19 魔王との対決とその後
思う所ありまして、16話から改稿しております。19話からかなり変わります
魔物が次々と現れて、援軍に襲い掛かります。2階の扉が開いて弓兵が矢を放ちますが、魔物達もなかなかにすばしこくて、矢が当たりません。 クララも魔法で魔物を持ち上げては叩き落して、何とか魔物の動きを封じようとしますが、数が多く、かなりの混戦となってしまっています。
あまり上手ではありませんが、アイシャもクララも炎の魔法を使って、一度に何匹もの魔物を退治して行きますが、負傷者もかなり出ていました。
とにかく今は、魔王が何故か手を抜いていて動きも緩慢なのです。
今のうちに魔物達を全部退治してしまうのが正解に思われました。
騎士も兵士たちも、頑張って魔物を倒してくれていました。
かなり手こずりましたが、漸く最後の一匹を退治する時になって、魔王が激しく暴れ始めました。
3階の吹き抜けから吊るされたシャンデリアが、破壊されて落ちてきました。
破片に当たった何人かの兵士が怪我をして部屋から運び出されて行きました。
魔王が足を横にスライドさせた途端、またまた数人の兵士がなぎ倒されて、戦闘不能になってしまいました。
騎士が、魔物に切りかかりますが、魔王の鎧が丈夫な為、全く歯が立ちません。
その時クララが、ミックに貰った毒の入った瓶の事を思い出しました。
クララは、宰相室の金庫からミックに貰った毒の入った瓶を弓兵に渡しました。
「この瓶を魔王の口の中に放り込んで欲しいのです」
一番腕の良い弓兵が、狙いを定めていると、魔王の放った攻撃が当たってしまい、弓兵は気絶してしまいました。
直ぐに2番手の弓兵が毒の入った瓶を括り付けた弓を取り上げて、2階席から出て行きました。 少しすると3階席の扉が開いて、先ほどの弓兵が姿を現しました。 毒矢を持った弓兵が、弓を構えると1階からは魔王の気を紛らわせるために騎士が魔王の足をハンマーで叩きつけて、弓兵が下から弓を放ちました。
魔王が、下向き気味になって足を踏み鳴らすと、調度品がゴロゴロと転がり、壺や花瓶は倒れて割れてしまいました。
魔王は、不快さに上を向いて吠えました。 3階で毒矢を構えて居た弓兵は一瞬の好機を見逃しませんでした。
毒の瓶が付いた矢は、見事に魔王の口の中に入りました。
瓶を飲み込んでしまった魔王は、何か不快なものを口に入れられた事に腹を立てて、2階席・3階席を叩き壊し始めましたが、やがて苦しみ出してしゃがみこみました。
ミック、今度も貴方に救われたわね。アイシャは心の中でミックに感謝の気持ちを伝えると、一気に魔王の背中を駆け上りました。
アイシャは聖剣を一気に魔王の背中に突き刺すとそのまま、大きく切り開きました。
魔王はいつもと同じように、目を開けていられない程の光を放って蒸発してしまいました。
今回の反省として、魔王が動いていない時には、正面からは入ってはいけない、と言う決まりが出来ました。
こうして、半年から1年に一度魔王が復活し、アイシャは聖剣を取りに行って魔王を倒し、その後は国の状態を確認すると言う仕事が出来たのです。
アイシャは、自分のやる事が無いと、内心では悲観していたのですが、いつの間にかアイシャでなければ出来ない仕事が出来ている事に気が付くと、安堵したのです。
そうしているうちに12歳になったアイシャに騎士団の中から求婚する男性が現れました、しかしアイシャは騎士にはなりたくなかったので、丁重にお断りしました。
こうして何度目か魔王を倒した謁見の間に、奇妙な声が聞こえました。
「見つけた、王女の他にもう一人いるぞこいつは誰だ」
アイシャは、声の主に向かって言いました。
「童は、バールトン侯爵家三女のアイシャ、この国に度々復活する魔王を倒し、この国の平和を維持する為の活動をしております」
その声は、驚いた様子で言いました。「あなたの持っている聖剣は、勇者の為に作ったものです、何故か聖剣の強さも勇者が持つよりも強くなっています、あなたは何故その聖剣を手に入れられたのですか?」
アイシャは、この聖剣が他人の物なのだと知り愕然としました。その理由は”魔王を倒す仕事”はアイシャの仕事では無かったという事です。
「あの・・・この剣を私が使ってはいけないという事でしょうか?」アイシャが尋ねると
「そうです、もう使わないで欲しい」即座に返答がありました。
「この国の安全は守られるのでしょうか?」アイシャが尋ねました。
「守られる、勇者がその剣を取りに行く前にあなたが、その剣を手に入れてしまった」また返答がありました。
アイシャは、自分の役目では無かったことが、酷い衝撃でその場にしゃがみ込んでしまいました。
その時王女が助け舟を出してくれました。
「勇者の伝説は存じております、ですが、アイシャさんはいつも誰よりも真っ先に、その剣を手に入れて、魔王を倒し、この国の隅々まで平和が維持されているかどうかを見回ってくれています、アイシャさんは5歳の時に、よその世界からやって来てこの国を守り始めました、もうすぐ15歳になるのです。10年もこの国を守ってくれているのです。この10年の間に魔王は17回も復活をしました。しかし一度でも勇者がこの城にやって来た事はありませんよ。」
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