表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/83

17 新体制

 魔王が滅び、王女が自由に部屋の外に出られるようになると、石になっていた人々は次々と動き出し、街を覆っていた真っ黒な霧はすっかり晴れて、街は元通りに動き始めました。

 しかし、この国の宰相はあまり政治に手を出さない方針のようです。なにか問題があると、「王女様にお願いをするのです、王女様がほほ笑むと、直に解決します。」と言った具合です。

始めのうちは、そうなんだと思って見ていましたが、なんせ国は数百年間ストップしていたのです、宮殿から離れた村では人々は生活していましたが、人間らしくないと言うか、何かとても変な感じでしたが。

 そのうちに、見ていられないと、クララが宰相の手伝いを始めました。クララは子爵家の二女でした、本当はお姉ちゃんが継いだ子爵家の領地経営をやりたかったそうで、お父様について回ったり図書室で勉強をしたりして、領地経営の勉強はずっとして来たのだそうです。


宰相に恐る恐ると言った感じで、提案をし続けているうちに段々と気に入られて3か月もする頃にはどちらが宰相なのか分からない程にこの国の運営に乗り出していました。

「王女様の力に頼りすぎです」「税を摂り過ぎては民の生活や文化が衰退してしまいます、豊かになれば税収も上がります、国を育てましょう」「陳情は分類して、今どの分野に力を入れるべきか考えましょう」

ほぼ24時間一緒に過ごしている宰相は、始めの頃は元気の無いダサい人でしたが、素材が良かったのか、毎日クララが身支度を整えているおかげか、3か月後には城下町では知らない人がいない程の素敵な男性に変貌したのでした。

 元々長身のクララと宰相様は


「王女様私は、何かする事ありませんか?」魔王を倒したアイシャは、城内を案内されたり、国内を観光させて貰ったりと楽しく過ごさせてもらっていましたが、宰相補佐と言う仕事を見つけてしまったクララを見て、アイシャは自分のやるべきことが見えないでいました。

「それでは、副王女になってください」「副王女ですか?なんですかそれは・・・」この国は王女様が笑顔でいるだけで、作物は豊かに実り豊かになっていくのだそうです。アイシャにそんな能力はありません、それでも聖剣を手に入れて魔王を倒した功績は既に国中の誰もが知っているのです。


 そして、この国のあちこちを観光に回った事で、王女様と同じくらいに国民はアイシャの事も覚えてくれたのです。

アイシャは侯爵家令嬢として、他国の王族へ嫁ぐことも視野に入れながら育てられてきたので、貴族がほとんどいないこの国では、王女様よりもエレガントな立ち振る舞いをしているほどでした。


 アイシャとクララの二人が毎日指導をした事で、この国の貴族たちはマナーや所作が向上していきましたし、素朴で味気ないこの国の料理も、クララが調理方法を伝授した成果はまず城の料理が物凄く美味しくなりました。

 今まで、殆ど食事をした事の無かった王女が、毎日笑顔で食事を楽しみにするようになった事は、城の料理人たちに仕事のやりがいを与えました。 

 城の料理のおいしさは評判になり、城下町の料理店の料理人たちは城へ勉強に出掛けては、新作の料理を披露するようになり城下町の食事は美味しいと評判になりました。

 1年を待たずに、この国の食事は劇的に美味しくなりました。

王女とアイシャが、定期的に国を回って異常が無いかを視察しているのですが、その時に料理人たちも同行させて、料理教室も開いているので、アイシャ達の行く先々で、料理を覚えた人たちが料理の腕を上げて行きました。

こうして国の文化レベルが向上して行きました。


アイシャとクララが伝える、貴族のマナーや文化はこの国の新しい流行になって行きました。

王女様は、そんな二人を見ているのがとても楽しいらしく、いつもにこやかに過ごしていらっしゃいました。


アイシャ達がやって来て1年もすると、クララとアイシャの銅像が、国のあちらこちらに建てられるようになりました。「もう、どこの街に行っても銅像が立っているだなんて、なんだか恥ずかしいですわ」「童もこれはやり過ぎだと思うけれども・・・」誰に言っても気にも留めて貰えないので、二人で慰め合いました。


 そんなこんなで、のんびりした平和な生活が続いていたある日、アイシャはクララからある事を打ち明けられました。

「結婚するのですか…」アイシャは、半分は分かっていましたが、改めて打ち明けられると、驚いて二の句が継げなくなってしまいました。


 毎日の様に一緒に過ごしているうちに、クララは宰相の事が好きになってしまったという事なのです。

宰相は始めのうちは無機質な性格でしたが、クララの天真爛漫な笑顔に感化されたのか、今ではとても明るく人好きのする人物になりました。

 その上クララがいないとこの国の政治が進まないと言う位に、クララはこの国にとって必要な人物になっていました。


 アイシャは、飛び切りの笑顔で「おめでとう、幸せになってね」と言いましたが、未だに自分の役割を見いだせていない事を静かに悔やむのでした。

 二人の結婚式は、国を挙げて盛大に執り行われました。

王女様が未だに独り身であるのも気がかりですが、それでも王女様もクララと宰相の結婚を心から喜んでいらっしゃいました。


 二人が結婚して1年もすると、双子の赤ちゃんと乳母を連れたクララの姿を見られるようになりました。

クララの結婚式は国を挙げての盛大な物でしたが、ご子息・ご息女の誕生は、またまたお祝いが盛大に行われました。

「この国は、あなた達のおかげで本当に素晴らしく発展しています、あなた達には感謝をしてもしきれません」と王女様に言われて、クララは飛び切りの笑顔で答えたのに対して、アイシャは、内心を悟られないような淑女の笑顔で答えていました。

 この世界には、隣国は無いようなので、アイシャは他国へ嫁いでその国を豊かにするという事も考えられませんでした。ただクララと一緒に過ごす事で、メイドの事も国の政治や経営も、魔法の事も自然と学んで行きました。

 そんなある日、この国にやって来た時と同じように一瞬真っ暗になりました。


 クララとアイシャは慌てて、王女の部屋に行きました。 王女は落ち着いた様子で、「また魔王が復活したようです。」と、言いました。


 魔王を倒さなくては・・・アイシャは急いで自室に戻り、机の中の引き出しにしまわれている筈の聖剣を取り出そうとしましたが、聖剣は引き出しの中にはありませんでした。

 聖剣が無い・・・アイシャは、動揺しへたり込んでいました。

「またあの神殿に行かなくてはならないのですね。」とアイシャが言うと、王女様が言いました。

外に黒い霧が出ているからうかつに城外を歩けないのです、王家だけが知る秘密の通路を通って行けば、神殿まではそれほど苦労せずにたどり着けると思います。と言い地図を渡してくれました。


アイシャは護衛を連れて、秘密の通路を通り地上に出たあとは、馬に乗って地図の通りに進むと1日掛からずに神殿にたどり着きました。

アイシャが聖剣に触れるとまた聖剣は白く輝いてアイシャが軽く握れる大きさで抜けてくれました。

お読みいただきありがとうございます。

『☆☆☆☆☆』の評価やブクマいただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