辺境伯邸にて その5 模擬鑑定
「ちなみに、彼らも事情を知っている。それに、間違ったりしても罰ゲームとはないし、彼らも気は悪くしない。気にせずやるといい、ま、半分遊びのクイズみたいなものだよ」
と言っている、辺境伯ザルバイトさんは目が真剣。
ううう、なんでこんなことに。
「じゃ、まずは私からね。私の名前はララ。宜しくね!」
前に出たお姉さんは、ポニーテールにした緑色の髪を揺らせながら、
明かるく笑ってこっちを見ていた。
そこまで身長は高くはないし、軽そうに見えるかな。
「人当たりのよい笑顔。うむ、商人と見た、ダイヤかな?」
「いやぁ、わからんぞ、ハートもあり得る」
「何が『うむ』よ。あなた、外見だけでは決まらないわよ?」
「私はわからないねぇ、身軽そうだから斥候していて、フット型とか?」
お父さんとバトスさんはガヤガヤ話し始めた。
そしてお母さんがツッコんでいる。
ミカセさんも予想しているみたい。
大人は気楽でいいなぁ。
マルファスさんが魂鑑定の儀式の時のような動きを始めた。
すると、ララと言ったお姉さんの体から何かポヤポヤ、フワフワしたものが見える。赤いなぁ。きれいな色だなあ。
「ま、眩しい・・・リオンの時と同じだ」
「えっ!」
僕が何気なく言った一言に、皆がギョッとする。
あれ?なんか変なこと言ったかな。
「アッシュ、見えるのか?」
「え?ギルメス、あのお姉さんの周り、ポヤポヤしてるじゃん」
「ポヤポヤ?なんじゃそりゃ?」
え?見えてないの?
僕だけ?痛い子じゃん!
「うーんと、赤い・・・剣みたいな形?あ、リオンと同じくらい眩しかったから輝度☆は4かな?」
「ララ、正解は?」
ララは頷き、マントを外した。
一目で重装備とわかる竜の鱗をあしらった鎧を着ていた。
そして、手には【赤、スペード、輝度☆4】と書いてあった。
「正解だな。やはり、君には見えているようだ」
「あ、あれがスペード型なんだ。初めて見たからわからなかったよ」
「・・・他にわかることはあるか、もっとじっと見たらどうなるかな?」
「やってみるね!竜騎士?・・・19・・・なんの数字?えっと・・・それから152・・・よんじゅう・・・」
「だぁー!ストップストップ!坊や、やめて、それは見ちゃだめ!」
「え?そうなんですか、すみません」
ララさんに止められてしまう。
怒らないって言ったのに。ぐすん。
「・・・急に大声だして悪かったよ、坊や。怒っちゃいないよ。でも、人前でレディの年齢や身長、体重を読み上げるもんじゃないよ?ジョブはいいけどよ」
「ふむ、これだけでもアッシュ君は既に、
☆1 色、形を見ることができる
☆2 ステータス、その他情報を見れる
☆3 輝度を見れる
ができている。つまり魂識士で間違いがない。教えずここまでできるか、やはり・・・」
マルファスさんが、ふむふむと独り言を言っている横で、ララさんの横で一人のお兄さんが笑っていた。
「けけけ。レディってガラかよ、『おらぁ!』ってバタバタ敵を倒すくせに」
「うるせっ!じゃあ次はお前が見られろ、ヴェイグ。坊や、こいつのことは何でも見ていいからな!」
「おう、坊主、やってみな、俺はララみたいに甘っちょろくないからな、拒否してやる」
「ヴェイグ、じゃあ行くぞ?」
マルファスさんが同じように、魂鑑定の儀式みたいなポーズを取る。
ヴォイクさんは髪が灰色、頬に傷があった。長身だけど身軽そうだなぁ。
「・・・見えないです」
「けけけ。魂識士な〜んて嘘だったってことだな、帰ってママと寝りゃ」
「こら、ヴェイグ。アッシュ君。魂鑑定は強く拒否すれば見えないのだ。それは輝度☆4の私でもかなり大変だ。強く見る意思を持って魔力を集中するのだ」
「魔力をって言ったって・・・」
「難しいか。なら、とりあえずは見たい気持ちを強く持つんだ」
「ヴェイグさん・・・うーん・・・あ、見えた!22歳、紫、フット型、輝度☆4ですか?アサシンブレードって書いてあります」
「な!?なんでそんな簡単に見えるんだ!」
「無理やり見れるなら、やはり輝度☆5の可能性が・・・」
マントを外したヴェイグさんは黒っぽいコートを羽織ったスラリとした格好だった。
持っていた紙には【紫、フット、輝度☆4】とある。
また正解した。
こんな感じで4人の魂鑑定を進めていくと、
ララ 19歳
竜騎士 赤スペード☆4
ヴェイグ 22歳
アサシンブレード 紫フット☆4
オルカ 23歳
ヒーラー 白ハート☆3
バルドー 35歳
ソーサラー 緑・黄ロッド☆3
がマルファスさんのパーティーだと分かった。
オルカさんはララさんより大人な女性の女性で落ち着いた感じの優しそうな人だ。
ニコリと笑って微笑んでいた。
バルドーさんは大人のおじさんで、魂の色が2色あって、見たときにチカチカ変わっていて不思議だった。
魔法使いらしい。さっきから一言も喋らない。
「そうか、だからか」
「ん?どうしたバトス?」
「ああ、☆5の魂識士を何故国王から隠したいかとか考えていたんだよ、んで、今、アッシュ見ててわかったんだ。こりゃ、嘘もつけなければ色々見られちまうからな。政治的、軍事的に利用したらエライことになるわな」
「バトス、その通りだ。10000人の兵士よりも、破壊力のある武器よりも、魂指揮士は価値がある。使い方によっては如何なる戦いも有利になってしまうんだ」
辺境伯ザルバイトは更に続けた。
小さな声であったがはっきりと
「それだけが理由ではないのだがな」
その目はギラりと光っていた。
「さて。では、これから、アッシュ君、ギルメス君、バレッタ嬢、リオン嬢にカレンさん。君たちがどう生きていくべきか。それを話そうか。もちろん従う義務はないが」
ララさん達も席に座った。
話に参加するみたい。
マルファスさんが次の話を始めたのだった。