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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

スピリチュアルホラー

絶叫岬

作者: 陽向未来

 ここは、とある県の自殺の名所‥‥絶叫岬。


 私は、自身で言うのもなんですがバリバリのキャリアウーマン‥‥でした。

 浪費家でもなく仕事に打ち込んできた人生だったので、貯金は分譲マンションが買えるくらい貯まっていました。


 そして恋愛とは、無縁の人生でした。

 30歳を超えたころ私は、「仕事人間として生きていこう!」と決断しました。


 しかし、出会いとは偶然にあるものなのです!

 相手は、中学のときの同級生。

 カッコ良くて女子に人気だった彼に、私も淡い恋心を抱いたのを覚えています。


 32歳のときに出掛けた先で、再会したのです!

 この偶然の再会に、ちょっとだけ運命を感じました。

 彼はとっても気が利くし、本当に優しかった‥‥

 もう私は、彼に夢中になりました。

 とても幸せでした。

 大好きな男性に抱かれる女としての幸せも初めて知りました。

 結婚の話もしてくれていたので、私は彼との結婚を夢見るようになっていました。



 でも、まさか彼が結婚詐欺師だったなんて‥‥

 気付いたときには、私の貯金は無くなっていました。

 貯金が無くなったと分かるや否や、途端に彼は本性を現し私を捨てました。


 味わったことのない絶望。

 辛い‥‥

 言葉では言い表せないほどの辛い想い。

 私には、もう生きている意味などありません。

 コツコツと貯めてきた貯金も、もう‥‥ありません。


 だから一大決心して、この岬にやって来たのです。

 彼の職場のビルから飛び降りようとも考えましたが、職場も嘘だったのを思い出し止めました。

 なんだかコンクリートに叩きつけられるのは怖かった。

 でも、海ならそのまま海の中で消えていける‥‥

 そう思って、ここに来ました。


 流石に自殺の名所。

 看板には、

「自殺を考えている貴方! 今一度考えなおしココに電話してきてください」

 と書かれてありました。


 でも決心は変わりません。

 両親には申し訳ないと思ってはいるけれど、ごめんなさい。

 もう私には生きる気力がありません‥‥

 両親には、先ほど手紙をポストに投函してきました。

 せめてもの親への償いとお礼を言いたかったのです。


 覚悟を決め一歩一歩、岬の先端に歩いていきます。

 海風が身体に当たって痛かった。

 まるで、

「自殺を考え直しなさい」

 と言われているように感じました。


 つい、足が止まります。

 両親への想いが、私を止めたのです。


 その想いを振り切るために、私は彼との思い出を一生懸命、思い出しました。

 幸せだった日々‥‥

 それは虚無であったこと‥‥

 捨てられたときの絶望感‥‥

 すると、耳元で、

「あなたも一緒に飛び降りましょう」

 とささやく声が聴こえた気がしました。


 再び岬の先端へと歩き出します。

 そして、とうとう先端に辿り着きました。

 下を覗くと、凄く高い。

 海風が下から吹き上げてきます。

 確か、海面までは約80メートルはあると聞いています。

 ここなら確実に死ねる。

 痛みなど一瞬、確実に即死できます。

 そして、私は海の藻屑と消える。



 また迷いが出ます、恐怖心が湧いてきました。

 だから辛かった日々を再び思い出しました。

 両親のことは考えないようにしました。

 手紙にすべての想いを込めて投函した、だからもう‥‥ごめんなさい。

 また、耳元で、

「さぁ私も一緒に飛び降りるから、逝きましょう!」

とささやく声が聴こえました。

 目をつぶり、思い切って地を蹴りました。


 凄い速さで落下していくのが解ります。

 一瞬、恐怖で気を失いました。

 でも、また気がつきました。

 凄い速さで落下しているのに、時間が遅く感じられます。

 どんどん海面が近づいてきます。


「あぁ、これでやっと楽になれる」

 と思いました。


 バシャーーーーーーーーン!!

