15 冒険
総勢50名の騎士に連れられて、アイシャ達は魔王の居る城へ向かっています。
「もう少し、まともな道は無かったのですか?」クララが誰ともなしに尋ねます。
今進んでいる場所は幅が40cm足らずで踏み外せば谷底へ真っ逆さまな、断崖絶壁の道を進んでいるのです、みんなは騎士服だしケヴィンさんもミックも平気なのですが、アイシャもクララもスカートが風にあおられて、凧のように飛んで行きそうで、とても恐ろしいのです。
断崖絶壁の道に入る前にクララが持ち歩いている裁縫セットでスカートの裾を縫ってくれたので捲れたりはしないのですが、歩幅が狭くなってしまったのと、全体的にズボンよりも布が多いので、風が強いとばたばたとしてしまうので逆に危なかったのかも知れません。
急に風が止んだので、激しい風に向かうようにして風圧に耐えていたいたアイシャはバランスを崩してしまいました。
「きゃあー」
大きな声を出してしまいましたが、アイシャは一人に腕を捕まれ、もう一人からは、服を掴まれて落っこちずに済みました。
慎重に引き上げてもらってやっと、安心して歩ける幅の場所まで来ました。
アイシャが難関を突破して一安心したと思ったら、今度はクララが足を踏み外してしまいましたが、ケヴィンさんがしっかりと手を握ってくれたおかげで、落っこちないで済みました。
いくどか、恐い思いをしながらも、なんとか断崖絶壁を通過すると、村にたどり着きました。
アイシャとクララは、雑貨屋を探しましたが、回復薬や武器・防具などは売っていても、なぜか日用品が売られていなかったり、変な村でした。
この先もあんな危険な所を歩き続けないと行けないのならば、乗馬用の服か何かを着ないと歩き難いと思っていた所、合流した女性の騎士団が小さめの騎士服を持って来てくれたので、アイシャもクララもありがたく着させてもらいました。
この後は、平原を2日間歩き続けますと聞いた時、乗せて貰った馬の事が思い出されました。 なんとなく、空をみあげて口笛を吹くと、馬の駆けてくる音が聞こえた気がしました。
「お嬢様・・・お嬢様・・・」クララの驚く声を聞いてアイシャが振り返ると、なんとあの時遊んでもらった馬が、そこに立って居たのです。「えっ、まさか私が口笛を吹いたら来てくれたの?」と聞くと、馬はそうだよとばかりに首を縦に振りました。
「このあと2日間平原を歩くんだって、妾とクララを載せていただけますか?」アイシャが馬に尋ねると、馬は当たり前のように首を下げてくれましたので、前が見難いですが、クララを前に乗せて二人は馬に乗りました。
一見穏やかな草原なのですが、時々体長3m程の虫が飛び出してきては、騎士たちに切り刻まれていました。
隊列の真ん中で馬に乗って移動しているので、まるで王女様のようです。
「馬に名前を付けてあげたいわね」「茶色だから、ブラウン」「寂しいわね、女の子なんだから女の子らしい名前にしてあげませんか?」「ポポタンはどう?」ブルルっと馬が言ったので、ポポタンに決まりました。
もうそろそろ、漸く隣の町に到着すると言う頃に、空が急に暗くなり空に渦巻きのようなものが現れました。
「見て、空に渦が」騎士のみんなも空を見上げています。
すると空に現れた渦から、誰かが降って来ました。人とは違うその誰かは、着地すると空の渦が消えて彼らも街の方へ歩いて行きました。
「なんだったんだろう、あの人たちは誰?」アイシャが尋ねましたが、騎士は「さぁ知りません」としか答えてくれませんでした。
ロイが数人に偵察を命じて、みんなは街の入口付近で待機する事になりました。
日が陰って来たので、日中は暑かった平原も涼しくなり始めました。
日が暮れてしばらくすると、偵察隊が戻って来ました。
街は特に混乱はしていなくて、空から下りてきた犬のような動物は少年の姿に変って街に入りましたが、その後は買い物をしたり、街の人に声を掛けていたけれど、特に何もしないで街から出て行ったという事です。
「日が暮れてから街の外に出て行くとは・・・」
「少なくとも人間ではなさそうですね。」
「少し気を付けて行動しないと行けないかも知れないな」
そんな会話をしてから、みんなで街に入って、宿を借りました。
「70名様?、無理無理そんなに部屋が無いよ」という事で、男性が2件の宿屋と女性1件の宿屋を借り切って止まる事にしました。
宿代は騎士の皆さんは王宮からお金を渡されているという事で、アイシャ達4人の分も出して頂いてしまいました。
アイシャ達はこの世界のお金を持っていなかったのです。クララはお金を持っていましたが、金貨くらいしかお金として使えないだろうという事で、使わずに持って居なさい」と、ロイさんに言われたのです。
久しぶりに、ちゃんとした食事と、お風呂、寝心地はそこそこのベッド、これだけ揃ったら、もう後はぐっすりと眠るだけという事で、アイシャとクララもぐっすりと眠ったのでした。
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