと二人の剣をそっとハンカチで包みました。
屋根裏部屋の扉を開けて、自分の部屋に戻ると、つるはしやハンマーを持った男達がいて、壁が壊されている所でした。傍には執事のルイスや"ジョアンナ・グリーン"メイド長と"リリア・ホワイト"副メイド長がいました。
「うわぁ虫やネズミの死骸が壁の裏に沢山」メイドの一人が呟くと
「ああ、アイシャ様は食べられてしまったのではないでしょうか」ともう一人のメイドも涙ぐみます。
「なんという事を言うのですか、諦めないでもっと良く探しなさい」メイド長が言います。
アイシャはみんなの後ろから、「ただいま」と声を掛けましたが、みんなは、壁の穴にくぎ付けで、「今忙しいんだ後にしろ」とルイスまでそんな事を言いました。
「アイシャ様の痕跡を探すんだ」「あっここにちぎれた布が引っかかってます」「あら本当だわ」「これってアイシャ様の」「これはクララのハンカチじゃないの」「やはりあの二人はここで・・」
アイシャはメイドの肩を指で突きました。
振り返ったメイドは「きゃぁー」と大声を出して、そのまま気絶してしまいました。
皆も振り返って、「アイシャ様?」驚き過ぎたためか、だれも何も言いませんでした。
皆は応接室に移動して、兄弟全員とルイスメイド長で、アイシャの10年間の話を聞きました。
話が長くなったので、途中で切り上げて夕食を食べながら話をする事にしました。
アイシャにとっては10年ぶりの我が家の夕食を摂りました
「10年ぶりの侯爵家の食事ですわ、とても美味しい」と呟くようにアイシャがいうと
「アイシャ、なんだかとても洗練されましたね」お姉さんたちから、お褒めの言葉を頂きました。
「クララの教育の賜物だと思います」とアイシャが返しました。
「クララ・・・キャンベル家にも手紙を出さなければですな」とルイスが頭を悩ませていました。
「元はと言えば、あの子がアイシャ様にいい加減に魔法を教えたせいですから」と”ジョアンナ・グリーン”メイド長が言いました。
「クララは、今2人の可愛い双子達と素敵な旦那様が居る宰相夫人です。と言いますか、ほぼ宰相として国の運営を仕切っているのよ、とても幸せそうでしたわ」とアイシャがクララの事を褒めたので、それ以上クララの事を悪くいう事はありませんでした。
その後、みんなは応接室に移動して、アイシャの華麗な剣技を見ました。
特に上の兄二人は、アイシャに相手を申し込んだものの、5歳のアイシャに剣の腕で負けてしまった事に酷く衝撃を受けていました。
「お兄様、あまり落ち込まないでくださいませ、今は5歳の身体に戻っていますが、10年間騎士団と共に毎日練習を積んできたのです、体力こそ5歳ですが、技は10年間分、極めておりますわ」
と言い騎士の礼をしてみせました。
「アイシャは騎士になりたいのかい?」二番目の兄が聞いてきましたが、「良く分かりません、何になりたいのか自分でもはっきり分からないのです」と答えると
「そうか、実際15歳ではなく5歳なのだからじっくりと考えるが良いと思うよ、領地から戻ったら父上にも相談してみるのが良いと思うよ」と答えてくれました。
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