 大きな音と共に、私は海面に激突しました。

「痛いぃぃ!」

 激痛が全身を走りました。



「痛い! 痛い! 痛い!」

「見えるのは海の様子、私から流れる赤い色が見えます」

「あれ? あんなに高いところから飛び降りたのに、即死できなかったの?」

 全身をむしばむ痛みに、即死できなかった絶望感に襲われました。

 怖い‥‥

 いつまで、この痛みが続くのでしょうか?

 そのうち、恐怖と痛みで気を失いました。



 どれだけの時間が経過したのかわかりませんが、気がつくと私は岬の先端に立っていました。


「‥‥あれ? 確か私は思い切って飛び降りたばず‥‥」

 あの激痛の記憶もあります。

 手荷物は途中で海に投げ捨てたので鏡もありません。

 自分の姿を、視線を下げて視てみます‥‥


「ちゃんと足もある‥‥」

「お化けになっていたら、確か足はなくてヒラヒラとしているはずだよね?」

 だから、飛び降りたつもりで、実は飛び降りていなかったのだと気づきました。


 しかし視線の先の服装は乱れ、血のりだらけです。

 ところどころ破れており、海水に濡れている感覚もします。

「なんだか、キツネに化かされたみたい‥‥」



「今度こそ、ちゃんと死ななくっちゃ!」

 と思い、思い切って岬の先端の地を蹴りました。


 見覚えのある光景。


 凄い速さで落下していくのが解ります。

 一瞬、恐怖で気を失いました。

 そして、また気がつきました。

 凄い速さで落下しているのに、時間が遅く感じられます。

 どんどん海面が近づいてきます。


「あぁ今度こそ、やっと楽になれる」

 と思いました。


 バシャーーーーーーーーン!!

 大きな音と共に、私は海面に激突しました。

「痛いぃぃぃぃ!」

 激痛が全身を走りました。


「痛い! 痛い! 痛い!」

「見えるのは海の様子、私から流れる赤い色が見えます」

「あれ? 今度こそちゃんと飛び降りたのに、即死できなかったの?」

 全身を苛む痛みに、即死できなかった絶望感に、またも襲われました。

 怖い‥‥

 いつまで、この痛みが続くのでしょうか?

 そのうち恐怖と痛みで、また気を失いました。



 どれだけの時間が経過したのかわかりませんが、気がつくと私はまた岬の先端に立っていました。


「‥‥あれ? 確か私は今度こそ! 確実に! 思い切って飛び降りたばず‥‥」

「またキツネに化かされたのでしょうか?」

「状況が理解できません」


「私は死にたいの! 生きていても仕方がないの! お願いだから死なせて!」

 と絶叫しました。


 今度こそ、確実に! 目を開けて! 岬の先端まで走り、飛び降りました。

「今回は目を開けて飛び込んだわよ。キツネになって化かされたりしない!」

 死ねる! と確信を得ました。


 またも、見覚えのある光景。


 凄い速さで落下していき一瞬、恐怖で気を失いました。

 そして、また気がつきました。

 凄い速さで落下しているのに、時間が遅く感じられます。

 どんどん海面が近づいてきます。


「あぁ今度こそ、確実に楽になれる!」

 と確信しました。


 バシャーーーーーーーーン!!

 大きな音と共に、私は海面に激突しました。

「痛い! 痛い! 痛い!」

 激痛が全身を走りました。


「見えるのは海の様子、私から流れる赤い色が見えます」

「あれ? 今度は確実に飛び降りたのに、即死できなかったの?」

 全身を苛む痛みに、即死できなかった絶望感に、再び襲われました。

 怖い‥‥

 いつまで、この痛みが続くのでしょうか?

 そのうち恐怖と痛みで、また気を失いました。



 どれだけの時間が経過したのかわかりませんが、気がつくと私は再び岬の先端に立っていました。


 その後、何度飛び降りても結果は同じでした。

「死にたいのに‥‥死ねない。何故?」

 理解できません。


「お願い! 神様! 私を死なせてください!!」

 そう天に祈りました。


 しかし私ができることは、ただ一つだけ、岬から飛び降りて死のうとすることだけ‥‥



 もうどれだけの時間が経過したかわかりません。

 何度、飛び降りたかさえわかりません。

 孤独で寂しい‥‥

 別の意味での絶望感にさいなまれます。



 そんなある日、変化がありました。

 この岬に、私より若い‥‥まだ20代かな?

