辺境伯邸にて その7 アッシュのこれから
「アッシュ君、君は私達と一緒に旅をしてほしい。私が、魂識士として1からすべて教える。旅をしながら、色々な物に触れ、色々な人を見て、輝度☆5の力を発揮してほしい」
「えっ!」
そ、そんな。お母さんと離れて暮らすの?嫌だよ!
寂しいし、パンだって食べれなくなる!
「親御さんはどうかな?」
「急に言われても。危険だし、なぁ?」
「カレンみたいにベルハイヤ学園とかに行くなら離れていても危なくないと思いますが、冒険に出るとなると・・・」
「サラサさん、恐らくアッシュ君ではベルハイヤ学園に入ったとしても、ついていくことは相当厳しいです。あそこは戦闘に特化したものが行く学園ですから、魔法か剣術、もしくはなんらかの武闘術に秀でてないとまずいのです」
ん?遠回しに僕は戦闘に向いてないって言われてる?
そんなぁ、確かに弱々だけどさぁ。
「そもそも、ロッド型かスペード型しか入れない所なのでな・・・」
「な、なら普通の学校に行って、もう少し大きくなってからでも・・・」
嫌な沈黙だよ。ううう、帰りたい。
「・・・アッシュ君はそのうち、意識しないでも他人の魂が見えるようになってしまう。それをアッシュ君が意識しなくても発言してしまうと、あらぬ問題に巻き込まれてしまう。さらに、国王などに目をつけられる可能性も高まる」
静かに話しだしたマルファスさんはさらに続けていく。
「魂識士にしか、魂鑑定を制御するコツは教えられない。さらにアッシュ君が輝度☆5だとすると、それは独自の戦いが出来、必ず魔王と戦うのに絶大な効力があるはずで、必要になる。だけど、それを行うには強靭な肉体と精神が必要だ」
「もちろん私は輝度☆4だからそういうことは出来ないが」
とマルファスさんは続けた。
え〜!マルファスさんが出来ないことをやれって!
無理だよ、僕、泣くよ?
「サラサさん。アッシュにはいつか必ず危機が訪れてしまう。少なくともマルファス達と一緒にいけば、それに対抗できる力はつくし、その方がしばらくは安全だ。私も後ろ盾になれる」
ザルバイト辺境伯さんもそうした方がいいって言う。
「よぉ、坊主、俺達とこい、気に入ったからよ。可愛がってやる。それに世界にはキレイな姉ちゃんもいっぱ・・・」
「お、おねえさんが・・・でも僕にはカレン姉ちゃんが・・・可愛がるって、お兄さんが?」
「いや、そういう家族のねぇちゃんじゃなくてよ・・・それに俺がじゃなくてだな」
「ヴェイグ、あんた、バカなの?そんなアッシュちゃんはまだ子供よ?ねぇ、私達ならいっぱい不思議な魔物とかも倒せるし、ドキドキなロマンが詰まっているわよ?」
「ま、魔物?こ、怖いよ。それにロマンってなぁに?」
マロン、栗の仲間かな、どこに詰まっているのかなぁ。あ、栗、あまり好きじゃないや
「あ、いや、その・・・ロマンはロマンだよ!男なら分れ!」
「けけ。ララ、バカはお前だったみたいだな、ま、女のお前がロマンを語るからだろ」
「うるさいですよ、ふたりとも。アッシュさん。私がいかなる寂しさや苦しみも癒やしますし、私が守ります。私をお母さんの代わりと思っていいですよ、サラサさんには失礼かもしれないですが」
えっと。確か、オルカさん。
静かだし優しい綺麗な人だなぁ。
でも・・・
「お母さんはお母さんだよ。オルカさんは僕のお母さんじゃないし」
「だめだ、これは。埒が明かないな。ジャッジ、アッシュを説得してくれ。何か褒美は取らせる」
「そんなこと言ったってさ、辺境伯様・・・アッシュを売るみたいで、なんかな・・・」
大人が皆で話し合っているときに
「アッシュ。」
ギルメスが静かに話し始めたのだった。