 の女性が現れたのです。


 孤独だった私は嬉しくなり、彼女に駆け寄りました。

 でも不思議と彼女には私の姿が視えないのか気づいてくれません。

 声をかけても返事もしてくれません。


「きっと、思い詰めていて周りが見えないのね」

 と理解しました。


 隣に立って、様子を伺っていると何故だか彼女が想っていることが伝わってきます。

「結婚式まで、あと1ヶ月だったのに、突然の交通事故‥‥」

「貴方は何も悪くないのに、何故死んでしまったの?」

「私を置いて‥‥私はこれから、どう生きていけばいいの?」

「貴方の居ない世界になんて生きている意味がない!」

「貴方に会いたい! 死ねば貴方に会えるかしら?」

 と‥‥


 彼女も自殺しにきたのは、この岬に来たのでわかっていました。

 理由も理解できます。

 私は不謹慎にも嬉しかった!

 孤独だった私に仲間ができたのです!!


 だから、彼女の背中を押してあげることにしました。

 彼女に確実に聴こえるように、耳元でささやきました。

「さぁ私も飛び降りるから、一緒に逝きましょう! 勇気を出して!!」


 すると彼女が反応しました。

「ほっ‥‥ 彼女に私の声が届いたわ」


 彼女が決意したことがわかります。

 岬の先端まで歩き出したのです。

 並んで一緒に向かいました。

 でも、彼女は私に気づいてくれません。

「おかしいわね。さきほどは私の声が聴こえたはずなのに‥‥」

「まぁ、いいわ。今回は一緒に飛び降りる仲間がいるのだから!」


 彼女が岬の先端の地を蹴って飛び降りたのを確認し、私も飛び降りました。

「今度こそ死ねる!」



 バシャーーーーーーーーン!!

 大きな音と共に、私たちは海面に激突しました。

「痛い! 痛い! 痛い!」

 激痛が全身を走りました。


「見えるのは海の様子、私から、そして彼女から流れる赤い色が見えます」

「あれ? 今度は仲間と一緒に飛び降りたのに、またも即死できなかったの?」

 全身を苛む痛みに、即死できなかった絶望感に襲われました。

 怖い‥‥

 いつまで、この痛みが続くのでしょうか?

 そのうち恐怖と痛みで、また気を失いました。



 どれだけの時間が経過したのかわかりませんが、気がつくと私は再び岬の先端に立っていました。

 隣には彼女の姿はありません。

「え? 彼女は死ねたの?」

「なんで私だけ死ねないのよぉぉぉ」

 と絶叫岬に、絶叫が響き渡りました。


***


 どれだけの時間が経過したのかわかりませんが、気がつくと私《彼女》は再び岬の先端に立っていました。

「え? 私は飛び降りて自殺したはずなのに‥‥死ねなかったのかしら?」

 あの激痛の記憶もあります。

 自分の姿を、視線を下げて視てみると、

「ちゃんと足もあるわ‥‥」

 しかし視線の先の服装は乱れ、血のりだらけです。

 ところどころ破れており、海水に濡れている感覚もします。

「タヌキにでも化かされたみたい‥‥」

 だから、飛び降りたつもりで、実は飛び降りていなかったのだと気づきました。


「今度こそ確実に死んで、彼に会いたい!」

 そう思って、岬の先端を思い切って蹴り上げ海に身を投げ出しました‥‥


***


 TVのニュースでは、

「また、あの岬で自殺者がでました。嘆かわしいことです。ご冥福をお祈り申し上げます」

 と報道されている事実に、2人はいつまでも気づくことはありませんでした‥‥


 彼女たちは永遠に自殺を繰り返してるのでした‥‥

 生まれる前に練った人生計画の自身の寿命が来るまで‥‥繰り返し繰り返し‥‥

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